love beat!フューチャリングナルちゃん
『な、ナルちゃん、ちょっと激しいって。』
『鹿島、こんなものじゃないだろ?ほらこんなに出しちゃって。』
ギジギシと床にまで響く音。
『はあっ、もう限界だよっ!!』
『だーめ、まだまだっ!』
『ああっ!』
思わず足がもつれて倒れる。
『痛ーっ!』
『あはは、鹿島は鈍臭いなあ。』
ナルちゃんはスポーツウェアを着込んで画面に合わせてリズミカルに動いていた。
『鹿島、汗出過ぎだよ。新陳代謝がいいのは素晴らしいけど、、、それよりもっと運動したほうがいいね。』
『あー、うん。』
月1回。ナルちゃんの家に上がってダンスのテレビゲームをする。目的は僕の運動不足の解消だ。
『鹿島はさ、太りやすいんだから運動習慣つけた方がいいよ。』
『う、うん、わかってるんだけど。』
人間の習慣は厄介だ。
習慣を足すのも難しいし、今の習慣をやめるのも大変だ。僕はお菓子を食べるのがやめられない。一種のストレス解消になっているからだ。
お菓子をやめるか、運動を足していくか。
痩せればいじめは少しは止むかもしれない。この体型もあの出来事に拍手をかけているに違いないから。
『汗すごいね。うちのシャワー使っていく?』
『あ、いやいや、いいよ。』
ナルちゃんの家のお風呂。ちょっと想像すると興奮する。
『風邪ひいちゃうからさ。いいよ、使いなよ。』
『いやいや、なんか申し訳ないからさ。』
『なあに?もしかして恥ずかしいのお??』
ナルちゃんは動きを止めて座りこんでいる僕の顔を覗きこんでくる。顔が近い。心臓が急激に全身に血を巡らせるのが、はっきりと感じる事が出来る。
『そ、そんな事ないよ!』
『じゃあ使えば?』
『ぐぬぬ。』
ナルちゃんはこうやって僕を揶揄う。
『あ、そしたら昔みたいに一緒にお風呂入る?』
『いやいやいや!そんな、そんな・・・。』
もう僕は高校生だぞ?理性を保てるかなんて、わからない。
『ははっ、冗談だよ。はい、じゃあボディーシート使いなよ。』
ナルちゃんは手渡してくる。
『う、うん、それなら。』
受け取って汗を拭く。
『はあ、スッキリした。ついでにちょっとトイレ行ってくるよ。』
『うーん?そっちの方もスッキリしたいのかあ?なんなら、僕が・・・。』
『言わせねえよっ!』
18禁にならないように素早く突っ込む。
『はい、はい、じゃあいってらっしゃいな。』
『全く・・・・。』
僕はナルちゃんの部屋の扉を閉めた。
画面のダンスミュージックが鳴り響く。
歌詞はちょっとエロチックな感じで、アップテンポな勢いのあるビートだ。なんとなくお膳立てのつもりだったんだけど、やはり距離は縮まらない。
『・・・・別に鹿島ならいいんだけどな。』
ボクはポツリとつぶやいてみた。