40話 ダメだこいつら、早く何とかしないと……
俺は、グリズリーとガンツに体を好き放題されてしまった。
救いがあるとすれば、こいつらがあくまで俺の満足のために動いてくれていたことだろうか。
俺の純潔はまだ無事だ。
その代わり、女としての尊厳はいろいろと失った気もするが。
「あ、あの……姉御……」
「さっきはすみませんでした……」
グリズリーとガンツが土下座で謝罪してくる。
「まったくだな。反省しろよお前ら」
俺の言葉に、2人はうなだれている。
「で、でもそのおかげで、かなりご満足されたんじゃありませんか?」
「そうですぜ! 俺たちの手で、あんなに喜んでいただいて……」
グリズリーとガンツがそう言ってくる。
……こいつらの認識は間違っていない。
確かに、なかなか気持ちのいい体験だった。
しかしそれはそれとして、あの行為をお咎めなしとはいかない。
あんまり調子に乗らせすぎると、今度こそ俺の純潔が危ない。
「さっきのことはなかったことにする! いいな? お前ら!」
俺はそう宣言した。
「「えー!?」」
グリズリーとガンツが不満そうな声を上げる。
「文句を言うな!!」
俺は叫ぶ。
「で、ですが姉御!」
「俺様たちは姉御のためを思って……」
2人が俺ににじり寄ってくる。
ちなみに俺は全裸のままだ。
まだ服を取りに行っていないからな。
こいつらに説教するのは、猫耳装備を着てからでもよかったかもしれない。
今の貧弱な体の状態でガタイの良い男2人に迫られると、身の危険を感じる。
「ええい! 俺に近づいてくるな! おらぁ!」
俺はグリズリーとガンツの腹部にパンチをかます。
先日なら、この一撃であっさりとダウンしていた彼らであるが……。
「ぐぼおっ! って、あれ? 痛くねえ……」
「さすがは姉御! 手加減してくれたんですね!? こんな俺たちのために、ありがとうございます!!」
グリズリーとガンツは平然とそんなことを言っている。
「なっ……効いてないだと……!?」
俺は驚愕する。
いや、そうか。
今の俺は猫耳装備を付けていない、貧弱な状態だったのだ。
ガタイの良いCランク冒険者に身体能力で適うはずもない。
「ですが、姉御! 気遣いは無用です! 過ちを犯した俺たちに、どうか罰を!」
「そうですぜ! 二度と過ちを犯さないために、体に教えてくだせえ! 姉御の偉大さを!!」
グリズリーとガンツはそう言って俺に詰め寄る。
「ひぃっ!」
俺は悲鳴を上げ、後ずさる。
……やばい!
こいつら、完全な変態じゃねえか!
自分から罰を与えてくれとか……。
それに、犯す犯すという言葉とともに近づいてこられると、貞操の危機を感じる。
いや、そういう文脈で使っているわけではないのは、頭では理解しているんだけどさ。
「く、来るな!」
「さあさあ! 俺たちに鉄槌を!」
「ぜひぜひ、お願いします!」
ガンツとグリズリーの筋骨隆々の体が迫ってきている。
「お、おらあああぁっ!!!」
俺はヤケクソ気味に拳を振るった。
だが、それはグリズリーとガンツに大したダメージを与えなかった。
「あ、姉御ォッ!」
「もっと力を込めてくれてもいいんですよ!!」
グリズリーとガンツは喜んでいる。
いや、本当に変態過ぎだろ。
ダメだこいつら、早く何とかしないと……。
「お前らいい加減にしろおおぉー!」
俺は絶叫とともに、全身全霊のキックを放つ。
しかしもちろん、これでも大したダメージを与えられない。
「ど、どうしちまったんですか? 姉御……」
グリズリーが心配げな表情でそう言う。
「い、いや。これはだな……」
マズいぞ。
猫耳装備がない俺が最弱クラスだとバレたら、何をされるか分かったものではない。
こいつらは変態だし。
初対面のときには俺に襲いかかってきた程度の悪人でもある。
絶対に、バレるわけにはいかない。