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あれからほんの少し時間が経ち、レクリエーションの日がやって来た。

精霊が住まうと言う伝承がある自然の迷宮でのそのイベントは春の大イベント。

学年を越えてグループを組み、試練を乗り越えゴールへとたどり着く。

普通なら同じ学年の者との親睦を深める為なんだろうが、そこは学年の違うキャラがいる為の救済措置だろう。試練の内容は様々あったが、テキスト上で流されている。

何故ならばヒロインは精霊に愛された特別な存在。

学校側が用意した試練どころか、いつも近くに居る精霊たちや森に住む精霊たちも手伝って、どんどん進んでいくのだけど、そんなのはズルだとヒロインは言って次からは自分たちの力で行くと助力を断るのよ。そんな彼女の心に感心した精霊たちは更なる加護を与えようとあえて難しい試練を与える。

まあ、攻略キャラによっては嫌がらせが発生して、危機に陥る事もあるけれどそれがまた良いスパイスになってより絆を深めると言う春のご褒美イベント。

リリアはアイローズによる嫌がらせの手伝いをしていたの。

間違った道に誘導させようとしたり、激辛ドリンクを渡せと命令させていたり……全部失敗するけれど。

そんな展開なんて無縁の今、リリアはどんな風に楽しむのかしら。

これ、あとで円盤になったりしないのかしら。いくら払えば見られるのよ。

配信チケットとか……。

………こほん。

それはあとでたっぷり聞くと決めたでしょう、『私』

今はパンジーとして、彼らの親として、安全を祈る以外する事はないはずよ。

楽しそうにしていたリリア。

話を聞くのが、とても楽しみだわ。




〇〇〇


「まあ。そうだったの」

「ミリア様は空から見ている様に色々な事がわかるんですよ。

 それにサーシャ様は薬草や植物に詳しくて、色々教えて頂いたんです。

 礼儀作法もですけど、どんな時も冷静でいられるなんてやっぱり凄いです。

 お怪我をした人にもちゃんと処置をして、焦らずに先生に知らせようとしたり、

 わたしもそんな風にてきぱきと動けるようになりたいです」

「あら、凄いわね。怪我した人に出会って、応急処置なんて」


楽しそうに語るリリアはそれはもうキラキラと輝いている。

何事もなくとは言えないが、楽しんでいて何よりだ。


「母上もご存知かもしれませんが、新入生に精霊に愛された方が居たんですよ。

 管理はしているし、危険がないか見ている人もいますが安全の為に

 グループでの行動が望ましいのですがその方は何故か単独で挑まれたみたいで、

 捻挫して動けないそうなので、ダンカー伯爵令嬢らが応急処置をして、

 保護を要請したんですよ。

 何故、どうして、こんなのおかしいと何度も口にしていましたが、

 いくら精霊の加護があると言ってそんな無謀な行動をするなんて驚きました」


カイが言っている精霊の加護を過信して無茶な行動を取った人物に心当たりがありすぎて、関係もないはずだが冷や汗が流れ出す。それってもしかしなくてもこの世界のヒロインはもう物語とはかけ離れていると言うわけになってしまう。いや、『私』が批判したり文句いえる立場ではない。

自分の好きに変えようと、いや既に変えている『私』は何も言えないが、何故そんな無茶をしたのだろう。このイベント、精霊の加護を使わないと言うのが大きな肝だろう。

そういった事をせず、真摯に取り組んだ心に新たな加護と力を与えられる。

それが、攻略キャラとの絆と特別な体験のドキドキが恋心を加速させるのだ。

……って友達が言ってた。

ごめん、純粋に楽しんでなくて。

けれど、『私』と違ってそんなイベントであると知っているはずであろう転生者たる『ヒロイン』がどうして、そんな事になっているのだろう。

……物語というか、進行上ヒロインはどのルートでもズルをすると言う選択肢はない。

もし、そんな選択を選んでしまったら、やっぱり話は変わってしまうのかな。


それとも、たまたま運が悪くてそのまま滑り落ちて、たまたま怪我をしたと言う可能性も……。

生きてる人間ならそんなドジ踏むことだってありえるし……。


「母上、どうかしましたか?」

「え、ああ……なんでもないのよ。二人には怪我なくて良かったわ。

 リクは何もなかったかしら」


うっかり考え事をしてしまったわ。

怖い顔、してたのかしら……。

せっかく二人から話を聞いていたのに、他の事を考えるなんて二人に失礼ね。


「私は生徒会として実行委員と共にイベントに関わってましたから、

 答えを知っていたり、仕掛けを施したりしてますから、参加できませんよ。

 可愛い弟と妹と共に楽しみたかったですが、ふふ。

 見守っているのも楽しかったですよ」

「兄上ですよね、棒を使って……ってクイズ!

すごく難しかったんですよ!? ヒントもなんですかあれは!」

「さあ、なんのことだか」


カイの非難をリクはさらりとかわす。

ああ、きっと作ったのね。絶対難しいやつを……。


「そうだ。没にしたけど中々評判が良いのもあるんだ。

 リリア、一緒に遊ぼう。カイも勿論やるよね?」

「おかあさまも一緒にやりましょう~」

「父上にもあとで出題しましょうよ、兄上」



なんて眩しい幸せなかよし家族……っ。

なんでこれ公式じゃないの?

もうプランタ一家のほのぼの生活ってアニメにしろっ。

アニメ制作っていくらくらいなんだろ…。

この世界なら紙芝居とか、いけるんじゃないかしら……。

かみしばい、良い……。

というかこの世界の画材って何……?

とりあえずこの幸せ映像は目と脳に焼き付けよう……。


「まあ。おかあさまにも出来るかしら」


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