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第一章10 誘拐

スアの奥さんと一緒に、ヌン地方の教会へとやってきた。

木造の建築物が、温かさを覚えさせる。


「文字の指導ですね。構いません。」

牛の司祭は厳かな声で答えた。

「民への声掛けは、あなた方がしてくれるのでしょう?多くの人が教会を訪ねてくれるのは、私たちとしてもありがたいことです。これも神の思し召しなのでしょう。モーナ。」


「モーナ」はエミリノラ教団の祈りの言葉だった。

マパの「モーナ」は明るいのに対し、この人の「モーナ」は周りを圧倒させるものを感じる。

気のせいだろうか?


「知恵の悪魔よ。」

「なんでしょうか。」

司祭の視線が突然こちらを向き、少しびっくりした。

「これはあなたの入れ知恵ですね?」

「そうです。私が提案しました。」

司祭は少し考えてから、こう言った。

「気を付けなさい。理由のない善意は怪しいものです。直接聞きましょう。あなたは何故エミリノラ教団で文字の指導をすることを提案するのですか?」

言い淀んだ。友に死んでほしくなかった。そんな、自分勝手な理由を話してよいものだろうか。

「今、答えなくても構いません。」

困った顔をしていたのかもしれない。司祭は助け舟を出してくれた。

「しかし、あなたに危害が及ばないか、心配なのは確かです。周りにいる人々の中には、あなたに親切でない人もいるのです。」


なんだか、人と話をするのはこんなに大変だったか、と思った。

教会から出て、陽の光にあてられると、自分の力不足を感じた。

スアの奥さんと司祭はまだ中で話をしている。

教会の外で、一人で落ち込んでいたのがよくなかったのかもしれない。


突然、私は布袋を頭に被せられた。

時間が空いてしまいました。なんとか毎月一話は投稿していきたいです。

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