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潜伏する妖精1
ミカンがたくさん実っている木の洞に
息を潜めてひっそりと隠れて二十日ほど経った。
妖精女王の娘のイモムシ達は、繭を作るために糸を吐き始めた。
女王は、作られ始めた繭の中に準備していた洋服を入れた。
服は、娘たちへの贈り物だ。イモムシ達は服と共に繭化した。
ふと、ゴブリンでない気配を崖下に感じたので様子を伺うと、
数人のニンゲンが近づいてきていた。
絶望だ。
ゴブリンとニンゲンが戦い始めたようだ。
野蛮ね。
どうせなら共倒れてくれればいいんだわ。
暗い気持ちが支配する。
争い合っている今ならきっと大丈夫。
妖精女王は、そっと洞を出て花畑に降り、久しぶりに花の蜜をたくさん飲んだ。
そしてひっそりと洞へ戻り、眠りについた。
女王の閉じた目からは涙が流れていた。




