満月と最凶最悪の幼なじみと
『ごぽっ、ぐわっ!あがっ!』
『死ねよ!なんでちゃんと掃除しないんだあっ?ああっ!?』
委員長を一瞥する。隆起した筋肉。頭が割れるくらいの握力で水瓶に頭を沈められる。
(意識が・・・・)
視界が白む。
息が・・・・
『・・・しま。』
声?
『鹿島!』
『うわああっ!』
目を開けると見慣れた天井。
僕の部屋だ。
『鹿島、大丈夫か』
横にいたのは涙目のナルちゃんだ。
『あれ、僕・・・。』
『鹿島、何があったんだ?君のGPSを追ったら旧校舎のトイレなんかにいて・・・・。』
そうか。ナルちゃんは僕に対してのいじめが始まってからGPSで位置を把握してくれたのか。それでもナルちゃんは僕らと違い、忙しいからすぐには来れない。
『ありがとう。また助けてもらったね。』
『誰だよ?鹿島をあんなにびしょ濡れにしたやつは?』
『・・・・。』
僕が言ってしまったら、委員長がどうなるかわからない。委員長だって委員長の威厳や、内申点とかあげなきゃいけないから大変なんだろう。
委員長だって大変なのを僕は知ってるのだ。だから、言えない。このいじめだって。
学校のクラスといういわば、村社会的なコミュニティが生み出した村八分のようなものなのだ。別に悪者がいるとは思えない。
『鹿島・・・優しいのはキミの取り柄だけど、、だからといってキミが被害者になる必要は・・・。』
『そうだね。ナルちゃん。でも僕はクラスメイトを吊るしあげることなんて、できないよ。』
手が刹那、暖かくなる。
『な、ナルちゃん!?』
『鹿島。キミという男は・・・・。』
ナルちゃんが手を握り締めてくる。
心臓の音が高鳴る。
『鹿島。キミはボクが守るから。絶対に。』
『ナルちゃん。』
手を握り返す。
『ぼ、僕はナルちゃんがいれば、それだけで・・・。』
ナルちゃんと見つめ合う。
お互い顔が赤くなるのがわかる。
ナルちゃんが僕を抱き寄せる。
『キミのような素敵な男の子が!!キミの優しさはもっと、もっと、幸せになる為にあるはずなのに!!』
僕の手に雫が落ちる。
ナルちゃんを見上げる。
そのまま顔が近づく。
満月が重なる2つの影を照らす。
この日僕らは、1つの毛布を包みながら雲1つない夜空をずっとずっと見上げていた。