第一章18 漂流
行方不明に対する私の予想は自然災害だ。川や海の水の流れが変わり、今までと異なるところに流されてしまっている。この予想をヌックさんに話すと、真顔になり、
「では、どこに流されたと思う?」
と逆に質問されてしまった。分からない旨を伝えると、ヌックさんはパッと笑顔を取り繕い、
「そうですよね。こちらでも調査をすることにしましょう。」
と言う。ヌックさんは催事場に打合せに出掛け、一晩館でゆっくりするように私達は言われた。そこへガロトが
「知恵の悪魔、一緒にその流れを調査してくれないか?」
と依頼してきた。
私とシントー様、タニヨンはガロト少年は、河口にやって来た。雨が降り注ぐ。川は増水していた。ごうごうと音を立て、茶色い水が流れていた。
「危険だから、あまり川には近付かないでください。」
黒い合羽を羽織っているガロト少年が声を掛けてきた。そんなガロト少年に尋ねる。
「ねえ、ガロトくん、この川って水を調整するための施設ってあるの?」
「施設ですか?ないでしょうね。この川の水は龍が調整しています。」
突然ファンタジーな単語が聞こえて目を見開いた。
「えっ、この世界って、龍がいるの?」
「いますよ、知恵の悪魔。そちらのルハボン人の方が詳しいでしょう。」
タニヨンを見やると、ピースをしてきた。
「ルハボン人の中には、ながーくながーく生きる人もいるのよ。そうするとね、ルハボン人はどんどん背が伸びるの。伸びすぎるとね、2本脚で立っているのが大変になっちゃうのよ。そうして4本足で暮らすルハボン人を『龍』と呼ぶのよ。だいたい100歳くらいに龍になる人が多いかしら。そこまで生きる人はほとんどいないけどね。」
トカゲみたいなタニヨンの姿をまじまじと見る。確かに龍っぽくなるかもしれない。
「この川の上流に龍が川を堰き止める人達と暮らしているんだ。」
ガロトは山の方に顔を向けた。
「ねえ、その人達と連絡は取り合えているの?」
ガロトはしかめっ面をした。
「滅多に連絡をとらないですが、さすがに行方不明の件があってからそちらまで行っている人がいるはずだ。」
でも、だいぶ増水している。それに気付いたガロトも、話しながら川の様子を見ていた。
「龍ってさあ、おじいちゃんおばあちゃんなのよ。」
タニヨンがくねくねしながら話し始めた。
「力仕事はできないと思っていいわ。物覚えも悪くなっている人が多い。これくらいの増水ならありえるわよ。」
同じルハボン人として、フォローしたいのかもしれない。
「『鉄砲水』ってありえるのかしら。」
「テッポ……なんだって?」
シントー様が合羽から顔を覗かせる。
「うーん、こちらの言葉で何て言うのかしら。あっ、そうそうあんな感じーーー。」
川の上流を指差す。言ってから気付いた。まずい。
川の水かさが増え、足元まで水がやって来る。見た目ではちょっとだけのように思えるが、ずっとこの水が流れている状態だと、簡単に足をすくわれる。鉄砲水とまでは言わないのかもしれない、と思いながら私は流されてしまった。他のみんなはどうなっただろうか、分からない。念の為にと、浮き輪を体に身に着けておいてよかった。土石流のようになっていなくてよかった。私は水の流れに身を任せて、早くどこかに着かないかとただただ祈った。
「モーナ。」




