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44話 出発

 それから、数日が経過した。

 グリズリーとガンツは相変わらず付きまとってきたが、町長や警備兵の協力により何とか遠ざけることができた。

 やれやれである。

 まさか、自分がストーカー被害にあうとはな。


 まあ、たまに立ち話程度はしてやっているが。

 こいつらは変態だが、別に極悪人というわけでもないようだしな。

 猫耳装備を脱ぎ最弱状態の俺を見て、襲うわけでもなく逆に猫耳装備を取ってきてくれる程度の分別もあるし。

 いや、あれはこいつらがドMだっただけか。


 まあいい。

 いずれにせよ、そろそろこの町を離れる頃合いだ。

 可愛い少女やおいしい海鮮料理は魅力的だが、せっかく異世界に来たのだからいろいろな土地を訪れてみたいからな。

 まずは、食料運搬の依頼を達成したことをあの町に戻って報告することにしよう。


「さて、ユーリ。そろそろこの町を出ようか」


「うむ。頃合いじゃの」


 黙ってこの港町を出ていってもよかったのだが、一応は挨拶をしておくことにした。

 さすがに町長や冒険者ギルドに一言もなく旅立つのはな。

 まずは、冒険者ギルドに向かう。


「おっす! 来たぞ!」


「あら、カエデ様。それにユーリ様も。おはようございます」


 受付嬢がそう言ってくる。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


「いや、用件というほどのものではない。この町を出る前に、一言挨拶をしておこうかと思ってな」


「えっ……。カエデ様、この町を出られてしまうのですか?」


「ああ。俺は冒険者。いろいろな土地を訪れてみるつもりなんだ。まあ、次の目的地はまだ決めてはいないが……」


 俺は正直に答える。


「そうなのですね……。残念です……。でも、仕方ありませんね……。寂しいですけど」


「悪いな。まあ、また立ち寄るかもしれないから、その時はよろしく頼むよ」


「ええ。ぜひ、お待ちしております!」


 俺の旅立ちを惜しんでくれるなんて、いい子だなあ。


「ところで、カエデ様のランクの件ですが……」


「お? ランクアップするのか?」


 食料の運搬依頼に加えて、ビッグ・ジョーも倒したのだ。

 ランクアップしてもおかしくない。

 今の俺はDランク。

 ごく一般的で平凡な冒険者といったところだ。

 ゴブリンと1対1で負けることはないが、1対多数なら敗北する。

 また、ゴブリンよる強い魔物と1対1で戦うのも厳しい。

 Dランクとは、そういう評価のランクである。


「はい。カエデ様はCランクになる可能性が高いですね」


「おお。そりゃ助かる」


 冒険者ランクが上がれば、いろいろと便利なことも多いだろう。

 俺がこの世界を満喫するためにも、冒険者ランクはちょこちょこ上げていきたいところだ。


「ただ、Cランクになるためには昇格試験に合格する必要があるというのはご存知ですね?」


「ああ。確か、そんなことを聞いたことがあるような……」


 うろ覚えだが、最初に訪れた町で冒険者登録を済ませた際に、そんな話を聞いたことがある気がする。


「残念ながら、この港町『セイレーン』には昇格試験を開催できる施設や人材が整っていないのです。それで、申し訳ないのですが、別の町で試験を受けていただくことになります」


「ほう。なるほどな。まあもともと別の町に移動するつもりだったし、特に問題はないな」


「確か、カエデ様は『死の渓谷』を隔てた隣町『サンライト』から来られたのですよね? そちらに戻られるのですか?」


「ああ。そのつもりだ」


 町の名前ははっきりと覚えていないが、確かそんな名前だったような気がする。


「カエデ様がビッグ・ジョーを討伐された件は冒険者カードに登録しておりますので、あちらの冒険者ギルドに報告すればランクアップ試験の手続きはすぐに済むと思います」


「分かった。いろいろありがとう。さっそく向かうことにするよ」


 俺はそう言う。


「え……、ちょっと待ってください。今から行くんですか?」


 受付嬢が驚いている。


「何か問題があるのか?」


「普通は数日かけて旅の準備を整えるものなのですが……。ああ、もう既に準備されているのですよね」


「いや、特別な準備はしていないな。食料はアイテムボックスに保管してあるからな。それに、俺にとっては隣町への道中程度、散歩のようなものだ」


「そ、そうでしたね。カエデ様はアイテムボックス持ち……。相変わらず、凄まじい能力ですね」


「ははは。それほどでもないさ」


 実際、俺の能力ではなく猫耳装備の能力だしな。


「それでは、どうぞ行ってきてください」


「おう! 行ってくる」


 俺は手を挙げて答えると、ギルドを出る。

 そして、サンライトの町に向けてユーリとともに出発したのだった。

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