30話 猫ちゃん、ふかふかね~
少女たちが猫まるを可愛がりたがっている。
「……だとさ、猫まる。構わないか?」
「にゃあん」
猫まるは、別にいいよというように鳴いて返事をする。
「やった! それじゃあ、まず私が!」
最初に名乗りを上げたのは、ショートカットの少女だ。
年齢は10代前半くらいだろうか。
どうやら、この中では一番猫好きなのは彼女らしい。
猫まるはゆっくりと少女の前まで行く。
そして、その胸の中に飛び込んだ。
「わあっ!? 猫ちゃん、ふかふかね~」
「にゃんにゃん」
猫まるも嬉しそうだな。
「次は私だわ!」
今度は、茶髪ロングヘア―の女性だ。
こちらも同じくらいの年齢に見える。
「あなたはどんな味がするのかしら」
「にゃっ!?」
女性がそんなことを言うものだから、猫まるは驚いて離れてしまう。
「あら、逃げちゃった。残念だわ」
「いきなり変なこと言うからだぞ」
俺がそう指摘すると、女性は首を傾げる。
「普通でしょ? だって、猫と遊ぶときは、よくこうやって味見をするじゃない!」
「いや、普通じゃないぞ」
いわゆる猫吸いというやつの亜種だろうか。
それぞれ、独特な可愛がり方があるものなのだな。
そんな感じで、賑やかに宴会は進んでいく。
刺身の他いろいろな料理を平らげ、さらに酒も楽しませてもらった。
いい感じにできあがっている。
「カエデ殿。少し入ってもよろしいですかな?」
幕の外からそんな声が掛けられた。
「町長か。入っていいぞ」
「失礼します。楽しんでいただけておりますかな?」
「おお。もう最高だよ! 料理もお酒も美味しくてな!」
「それは何より。ところで、このまま夜の方もお楽しみになられますか? 大きな部屋を用意させておりますが……」
町長がそう言う。
なかなか気が利く男だ。
「もちろんだ。みんな、いいよな?」
俺は少女たちにそう問う。
「はい」
「カエデちゃんに任せるよ」
「カエデ様のお好きになさってください」
よしよし。
全員合意の上だな。
「わかった! それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおう」
「はい。では、こちらへ」
こうして、俺たちは大きめの部屋へと案内されたのであった。
中央にはキングサイズのベッドがある。
「ごゆっくりどうぞ。この部屋には、できる限り人を近づけさせませんので」
町長はそう言って退出していった。
今この部屋には、俺、ユーリ、そして少女たちしかいない。
猫まるはまた異空間で待機中だ。
楽しい夜になりそうだな。