第一章15 海の街へ
しばらく、私は、草原の町にいることになった。マパの教会に通い、子供たちと一緒に勉強する。
「『月が明るい中を歩く。』が堂々としていることなんだね。おもしろいことわざだ。」
「ことわざって何?」
「『月が明るい中を歩く。』って、それだけじゃ堂々としていることにつながらないでしょう?でも、この国にとっては、月が明るい夜に周りに何もない草原を歩くことは、敵に襲われない自信があること、敵に襲われても構わない余裕があることにつながる。だから、このようなことわざになったんだね。そのままの言葉の意味じゃない意味が生まれた言葉を、私の国ではことわざと言ったんだ。」
「そうなんだ。知恵の悪魔の国にはどんなことわざがあったの?」
「月夜の晩は、私の国では気を付ける場面、という意味合いだったかな。」
私の国とトゥーンヤーでは文化も、治安も大きく異なる。ついつい、周りの人々がよい人ばかりだから慢心していた。私にとって、この国で過ごすときには一時も欠かさずに気を配らなくてはならない。
「そういえば、知恵の悪魔は『タニヨン』のこと知ってる?」
「『タニヨン』?なんだいそれは?教えてくれる?」
「歌がとても上手な毛無しなんだよ。近くの町に来たらしいから、もしかしたらこの町にも来てくれるかも。」
「そうなんだ。お礼に一緒に手遊び歌で歌おうか。」
「やったー!」
子供たちとやり取りするのはとても楽しい。でも、もっと自分の安全を確保し、他の人々も安全に生活する方法を探したい。そう、この子たちが長生きできるように。
タニヨンは草原の町にもやって来た。夜、タニヨンが火を焚いて歌っていると、自然と人々が集まる。私も友人に誘われて、タニヨンを一目見に来た。
「おや、知恵の悪魔じゃないか。久しぶりだね。」
そこにいたのは、私をさらったルハボン人の一人。サヒーハクより声が高かったあのトカゲ人間だった。
「怖い顔をしている。」
タニヨンはポロンと手に持っていた弦楽器を鳴らした。ぱっと見、ギターみたいだと思った。よく見てみると、マンドリンやリュートに似ている。
「そんな知恵の悪魔の歌を歌おう。」
タニヨンは歌い始めた。その場にいた人々が聴き惚れる。うっとりとした顔をし始める顔なじみの人々。でも、私は、警戒を解くことができなかった。
「よい歌だな。」
ライオン頭のマッチョがやって来た。
「シントー様だ!」
「シントー様も聴きに来たの?」
子供たちがシントー様に駆け寄る。何人かの頭をなでながらシントー様は答えた。
「そうだよ。そして、知恵の悪魔と相談しに来た。」
こちらを真面目な顔で覗く。どこか、いつもより青ざめているように思えた。
「海の街で起こっている、神隠しを解決してほしい。」
遅くなって本当に申し訳ございません。




