22話 陸地へ帰還
俺は猫まると協力して、ビッグ・ジョーを無事に撃破した。
「さて」
俺は周囲を見回す。
ビッグ・ジョーは倒したが、まだ油断はできない。
何しろここはまだ海中なのだ。
「どうやって戻ろうかな」
「にゃあ!」
猫まるが力強く鳴く。
そして、俺を背中に乗せたまま勢いよく海面へ向けて上昇を始めた。
「おお! すげー!」
「にゃああ!!」
ドパァーンッ!
「ぷはぁっ」
顔を出すと、そこはもう海上であった。
「猫まる、いろいろと助かったよ。ありがとうな」
俺は礼を言う。
「にゃあん」
猫まるは得意げな顔をしている。
かわいい奴め。
「さて、それじゃ陸へ戻るとするか」
「にゃあ!」
俺は猫まるに乗っている。
猫まるがゆっくりと移動を開始する。
「ん?」
陸地になんだか人だかりが出来ているような……?
目を凝らすと、大勢の人間がこちらを指差して騒いでいるようだった。
あれは……。
「ああっ! もしかすると、俺がビッグ・ジョーを倒したからか!?」
少し面倒そうだな。
だが、逃げるわけにもいかない。
あそこにはユーリもいるだろうし。
「仕方ねえ。猫まる、行くぞ!」
「にゃああ!!」
俺を乗せたまま猫まるは加速する。
そしてそのまま陸地へと突っ込んだ!
バゴォンッ!!
「うわー!?」
「きゃーっ!?」
「にゃああ!!」
俺たちは盛大に砂煙を上げながら着地。
人間たちは悲鳴を上げて逃げ惑った。
「おい……大丈夫なのか? これ……」
俺は猫まるに聞いてみる。
「にゃあ」
「まあ、いいか」
人混みが解消されたし、結果オーライだな。
「おお、カエデ。お疲れ様なのじゃ」
「ユーリか。見ていてくれていたと思うけど、無事に討伐に成功したぞ」
「うむ。見事だったのじゃ」
「そっちはどうだった? 何だか人が集まっていたようだが」
俺と猫まるの突撃を受けて、今は散り散りになっている。
「あれは我が呼んだのじゃ」
「えっ? なぜそんなことをしたんだ?」
「カエデの名声を高めるためじゃ。その方がいろいろと面白いことがありそうじゃろう?」
「…………」
相変わらずだな、彼女は……。
まあ、俺の猫耳装備があれば大抵のことは何とかなるだろう。
この世界を無双して満喫するために、名声は高めておいた方がいいかもしれない。
と、そこで、散り散りになっていた町民たちの一部が戻ってきた。
「カエデ殿。ご活躍をここから見ておりました。海中での戦いまでは把握できませんでしたが……。ビッグ・ジョーは倒されたのでしょうか?」
町長らしき男が話しかけてきた。
「おう。討伐に成功したぜ。これが魔石だ」
俺はアイテムボックスから魔石を取り出し、見せる。
「「「おおおおおっ!!!」」」
町の人たちが歓声を上げる。
「さすがですな。依頼料は冒険者ギルドに支払っておりますので、そちらからお受け取りください」
「ああ」
「報酬とはまた別に、町としても宴を開きたいと思っています。カエデ様にも参加していただけたらと……」
「それはいいが、まだ食料不足なんじゃないのか?」
宴をしている余裕などないはずである。
「ビッグ・ジョーがいなくなった今、漁に出ることができます。カエデ様が冒険者ギルド経由で提供してくださった食料により今日明日の食料は確保できておりますし、漁が順調に進めばそれ以降の食料も確保できるでしょう」
「ふむ」
「宴を開くことに問題はありません。いえ、問題がないようにがんばって漁をする所存です。漁師たちもやる気です」
「「「おうとも!!!」」」
むさい男たちが力強くそう言う。
「わかったよ。参加させてもらう」
俺は苦笑しながら答える。
「ありがとうございます。では、今日のところは宿屋を紹介させていただきましょう。この町一番の宿を確保させております」
町長がそう言って、俺を案内しようとしたときだった。
「おうおう! ちょっと待てや! 俺も言いたいことがある!!」
筋骨隆々の男がそう口を挟んできた。
はて。
どこかで見たような……。