真島という男
『一気!一気!』
『飲め飲めえっ!!』
『うわっ、汚ねえ!吐くなよ。』
渋谷センター街のとある居酒屋。
ある大学のサークルがそこでは毎日のように飲み会を開いていた。
この東京にも春の訪れを感じるようになったこの日、新歓コンパが開かれていたのである。
僕は、よおく知っていた。僕を殺したあいつらが今まさにそこにいることを。
何気なく観察してみる。
『おいおい、酔い潰れてんなあ。うわっ、寝ゲロすんな!おい、2年!誰かこいつトイレに連れてけや!』
茶髪のロン毛にした、真島はそんな風にサークルを仕切っていた。真島の他にもかつてのクラスメイトが何人かいる、そのサークルはわりと有名だった。そのサークルに、僕はある死角を送り込むのだ。
『あーあ、ちょっと女の子潰れちゃってんなあ。おーい2年!俺この子、タクシー乗せてくるから場を仕切っておいてよ!』
『真島さん、わかりやした!』
真島はいいやつだった。僕のことを気にかけては、背中を押してくれた。結果的には背中を押して崖から突き落としたかったみたいだけどね。
真島は酔い潰れた、少し肉付きの良い女の子をおぶる。知ってるさ。あいつがセンター街を抜けて渋谷駅ではなく、道玄坂のラブホ街に向かっていることくらい。
とにかく真島はこうやって新入生歓迎会で女の子を潰しては、酔った勢いで女の子を何人も手を出してきた。
中には、避妊に失敗して中絶させた子もいる。
ただ女の子だけでなく、好みであれば男にも手を出す。男の場合は、もっとえげつないらしい。
あらゆるトラブルは、親が弁護士なことをたてに、全て示談で済ませているようだ。
控えめにいって人間のクズだ。そして僕に手をかけたゲス野郎だ。
しばらくして、真島は1人でラブホから出てくる。
『ふー、スッキリしたぜ。まだ飲み会やってんかなあ。なんなら、もう1人くらい。けっけっけ。』
真島はわかりやすいのだ。
あいつの行動動機は性欲だ。
だから、それを逆手に取るのだ。
飲み会の幹事とは別の顔がある真島。
あいつを狙うのは、その時だ。