復讐の企み
僕らはある真っ白な部屋にいる。
ナルちゃんはずっとパソコンと顕微鏡に交互に睨むように向かいあっている。
『ねえ、ナルちゃん。』
『なんだい鹿島?』
『何やってるの?』
『鹿島の為になること。』
『僕の為?』
『うん、キミの為。』
『僕が何を求めているか知ってるの?』
『もちろん。キミはずいぶん酷い目にあったよね。』
『うーん、ナルちゃんが言うならそうなんじゃん?』
『無理もないか。いいかい、キミは復讐を求めているんだ。』
『復讐?』
『ああ。キミのクラスメイトはキミに酷いことをした。だから、それを命で償ってもらうのは当たり前だよね。』
『うーん、まあ多分そうだね。僕に酷いことをしたクラスメイトを殺してやりたいと思うよ。いじめ、酷かったもんなあ。』
『ああだからその為の研究さ。実はね、1つ大きな成果が出たんだ。』
『そうなの?』
『ああ。このニュース見てよ。』
渋谷で包丁男。サークル仲間を次々に惨殺。
真島 近、22歳 大学生が渋谷でのサークルの飲み会で突如包丁を振り回し次々と周りの人間を殺害。最後は自身の腹に包丁を突き立て、救急車で病院に搬送されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
『これはね、ボクの成果なんだよ。』
『ナルちゃん、すごいや!!でもどうやって?』
『まあまあ慌てなさんな。もうちょっと改良すればより良いものが出来るだろうよ。』
ナルちゃんは顕微鏡を覗く。
『ナルちゃん、僕の為にありがとう。大好きだよ。』
ナルちゃんは僕を強く抱きしめる。
『ボクもだよ、鹿島。』
『うん。』
相変わらず体は不自由だ。動かない。ナルちゃんは僕に口づけをしてきた。体が熱く・・・ならない。どうやら、人の温もりを感じる感覚すら奪われてしまったようだ。
『悲しいもんだね。』
『何が?』
『体が不自由なことが、だよ。』
『そうかい。ボクはどんな姿であれ、鹿島は鹿島だと思ってるからさ。』
『ありがとう。』
『だからね。キミができない復讐は、ボクがやるから。』
『わかったよ。頼むね。』
そう僕の体じゃあ、復讐はできない。
だから、ナルちゃんに任せる。
『でもね、鹿島、あいつらが苦しむところはみたいだろ?』
『うん。』
『だからね、キミを同窓会に連れていくからね。』
目の前でアイツらの死に様が見れるのだ。
僕の動かない心臓はそれだけで鼓動しそうだった。