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26話 可愛い系の少女が好きだ

 俺はグリズリーとガンツを蹴り飛ばし、気絶に追い込んだ。

 本題に戻ろう。

 俺は何をしていたのだったか。


 ……そうそう。

 ビッグ・ジョーを討伐して、猫まるとともに陸地に戻ってきたところだった。

 ユーリや町長が出迎えてくれたが、あのグリズリーとガンツが口を挟んできたのだった。


「ほほ。カエデ殿にかかれば、あのヤンチャ坊主二人も形無しですな」


「ヤンチャ坊主? 町長はあいつらを知っているのか?」


「ええ。彼らはこの町で生まれ育っておりますからな」


 町長がそう言う。

 彼らは一時的にこの町を拠点にしているのではなく、ここで生まれ育った者たちだったか。


「ずいぶんとガラが悪いじゃないか。きちんと教育してきたのか?」


「その節はカエデ殿にご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありませんでした。しかし彼らも、根は悪い奴らではないのです。口では非常に悪ぶっておりますが、実行に移すことはありませんでした。今回は空腹によるストレスで、自暴自棄になっていたのでしょう」


 うーん。

 まあ確かに、グリズリーやガンツから俺への襲撃は結局失敗に終わっているし、実害はなかった。


「ふむ。まあ、今回は相手が俺だったし問題はなかったが。二度目はないぞ。ちゃんと言い聞かせておけ」


「はい。肝に銘じております。……ところで、ビッグ・ジョーの討伐を祝して、ささやかな宴を開きたいと思います。ぜひ、参加いただけませんでしょうか? もちろん、特等席と特選料理をご用意致します」


「ううん……」


 俺は腕組みをして考える。

 グリズリーやガンツという変態がいるこの町からは、さっさと立ち去りたいな。

 しかし、特選料理とやらには興味がある。

 それに……。


「そうだな。町の綺麗どころを集めろ。それなら、参加してやってもいい」


「なるほど……。カエデ殿は、そちらの趣味をお持ちでしたか。どおりで、グリズリーやガンツが迫ってもなびかなかったはずです」


「うん?」


「彼らはあの通りたくましく、顔も整っています。その上、Cランク冒険者で稼ぎもいい。女性から見て、間違いなく優良物件に思えるのですが……。カエデ殿にとっては、まったく興味が湧かない相手だということですな」


「うむ。その通りだ」


 言われてみれば、そこそこ悪くはない男たちだったか。

 しかし、俺はあいつらに興味がない。

 なにせ俺の精神は男だからな。


 それよりも、女だ。

 女をよこせ。


 今の俺は少女の体なので、やや特殊な嗜好だと思われてしまうだろう。

 しかし時代はLGBTだ。

 同性愛など、めずらしいことではないのだ。

 まあ、この異世界でそんな考えがどの程度浸透しているかは知らないし、そもそも俺は元男なので、LGBTの概念に当てはめるのが適切かは微妙なところだが。

 俺は自分の欲望に正直に生きることに決めたんだ。


「かしこまりました! 町中の美女を集めておきましょう!」


「必ずしも美女ではなくていい。むしろ俺は、可愛い系の少女が好きだ」


「承知しました! ぜひ楽しみにしておいてください!」


 俺の言葉を聞いた町長が嬉しそうに笑う。

 こうして俺は、宴に参加することとなった。

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