第一章21 救助
大きなカエルに見える生き物。しかし、草食らしい。求愛のために大きな声で鳴く。一匹、船に乗せ、食べ物を乗せた。食べ物はくさぐさなかごに入れる。丈夫なもの、背が低いもの、カエルが中に入れそうなもの。こうしておけば、カエルが一気に食べ切ってしまうことがなくなり、生き延びる日数を増やせるのではないかという考えからだ。
船を見送るとき、一声、大きくカエルが鳴いた。
コー島に助けがやってきたのは、船が出立してから3日後だった。シントー様を捜索するための部隊が組まれ、海を捜索していたところ、場違いなカエルの鳴き声を聞き、初めはみんな怖がったそうだ。カエルを乗せた船を発見し、その床に書かれた「コー島で救助を待つ」というメッセージを見つけたとのことだ。
運が良かった。私たちは幸運のおかげで生き延びることができたのだ。
手足を失った少年は、その3日間の間に亡くなった。少女と傷だらけの少年は号泣し、その場の雰囲気は落ち込んだ。
「どうしてこのように辛いことが起こるのでしょう。」
と、嘆く少女をガロト少年がなぐさめた。タニヨンは傷だらけの少年に、一緒にたきぎや歯ブラシになる草集めなどをするように誘っていた。友を亡くした悲しみが、体を動かすことで少しでも薄らぐように気をかけていたのだと思う。
シントー様と一緒に飲料水を作っているとき、体を温めるように声を掛けられた。言葉に甘え、横になっているとき、タニヨンと少年が帰ってきた。私はそのまま目をつぶっていた。
「おや、知恵の悪魔は休憩中かい。」
ひそひそ声でタニヨンはシントー様に話し掛けた。
「ああ。こいつは命に対して敏感すぎる。だいぶ弱っている。」
自分では気付かなかったが、無理をしていたのかもしれない。シントー様に休むように言われたのは、疲労が顔に出ていたからなのだろう。
「前の世界はだいぶ平和なところだったようだ。まるで、周りで人が死ぬことがないような、知識によって発展し、安定している社会だったんじゃないかと思う。」
「なんだいそりゃ。」
タニヨンはあきれた声だった。
「そんなにすばらしいところにいたのだったら、ここは地獄みたいに感じるんじゃないのかい。」
「そうかもしれない。しかし、だからこそ悪魔にはこの世界を変えることができるのではないかとも思うんだ。」
救助の船がやって来て、みんなが安堵の表情を浮かべながら乗り込む中、少女は少し待ってほしいと願った。私は少女の後を追った。少女は嫌な顔をせず、友の墓へと向かった。簡素な墓の前にひざまずき、祈る。私はその後ろに立って、ただながめていた。
「どうして私は死ななかったのでしょう。」
少女は私に尋ねてきた。
「私は生きていることが悲しい。生き延びることがこんなにも辛いなんて、思いもしなかった。」
少女は泣いた。
「どうして彼らが生きていないのでしょう。私が代わることはできないのでしょうか。」
少女はこちらに顔を向けた。
「知恵の悪魔よ、私はどうしたらよいのでしょうか。生きることは辛い。だからと言って、死ぬことがよいのでしょうか。こんな状態で私は生きていかないといけないのでしょうか。」
少女の真剣な表情に私は送る言葉が見つからず、一言しか話せなかった。
「モーナ。」
少女はハッとした表情を見せ、何も言わずに船に向かった。私もその後ろに付いていき、コー島を脱出することとなった。
草原のテントに戻ってから一週間ほど経ったとき、ヌックさんが訪れた。ヌックさんはソーンの長ではなくなったそうだ。シントー様を行方不明にさせてしまった責任を負わされたらしい。
「殺されなくてラッキーでしたよ。ぎゃはは。」
と、全く笑い事ではない話を笑いながらしにきた。
「ところで、この少年を知恵の悪魔の下で学ばせることはできませんか。」
と、ガロト少年を連れて来ていた。
「ガロト少年はソーンに技術を学びに来ていたはずでは?」
「そうなのですが、彼はだいぶ飲み込みが良くてね、ソーンの町だけでくすぶるより、知恵の悪魔に付いていた方がよいのではないかと考えたのです。」
ガロト少年が深々と礼をする。ならば地元に帰ればよいのではないかと感じたのだが、彼の真剣な眼差しに感化され、私は了承した。




