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第一章19 無人島

「ポXデママY\#S&ナカ?」

「@Moボダ」

何を言っているのだろう。日本語ではない。夢見心地の私はなんだか長い休みに祖父母の家で寝泊まりしたときのような気分になった。今日は朝早くからどこかに出かけるんだっけ?うるさいなあ、もう少し寝たいなあ。

 気付くと、砂浜に寝ていた。一応体の下に大きな葉っぱが敷かれているが背中は白い砂でジャリジャリだ。

「えっ、なんで。」

 目が覚める。私は、海に流され、どこかに流れ着いたのだ。

「大丈夫か?知恵の悪魔よ。」

この獅子頭の王様と一緒にーーー。

 手をグーパーしてみる。

「多分、平気だとは、思うんですけど。」

首を回してみる。

「何せ気を失っていましたからね。自分では気付いていないだけで不調があってもおかしくないです。」

ゆっくり立ち上がってみる。立ちくらみはしなかったが、喉がからからであることに気付いた。それに気付いたのか、シントー様は目を見開く。

「少し待っていろ。」

シントー様はどこかに駆けていったかと思うと、タニヨンとガロト少年と一緒に戻ってきた。

「おお、もう起き上がってよいのか、知恵の悪魔。」

「ええ。」

「無理をしていますね。まだ座っていましょう。」

ガロト少年が優しく声を掛けながら、葉っぱの上の砂を払ってくれた。そのとおり腰を下ろさせてもらう。タニヨンが何かの木の実を手渡してくれた。穴が空いている。ゆっくり口に持っていき、喉を潤した。

 冷たい水の中にいると体温が下がる。低体温症になると眠くなる。しかし、眠ると溺れやすくなる。私はずっとシントー様に支えられて一命を取り留めたらしい。浮き輪を身に着けていたことも功を奏した。どうやら1時間程度私たちは流されていたようだ。

 私は自分たちが命の危機に晒されたことに恐怖した。自分の死を思うと、寒気がして体の震えが止まらなくなった。タニヨンやガロト少年、シントー様の死を思うと、体が暑くなり涙が出てきた。寒くて暑くて目の前が真っ黒になり、吐き気がしてきた。

「おそらくここはソーンの近くにある、コー島です。ならば島の中央に漁師たちが休憩するための小屋があるはずです。」

しばらく休憩した後、ガロト少年の案内で私たちは海辺を離れた。小1時間歩いたところで小屋が見えてきた。小屋の外に誰かが立っている。

 それは少女だった。少女はこちらを見やると眉をひそめた。その少女にガロト少年が駆け寄る。

「ニン!無事だったんだな!」

「ええ。ガロト。でも、あなたもここに来てしまったのね。」

ニンは私たちを小屋の中に招いた。

 中には3人の男性がいた。身体中傷だらけの少年は火を焚き、海水を沸かすことで塩と飲料水とを準備している様子だ。比較的健康そうな青年は獲ってきたのであろう魚をさばいている。ベッドにいる少年は布団の中にいるのだが、右腕と左足の部分に血がにじんていた。

 初めに流れ着いた3人の少年のうち、1人は溺死した。1人は手足を大きく汚し、ほぼ動けない。1人はなんとか動けるため、必死になって生き延びてきたらしい。次に流れ着いた少年と少女。少年は島の近くまで流れ着いたときに、少女をかばいながら必死で泳いだらしい。体力の限界だったのか、この島の浅瀬で、眠るように他界した。そのおかげか少女には大きな怪我はなかった。青年が流れ着いたときには、生存者はなんとか命をつないでいる状態だった。ここまで4人が生きてこられたのは、釣り人である彼の功績であると言っても過言ではない。

 ひどい有様だ。何とか生きてきたのだろう。しかし、ただ生きているだけだったことがわかる。いつ命を失うかわからない状況が、いつまで続くかもわからないことが、今の彼らの表情をつくり出していた。

「ひとまず、私の仕事ね。」

タニヨンはその場に座り、床を叩きながら歌い出した。この場にふさわしくない、陽気な歌。気楽に生きる、日常を噛みしめる歌。少女は静かに泣き出した。

「タニヨンはそのまま歌っていて。換気をして、生活できる環境を整えるわよ。」

私はなるべく明るい声をだしたつもりだが、その声は震えていた。

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