僕は死んじゃったんだね?多分。
ある放課後の夕方。
校舎裏の桜の木の下で。
『あ、有島さん!キミが好きなんだ!ぼ、僕と付き合ってください!!』
流れるような黒髪。
すらっと伸びる腕と足。
学年1の人気を誇る有島カリンに僕は告白した。
有島さんは困ったような表情でクスリと笑う。
『ごめんね、鹿島くん。まだあなたのことはよくわからないから。その普通にクラスメイトとしてならお付き合いはじめてもいいけど・・・・。』
『そ、そうだよね。ごめんよ、困らせてしまったよね。』
僕は締まりのない弛んだ腹をさらに緩ませるようにしながら、肩を落とす。
『じゃあいいかしら。私、帰らないといけないから。』
『あ、うん。ごめんね。』
有島さんは腰まで伸びる黒髪を手の甲で、肩の後ろに払い、その場を立ち去った。
僕にしては頑張ったはずだ。
今まで好きな人がいても、この体型を気にして告白なんてしなかった。
『鹿島、思いは伝えないと。』
親友の真島 近に言われた言葉だ。真島はいつも僕の背中を押してくれる。唯一無二の親友だ。
真島にチャットする。
『お前のおかげで一歩踏み出せたぜ。』
いつも通り、既読がつくがすぐに返事はない。
ああなんて晴れ晴れした気持ちなんだろうか。
僕は今、最高の気分だ。
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ある放課後の夕方。
校舎裏の桜の木の下で。
『がっ、うぐっ、あがっ!』
足を空中でじたばたする。締め上がっていく首。軋む紐の音。じわじわなんてものじゃない。
『た、助けて・・・・。』
目の前が白んでいく。
『はっはっはっはー!!バーカ!バーカ!』
『調子乗ってんじゃねえよ。デブがっ!』
『おいおい、やり過ぎると死んじまうぜ?』
息ができない。
かろうじて足元の踏み台が僕の命をつなぐ。
しかし、つま先しかついてない。少しバランスを崩すと、死んでしまう。
『はあっ、はあっ、はあっ!!!』
『ねえ、そろそろやめたらあっ?ひと殺しなんてまっぴらよ。』
『へいへい、お姫様。じゃあ、縄切ってやるか。あ・・・・。』
ガタンっ!
踏み台の感触が無い。
目の前が赤く染まっていく。
『バカやろう!紐切れよ!』
『切るものなんてないわよ!』
『は、早く踏み台を・・・。』
踏み台は倒れたはずみで半壊していた。
締まっていく首と視界。
くそ、、このまま僕は死ぬのか。
このままやり直す事もないまま、人生を終えるなんてまっぴらだ!!
バキッ!
あ、、、多分そうだ。
経験はないけど、これは多分。
首の骨が折れた音だった。