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第一章27 姫の悩み

「あなたは金の国からいらっしゃった方ですよね。」

ぼうっとしていたら、後ろからトミヤ姫に声を掛けられた。いつの間に後ろにいたんだ。驚いていると、スア夫人が私の代わりに、私の紹介をしてくれた。

「一度、金の国を訪れたときに、あなたのように羽をもった方とお会いしました。とてもよい方でした。」

トミヤ姫は私に訴えかけるような視線を送ってくる。

「えっと、その方のお名前は分かりますか?」

「はい。確か、ゲローイさんだったかと思います。」

ゲローイは私たち羽有人の権利を主張した政治家だ。地下の民とどんどん関わり、羽有人と地下の民の交流を促進した。羽有人にも知性があり、互いに会話を交わすべきだ、と地下の民に主張し続けたゲローイだったが、地下の民にその考えはなかなか受け入れられなかった。そして、ゲローイは数年前に毒殺された。確か、その数日前に草原の国から客人が訪れており、

「草原の国の平和ボケがうつったからゲローイは死ぬことになったのだ。」

という噂が流れたのを覚えている。トミヤ姫はそのことを知っているのだろうか。知っているのならどこまで知っているのだろうか。なんとも言えず、私は言葉につまってしまった。

「トミヤ姫。羽をお持ちの人はたくさんいらっしゃるわ。ピサテ様がご存知とはかぎらないですよ。」

またスア夫人が言葉をつないでくれる。

「いえ、知っています。ゲローイは私たちを先導してくれる、立派な人でした。しかし、故人です。」

その話を聞いたトミヤ姫の目が、深く、暗くなった気がした。

「もしよろしければ、ゲローイ様のお話を聞かせていただけませんか?」

そうお願いしてくるトミヤ姫の様子を見て、ゲローイが亡くなる前に金の国ゾルテを訪れた草原の国トゥーンヤーの客人というのは、もしかしてトミヤ姫だったのだろうかと勘繰った。しかし、そのことは話さず、

「ええ。私の知っていることでよろしければ。ゲローイ様はとっても活動的な方でしたからね。話すことはたくさんありますよ。」

私はトミヤ姫、ガロト少年、スア夫人に対して、ゲローイの有名なエピソードを話し始めた。

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