42話 猫耳装備装着
俺はグリズリーとガンツに犯されてしまうかと覚悟を決めたが、ふと気がつくと奴らはいなくなっていた。
そして、俺が寝ていた部屋の方角から彼らが駆けてきている。
「それは……」
「はい! 姉御の最強の猫耳装備です!」
グリズリーが高々と掲げたのは、俺が昨晩脱ぎっぱなしにしていた装備だった。
そして……。
「こっちもありますぜ! 猫ちゃんのパンツでさあ!」
ガンツが高々と掲げたのは、俺のパンツだった。
猫の刺繍が入った可愛らしいショーツだ。
「や、やめろぉ!」
人のパンツを白日の下に晒すんじゃない。
まあ、通行人はだれもいないし大きな問題はないけどさあ……。
「ささ! こちらをお履きになってください!」
「いつまでも全裸では、お風邪を引かれてしまいます!」
「お、おう……」
ガンツとグリズリーが、それぞれパンツと猫耳装備を差し出してくる。
あれ?
俺が最弱状態なのにつけ込んで、いろいろやってくるのかと思ったが。
意外な対応である。
変態紳士なのか?
お言葉に甘えて、俺はパンツと猫耳装備を着る。
ふう。
これで、俺は最強になった。
ひと安心だ。
「姉御。一つ気になったことがあるのですが……」
「なんだ? ガンツよ」
俺はそう問う。
意外に紳士な奴らのようだし、名前ぐらいは覚えてやってもいいだろう。
「姉御の下着のことです。パンツは先ほどお渡ししましたが、ブラジャーがどうしても見つからなくて……」
ガンツがそんなことを言う。
「ああ。俺はノーブラだよ。付けるほどの胸もないしな」
「ええ!? そ、それはいけませんよ!」
「なんでだ?」
「先ほど拝見させていただきましたが……。姉御のおっぱいは発展途上! これからまだまだ大きくなります!」
「ほう」
「成長期に付けていないと、形が崩れてしまいますよっ!」
ガンツがそう力説する。
言っている内容は一理なくもないのだろうが……。
なぜ男のお前にそんなことを言われにゃならんのだ。
「そうですぜ! 姉御の慎ましい胸も魅力的ですが、大きく成長するならそれも楽しみだ! この俺様グリズリーにも、今度ぜひ味あわせてくだせえ!」
グリズリーが大声でそんなことを言う。
「ちょっ! 声が大きい!!」
人の胸が慎ましいとか、成長期だとか、今度味あわせてくれとか。
大声で言う内容ではない。
通行人はいないが、少し離れた人に届いていてもおかしくない声量である。
「「おっぱい! おっぱい!!」」
( ゜∀゜)o彡゜
グリズリーとガンツがこんな表情で手を振っている。
「うるせえっ! 黙れやコラァッ!!!」
ドゴーン!
俺はグリズリーとガンツを思い切りぶん殴った。
「ぐへぇーっ!」
「ぶべらぁあっ!」
2人とも吹っ飛び、地面を転がっていく。
「まったくもう!」
俺はぷりぷりと怒りながら、倒れ込んでいる2人を見る。
意外に紳士だったこいつらにやり過ぎかもしれないが、あの調子で叫び続けられてはたまったものではない。
この痛みで、彼らも反省してくれるだろう。
俺はそんなことを考えつつ、倒れ込んでいる2人に近づいていくが……。
「あ、ああーーっ! これだよこれ!!!」
「電流が走ったかのような衝撃だった! 姉御のパンチはこうでないとな!!!」
なんと、グリズリーとガンツはすぐに起き上がり、また騒ぎ始めた。
「おいいいいっ!! お前ら、マジで一回死んでこいや!!」
ドゴォーンッ!!!
俺はもう一度、思いきり拳を振り下ろした。
だが、彼らはやはりすぐに立ち上がり……。
「いってて……。やっぱり姉御の鉄槌は最高だぜ!」
「ふぅ……。これがないと一日が始まった気がしないな!」
「お前ら……。俺が言うのもなんだけど、アホじゃねえの?」
こいつらはCランク冒険者だ。
それなりに優秀なのは知っていたし、猫耳装備がない俺なら足元にも及ばない身体能力を持つ。
それは先ほど思い知らされたところだ。
だが、このタフさは何なんだよ。
いくら死なない程度に俺が加減しているとはいえ、こうやすやすと復活できるぐらいのダメージではないはずだが。
こいつらの強さ(?)の底が見えないな……。