第一章16 道すがら
「で、どうしてあんたも一緒にいるのよ。」
私は一緒に馬車に乗り込んだタニヨンにイラついていた。
あの後、すぐに海の街「ソーン」に向かうこととしたシントー様と私。そのとき、シントー様はタニヨンにもついてくるよう言った。私はギョッとした。タニヨンはそれに笑顔でO.K.を出した。私はさらにギョッとさせられた。
「なんとなく理由は分かるけれど、言わなーい。」
タニヨンはこちらを向かず、弦楽器をいじりながら答えた。その態度が私をもっとイライラさせる。
「それよりも、神隠しのことを聞かなくていいのかい?」
私達2人の視線がシントー様に集まる。シントー様は寝袋を準備し終わった後は、あぐらを書いて水筒の中の酒を飲んでいた。少し渋い顔がずっと変わらない。
「ソーンの街は海産物と塩で有名だ。このトゥーンヤーにおいて、それらが取れるのはソーンくらいだから、とても重要な拠点と言える。そのソーンの街の長から報告があったんだ。ここ最近、いつもと違う魚が獲れると。今まで獲れる海産物が獲れなくなったわけじゃない。しかし、なんだか見た目が不気味な海産物が獲れるようになったそうだ。」
潮流が変わったのだろうか。特に地震などの大きな自然災害はなかったと思うのだが。私はこの大陸や近くの海洋の土地勘がないためよく分からない。
「そして同時期に、少年が行方不明になるようになった。多くは、元気も威勢もよい、よく海で遊んでいる子たちだったそうだ。そこで、知恵の悪魔の知恵を借りようということになったわけだ。」
うーん。あまり力になれる気はしない。
「犯罪とかは考えなかったのかい?知恵の悪魔様みたいに、誘拐されたとか。」
タニヨンが口をはさんでくる。
「考えている。しかし、知恵の悪魔は誘拐されても、自力で何とかしてしまうことができる。」
シントー様の顔がもっと渋くなった。シントー様はトゥーンヤーの王様とはいえ、一人で物事を決定するわけではない。あまりシントー様は私がソーンの街に行くことに賛同していないみたい。もしかしたら、ソーンの街長は私が誘拐された後のことを知り、この事件を誘拐だと考えて、私に助けを求めたのかもしれない。
タニヨンが和音をかき鳴らした。
「さて、ではひと仕事しようかな。さあ、横になってくれ。」
何を言っているのか分からなかった。しかし、シントー様が言われるまま寝袋に入ったので、私も同じようにした。すると、タニヨンは音楽を奏で始めた。不思議なリズム、特徴的な和音進行、タニヨンの甲高い声が私の緊張をほぐす。がたごとと動く床の上、寝袋に入っているとはいえ、寝られるか心配だったが、この歌の中だったら眠れそうだ。そうか、これがタニヨンの仕事か、と納得しながら、私は夢の中に入っていった。




