陽キャとパシリ
『あー、腹減ったわあ。誰かカレーパン買ってきてくれねえかなあ!』
陽キャ。
スクールカーストのトップである。
『おい、鹿島あっ!!』
『は、はい!』
トップだから、その子分がいるわけだ。
『5分な。カレーパン。』
『ご、5分ですか、、、』
『できねえのか?』
『や、やります。やらせてください。』
僕のよくないクセだ。
弛んだ腹をたぷん、たぷんと揺らせて走る。
カレーパンはこの高校1の人気メニューで、揚げたてが2限と3限の20分休みで販売される。
『はあっ、はあっ!!』
疲れた。
購買部に到着する。
『はーい、押さない!押さない!』
カレーパンを買うには、この生徒が殺到した、空港で芸能人を待ち受けるくらいに殺到している人の群れをかき分けなくてはならない。
『すみません、すみません・・・・あだっ!!』
『横入りすんな、デブっ!!』
横っ面に入る肘打ち。聞いたことのある声だ。
真島だ。
いや、今は真島なんて気にしていたら、陽キャにぶっ飛ばされる。
『はあっ、買います!買います!』
人波をかき分ける。
『今日の分、売り切れでーす。』
はい、ぶっ飛ばされるかくてーい。
『いだっ、ぶふっ!!』
『ああん、てめっ、ボスがカレーパン食いたがってんのに、なんで手ぶらなんだ?ああん?』
見事に腹にキックが入り、僕の巨体がぶっ飛ばされる。
『まあまあ。鹿島君の意思を尊重しなきゃだよお。』
陽キャはニヤニヤしながら近づく。
『キミはマジモンのドMってことなんだよねえ?』
『ぶふっ!』
陽キャの子分にボコボコにされる。
『どうします?ボス。』
『さあ?僕の預かり知るところじゃあ、ないしい。』
『ボス、火炙りなんてどうですかい?』
子分がライターを近づけてくる。
『ひいっ!』
ライターの火が髪の毛先を焦がす。
髪の毛先もそうだが、服に燃えうつったらひとたまりもない。
『ふがっ、ふがっ!!あちちっ、あちいっ!!』
耳たぶを火炙りにされる。
『はっはっは、見ろよ、豚のように泣いてやがる!』
陽キャは自分では手を下さない。
僕はボコボコにされて、耳たぶを火炙りにされ続けた。
『鹿島、今日もキミの部屋行っていいか?』
ナルちゃんから、チャットが飛んできた。
今日会ったらまたナルちゃんに怒られてしまう気がする。明日、皮膚科に行って治療をしてからでないとダメだ。
『今日はごめん。少し疲れてるんだ。』
『そうかい。鹿島といるとボクも心が和らぐんだ。でも1人の時も必要だよね。じゃあ、また明日学校でね。』
学校で・・・か。
学校でのナルちゃんは、忙しいからなあ。なかなか会えないのだ。
でも仕方ない。陽キャだって、僕をいじめたくないことくらいわかっている。
この話をしたら、ナルちゃんは僕を庇ってくれるだろう。しかし、ナルちゃんにも立場があるから、いたずらに庇ってもらうのも大変なのだ。
ナルちゃんとは、ラブコメだけしていたいのだ。
ナルちゃんに心配をかけたくないのだ。
だから、僕は甘んじていじめを受け入れよう。
そうすればみんな、幸せなんだから。