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レクリエーションは『バグ』だらけ

「そんな、嘘でしょ」

「嘘って、何故特に親しくもない方にそんなくだらない嘘を

 ついて困らせる必要があるのですか」


なんて冷たい態度だろうか。

『ステラ』はあんたよりも優れた特別な存在なのよ。

知らないわけないのに、どうしてそんな態度ができるのよ。

あとから後悔しても、知らないんだから。

いよいよやって来た春の季節の大イベントが始まった。


これを待っていたのよ。


いくら新作の世界と言っても攻略キャラが同じ以上大きく話は変わらないだろうし、現に同じイベントが起きたもの。リメイクの世界なら全部使えないなんて事はないわ。

それにこのイベントは『ステラ』にとって都合の良い事しか起きないもの。

まず、攻略キャラと二人で進むのは絶対だから、今までの様に会えないなんて事はないの。今までの失敗を全部ぜーんぶ取り返すにはそんな事は言ってられないわ。

精霊に愛されて、森の悪戯好き精霊のお気に入りにもなった『ステラ』は皆から助けて貰えるというのだから、そいつらの力で皆『ステラ』と一緒に進めばいいのよ。

そうすれば、今までの失敗は全部なくなって、更に攻略キャラたちに『ステラ』がとても凄い事を目の前で見て貰えて、親密度も爆上がりって…最高でしょ?

このイベントは『ステラ』の思い通りになるんだし、そうしたっていいはずよ。

物語の『ステラ』は精霊たちの手助けや他の子たちへの妨害は『ズル』だと言って断るけど、失礼よね。折角の好意を『ズル』なんて酷いわよね。

まあ、そんな誠実な心に更なる加護を与えられるって言うけど、試練は難しいし、危険あるし、結局イベントは最下位で……でも秘密の一等賞になんの意味があるのよ。


ここは皆にわかるように一位を取って、『わからせて』あげるべきよ。


誰が特別なヒロインであるかを。





だというのに、どうしてなの。

なんで、アスター王子がいないのよっ。



「なんで? どうして? だってアスター王子は」


アスター王子を選べば、婚約者であるツツジ様は取り巻きモブ令嬢たちを引き連れて、先にスタートしてしまったから、『ステラ』と進む事になったのよね。

でもこれは互いが気になる存在だと看破したツツジ様の粋な計らいなのに、それを良く思わない取り巻きでもないただのモブ令嬢たちが邪魔をするの。草で罠を仕掛けて、転ばせるなんて低レベルな嫌がらせをちまちま作っている姿は笑えるけど、それをアスターが庇って怪我をするという流れなの。

精霊の力を借りないと宣言した『ステラ』は軽率な発言を後悔するの。

このままでは怪我を治せないって。

そんな無力な自分に泣く『ステラ』をアスター王子は慰める。


『君がこんな目に遭わなくてよかった』って。


はあ。やっぱりこのルートは好きという気持ちがある分語るだけで最高な気分にしてくれるわ。それを現実に出来るはずだったのに、何でいないのよ。


どうして、ツツジ様と一緒になんておかしな事になっているのよ。


ツツジ様は『ステラ』を、アスター王子の幸せの為に助けてくれる存在でしょ。

なのにどうしてこんな邪魔をするのよ。

こんなのバグじゃないの。



もしかして、もしかして、もしかして。

ツツジ様は、『転生者』って事かしら。


アスター王子と幸せになりたい転生者がツツジ様の生き方を否定する気!?

ツツジ様の何を見てきたのよ。

邪魔をせずに、二人の幸せの為に身を引き、支えてくれるツツジ様の誇りを汚すというの!?

こんなの、酷い原作改変だわ。

自分の欲望の為に高潔で便利なツツジ様の生き方を汚すなんてっ。

探して、自分のやっている事がどれほどの悪事か教えて反省させないとっ。



〇〇〇




「駄目じゃないか、ガロイジュ男爵令嬢。

 ここは悪戯好きの精霊たちの遊び場でもあるんだぞ。

 いくらお前が精霊に愛された特別な存在だとしても、一人は危険だ。

 先生たちだって監視はしているけど、一人で行動するのはよくない。

 グループで行動しなさいと、言っただろう。

 良かったな、グループに入れて貰えて。

 しかも彼女たちは優秀だからなあハハハ!

 お前たち充分気を付けなさい。

 何かあったら、その救護要請の笛を吹くんだぞ。

 魔力が込められているから、ちゃんと届くからな」




早く行かないといけないのに、一人で走り出した所にこんな邪魔が入るなんて。

これってショウのルートじゃないの。

物語始まるまでやる事ないからって、ショウばかり構っていたからってこれは無いでしょ。


ショウルートの場合、同じクラスの子たちと行くを選ばないといけないのだけど、ショウのご褒美は終わってからしか、出てこないのよね。

ショウと一緒なら、って言う『ステラ』に嬉しがるのよね……。

どこが良いのか分からないわ。

攻略は家に帰るや、休日を共に過ごすや休息で勝手に親密度上がる初心者向けだけど、ショウのどの辺が楽しいのか分からないのよね。

学校は一緒に過ごせないから学校のイベントではほとんど何もないし、季節イベントはあるけど家族だから特別感ないし、簡単だけど……ねえ?


ショウルートって精霊に愛された『ステラ』の力を期待して、喜んでグループ組んでくれるけど、『ステラ』がそれを使わないと言ったら、お荷物扱いよ。

言うわけではないけど微妙な態度で、『ステラ』は力のない自分はあんまり意味がないのかと傷つくけれど、でもそれは正しいと思うわ。

折角便利な力があるのに、使わずに楽しみたいなんて傲慢な奴だと思われたでしょうね。


どこか引っかかる対応にも『ステラ』は精霊たちに励まされ、どんな苦難も耐えたと加護を貰うけれど、どのルートよりも惨めな気分の『ステラ』は落ち込むの。

それを励ますのがショウの役目だけど、なんでそんな事やらないといけないのよ。

どうして『ステラ』として思い通りになる世界をわざわざ嫌な気分にならないといけないの。

どうせ微妙な態度されるくらいなら、こっちからお断りしてやるわ。

もう少し歩いてはいるけれど、こんな最悪なルートはさっさっと外れてアスター王子や他の攻略キャラに会いにいかないと。




「 ……ガロイジュ男爵令嬢、あなた何か得意な事はあるかしら。

 何が出来るか教えて貰えるかしら。

 先生の頼みでこうやって組むことになったんだから、俯いてないで

 しっかりやれることをやってもらわないと困るのよ」



は???

なによ、その態度は。

ゲームの中だってそんな事言われなかったわよ??

先生の頼みで、って何言ってるのよ。

そっちが『ステラ』を使おうと狙って、待っていたんでしょ?

何言ってるの?

それに、何もしてないのに、力を使わないなんて言ってないのにっ

もうお荷物扱いするってどういう事よ。

いいわよ。そっちがそんな態度でくるならこっちだってお断りよ。

いいのよ。困るのは特別な存在の『ステラ』に酷い態度をとったそっちよ。

『ステラ』はみんなの力を借りて楽々ゴールへ行くんだから。


「それはこちらの台詞よっ。

 何であなた達みたいな余りものと組まなくちゃいけないのよ。

 そんな事言われるなら一人で行きます。

 酷い事言ったあなた達なんてお断りだわ。

 あなた達、当てが外れて残念ね?」


ついでに先手必勝よ。

力をあてにしていたのに、その力を使わないからって微妙な態度で

『ステラ』を無下に扱う様な人たちが力を使った所で碌な扱いするわけないわ。

モブの思い通りになんてさせないわ。

特別なヒロインである『ステラ』なら一人でも充分。

だって、ここにいる『ステラ』は力を使わないとか、協力を断るなんて馬鹿な真似はしない。

これなら一人でも充分楽ができるわ。

そして、あいつらを見下してやるのよ。

随分苦労したんですね、って。ふふ!



とにかく、これで邪魔なんて入らないわ。

『ステラ』には味方がたくさんのこの森で、ヒロインとしての力を見せつけてやるわ。

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[一言] 肝心の精霊に助けてもらえるのだろうか
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