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15話 港町のチンピラ

 ドラゴンとの遭遇後も、俺たちは順調に歩みを進めていく。

 しばらくして、目的地が見えてきた。


「ここが港町か」


 町の端は港になっており、大小様々な船が停泊している。


「ふむ。なかなかに活気のある町じゃな」


「そうだな。さっそく冒険者ギルドに向かうか」


「うむ」


 俺たちは町の中心部に向かって歩き出した。


「この町の冒険者ギルドはどこにあるんだろうか」


「そういえば、知らぬのう」


「……」


「仕方がない。道行く人に聞くとするか」


「そうじゃな」


 ということで、近くを通りかかった男性に声をかけてみた。


「よう。ちょっといいか?」


「ん? 何か用か? って、すごい格好だな……」


 男性は立ち止まり、そう言う。

 俺の猫のきぐるみ装備は、確かにすごい格好だ。


「冒険者ギルドの場所を教えてほしいのだが……」


「ああ、それなら……」


 男性が冒険者ギルドの方向を指し示そうとしたときだった。


「おい! お前ら!」


 後ろから声をかけられた。

 振り返ると、そこには筋骨隆々の男が立っていた。

 身長は2メートル近いだろう。

 顔は厳つく、見るものを威圧する迫力があった。


「なんだ?」


「見慣れねえ顔だな。余所者か?」


「ああ。今日初めてこの町に来た」


「ほう。なら、この俺様を知らないということだな!」


「……誰だよお前は」


「俺様はCランクパーティー『鋼鉄の荒熊』のリーダー、グリズリー・タイガーだ!」


 男が堂々とそう名乗る。


「そうか。俺はDランクのカエデだ」


「同じく、ユーリじゃ」


「ふん! Dランクかよ。雑魚じゃねぇか。で、何しにこの町にやってきたんだ?」


「依頼をこなすためだが。食料の運搬の依頼を受けたんだ」


「食料だと? その食料っているのはどこにあるんだよ?」


「アイテムボックスに入れてある」


「はっ。アイテムボックスに入る程度の量かよ。まあいい。その食料を俺様によこしな」


 グリズリーがそう言い放つ。


「断る」


「んだとぉ!?」


「当たり前のことを聞くな。俺たちは依頼を受けているんだ。横取りするつもりか?」


「うるせえ! 寄越さないと痛い目を見るぞ?」


「やってみろ」


「上等じゃねーか。後悔すんじゃねーぞ」


 そう言って、男は戦闘態勢に入る。


「ユーリ、下がっていろ」


「うむ」


 ユーリが男の攻撃範囲外に下がる。


「死ねぇ!!」


 男が殴りかかってきた。


「遅い」


 俺は男の手首を掴み、そのまま捻り上げた。


「ぐわぁーーーーーーーー!!!」


「どうした? この程度か?」


「ぎゃーーーーーーーーーーー!! 折れるぅーーーーーーーー!!!」


「これくらいで折れるほど、人は脆くない」


 猫耳装備のおかげか、そのあたりの力加減も何となくわかるようになっている。

 俺はギリギリの力加減で男の腕を捻り上げ続ける。


「ひぃーーーーーーーーーーーーーー!!!」


「まだやるのか?」


「すいませんでしたぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「最初からそうやって謝ればいいんだよ」


 俺は手を離してやった。


「あばばばば……」


 グリズリーは泡を吹きながら地面に倒れ込んでいる。


「大丈夫か?」


「はい……」


「よし。次からは気をつけろよ」


「わかりました……」


「それで、冒険者ギルドはどこにあるんだ?」


「こっちです……」


 グリズリーはよろめきながら歩いていった。

 俺とユーリは少し離れて、彼に付いていく。

 彼女が俺の耳元に口を寄せる。


「なんじゃ、あやつは?」


「さあな。ただのバカじゃないか?」


「しかし、あの身のこなし。ザコではないのう。カエデの敵ではないがな」


「そりゃそうだ。俺はあんなやつに負けない」


「まあ細かいことはいいか。このまま奴の案内に従い、冒険者ギルドに向かうのじゃ」


「わかった」


 俺たちは冒険者ギルドに向かって歩いていく。


「うん? 何だか町並みが荒れてきたな」


 ボロボロの家が立ち並ぶ。

 道端には、薄汚れた人が座り込んでいる。


「なんか嫌な雰囲気じゃのう」


「そうだな。さっきまでは普通の町だったのに」


「やはり、何かあったようじゃな。食糧難とやらと関係があるのかもしれぬ」


「ああ。でも、今の俺たちには直接は関係ないことだ。依頼内容は、冒険者ギルドに食料を渡すことだからな」


「そうじゃな」


 そんな話をしているうちに、目的地に到着したようだ。

 先導していたグリズリーが足を止める。


「ここが冒険者ギルドか?」


 目の前の建物を見て、俺はそう言った。

 あの町の冒険者ギルドと比べると、ずいぶんと寂れている。

 とても冒険者ギルドには見えない。


「ふん。そんなわけがねえだろうが! 野郎ども、かかれ!!」


 男が合図を送ると、周囲の建物の中に隠れていた男たちが現れた。

 全部で10人前後といったところだろうか。

 全員が武器を持っている。

 剣や槍、斧など様々だ。


「強盗か?」


「そうみたいじゃな」


「ちっ! めんどくさいな。まとめて相手するぞ」


「了解じゃ」


 基本的には俺が対処するが、何せこれほどの大人数が相手だ。

 ユーリの出番も少しはあるかもしれない。


「おら! 食料を出せ!」


「断る」


「なら、痛い目にあってもらうぜ」


「やってみろ」


「口だけは達者のようだな。おい、殺さない程度に手加減しろ。こいつは変な格好をしているが、女だ。使いみちはいくらでもある」


「へい!」


「わかってやす!」


 強盗たちがそう言う。


「ふむ。どうやら、我らをなめてるようじゃな」


「そのようだな」


 やれやれ。

 俺の猫耳装備で無双させてもらうとするか。

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