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第一章24 間諜

 宿泊付きパーティーというのは金の国では評判がよくない。なぜなら、女を売る場であるからだ。草原の国トゥーンやーではそうではないらしい。

 今日の夜、みんなで集まり食事会をする。それまではこの館に泊まっている人々が交流する時間となる。

 ちょうど火の国の住人がぷらぷらとやって来たので声を掛けた。名前はタニヨンというらしい。彼女からは、驚愕の話を聞くことができた。

「タニヨンはずっと草原の国に住んでいるの?」

「そうだよ。いわゆる毛無しでね。火の国ルハボンで生きていけなくなったから、草原の国トゥーンヤーにやって来たのさ。難民ってやつだね。」

そう言うタニヨンの表情はあっけらかんとしている。

「辛いことがあっただろうに、悲しくなさそうね。」

タニヨンは少し目を伏せる。

「働き手が働けなくなって、どうしようか悩んでいるときに、職を与えてくれたのがトゥーンヤーだったってだけさ。」

「職?何をして働いたの?」

タニヨンは静かに私の顔を見つめた。

「お偉いさんが気に食わないやからをみんなでぼこぼこにしたり、火の国を旅行して状況をお偉いさんに報告したりさ。普段はぶらぶらしてさえすればよい。足切りされるときもあるけれども、それも踏まえているのよ。」

私もタニヨンの顔をまじまじと見つめ返した。タニヨンはこちらを見定めるように表情を変えない。

「そんなこと言っていいの?」

タニヨンはにいっと口角を上げた。

「そんなこと、金の国ゾルテからしたらありふれたことだろう?」

侮蔑されていると感じた。しかし、それは事実である。

「ははは。何のことか分からんが、あなたがそう思ってくれたことで、そんなおもしろいことを教えてくれたのならもうけたな。一応言っておこう、その話はここだけの話にしておくよ。」

お偉いさんとは誰なのだろうか。知恵の悪魔だろうか。あんな知恵の悪魔がそんなことを?さっきまでの言動は演技だったと言うことか?いや、まあ、あの言動でそれだけ悪どいと言うこともあり得るのか?

「そういえば君は知恵の悪魔と仲がよさそうだね。どうやって出会ったんだい?」

「私は仲間と知恵の悪魔をつぶそうとしたのさ。」

タニヨンはほおづえをつき、横目でこちらを見てくる。どうもこの人は私の何かを探っているようだ。

「お偉いさんから知恵の悪魔を誘拐するよう頼まれてね、だけど知恵の悪魔の話がおもしろすぎてさ。思わず解放しちゃって、大目玉をくらったよ。」

知恵の悪魔と敵対する者が彼女の雇い主にあたると言うことか。

「知恵の悪魔の言動を見張るように言われて、今にいたるって感じなのよ。」

互いに見つめ合う。シントー王子が雇い主とは思えない。だってシントー王子はだいたい知恵の悪魔と一緒にいると聞く。虎の一族か、ヒョウの一族だろう。おそらく前者だ。毛無したちのほとんどはルハボンに近いヌン地方に暮らしているそうだ。

「それは」

何と言うか悩み、言い淀んだ。

「それはたいへんだったわね。」

上手く、憐憫の表情をできたか分からない。タニヨンはなぜか目を丸くしている。

「ふふっ。そうなの。たいへんなのよ。」

タニヨンは笑い始めた。そして、こんなことを言ってきた。

「あなたも同じようにたいへんね。いっしょに楽しく働きましょう。」

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