ここはどこ?1
「日本だぞ」
そんなばかな。日本にエルムリッジなんて妙な地名があるはずがない。
「日本の、タイキートだ。そこの、エルムリッジまで向かっている」
噛んで含めるように話しかけてくる。
ここはどこなんだ。ボクは一体何者なんだ。
記憶が無いわけではない。
病院で寝ていたはずだ。末期の癌の治療で。
頭をさわる。髪の毛に絡まる干し草がぱらぱらっと落ちる。
髪の毛は、治療の過程で抜け落ちていたはずだ。
「ボクは…一体何者なんでしょう…」
「なんだぁ?記憶喪失か?(変なの拾っちまったな)」
小声で続けた台詞が聞こえてしまった。
が、この状況で放り出されてもどうしていいかわからなくなる。
「すいません…。重ねてご迷惑をおかけしますが、エルムリッジ、まで、このまま乗せてもらえませんか?」
「ああ、聞こえちまったか?悪かった。記憶が無いなら不安だろう。そんな恐縮しないで乗ってけ」
御者席に同乗すると、牛はおとなしく歩き始めた。
「改めてよろしくな。俺はクリムト。あんたのことは…何て呼べばいいか?」
「ボクは、太郎。太郎です」
「お?名前は覚えてるのか?タローか」
そう。覚えている。わからないのは、現状だ。
そして、これからどうすればいいのかも、さっぱりわからない。




