66話 個人戦第1試合
武闘会個人戦、第1試合が始まった。
この試合はバトルロイヤル形式で、30人から4人にまで絞られるそうだ。
俺は今、狼人族の魔法使いの格好でナイフを持っている、周りからすれば変な奴に思われているだろう。
狼人族という身体能力が高い奴が、魔法使いの格好をして、杖ではなくナイフ持ってるのだからな……どっちやねん!って言われそうだよな。
こういう怪しい奴は真っ先に狙われるのがお決まりだ。
「おい、狼人族の癖になんて格好してんだよ!同族の恥さらしが!!」
襲いかかってきたのは狼人族の男だ、ショートソードで上段切りの構えで突っ込んでくる。
この姿なのは変身という極秘スキルのせいなのだが……相手からすれば知る由もない。
ついでに、正直言うとレインのスピードで目を慣らしている俺からすれば……遅すぎる。
「……身体強化」
俺は念の為に身体強化を掛けて悠々と上段切りを避ける。
1対1ならこれでいいが、これはバトルロイヤル……襲ってくるのはコイツだけじゃない、それを危険察知が教えてくれる。
「後ろから頂き!」
後ろから飛びかかるように斬りかかって来たのは、片手短刀を使うシーフ風の人族女だった。
俺の後ろから攻撃してくる女を見た狼人男はバックステップで一時回避した、そこは流石の狼だなと思う。
俺はチラ見で後ろを見て、剣筋にナイフを当てて受け流す。
「ちょ!!」
攻撃を受け流されてバランスを崩した女シーフは、前にべったーんと転倒……俺はナイフで背中を両断する。
彼女の背中を斬った時に、パリンと何かが弾けるような音がしてステージ外に弾かれていった。
これはこの武闘会専用の特大魔法らしく、規定量ダメージや致死級ダメージが身体に加わった際は、そのダメージを魔法が代わりに受けてその対象者は魔法エリア外に弾かれるという仕様だ、前にカエデが言っていた死なないとはこの事。
「くそっ、あの女邪魔しやがって!これでも喰らえ!連斬!」
男は3連撃技らしい?連斬を繰り出すが、ただの斬りを3回適当に振っただけのように見える。
俺は詠唱するフリをしてアイスウォールを篭手風に変化させてガードをした。
「なっ!氷だと!?」
氷に弾かれて駄目だと思ったのか距離を取った瞬間、他方で戦闘中の流れ弾ファイアーボールがいくつかこちらに向かって放たれており、運悪く男に命中。
俺も一瞬気付くのに遅れたが、当たりそうだったので篭手風アイスウォールでガードして防ぐと、氷が溶けてしまった。
「うおぁぁぁ!」
ダメージを受けた男だったが、規定量ダメージではなかったようで堪えたみたいだ。
「風刃」
俺はナイフに風を纏わせて斬撃として放ち、狼男をノックアウトさせた。
「攻撃が止んだ内に、俺も仕掛けるか……受け身ばかりも面白くない」
見渡すと幾分か人が減っていた、今で残り14人か。
後10人減ればトーナメント出場出来る。
近くで交戦中だったタンクの鬼人族の鎧男と、狐人族の女が居たのだが……
「か、刀かあれは!?」
狐人族の女性が刀を使っていた。
姿を見るに日本人のような流れ者には見えないが……確かにあれは刀だ。
ちょっと刀に興味あるな、もふもふなのもあるし……いや、もふもふだから興味ある訳じゃないぞ!?あくまで刀に!興味がある!だぞ!?
まぁ、そんな事はさておき……やはりタンク相手に少し苦戦しているようだ、俺もタンクが生き残られると地味に嫌なので排除する事にする。
俺はアクセルブーストを使用し、タンクの背後より加速して斬り掛かる。
タンクの男と刀の女性は俺が背後から迫っているのに気づいたのか、刀の女性は回避を選択、それを見た男は慌てて振り返って盾でガードした。
アクセルブーストを使用した上での背後からの攻撃に気付いてガード出来るとは、この人と1対1なら間違いなく苦戦していただろう。
鎧を見るに、何処かで兵士や騎士団に所属している人なのだろうか?
「ぐっ、なんだ貴様は!」
俺と男は拮抗するが、俺は狐人族の女性に目で合図を送った。
女性は俺を見て一瞬迷ったようだが、俺がタンクの意識を外して攻撃出来るように仕向けた事に気付いたようだ。
「抜刀……一の太刀」
タンクの男の首筋に、抜刀による一閃……そして流れるように納刀した。
見事な一太刀だった、テレビやスマホの動画で刀の抜刀術とかを見た事あるのだが、生で見るとなお素晴らしい。
タンクの男は鎧の急所である首を狙われて、一定値ダメージを貰って弾かれていった。
狐人族の女性は刀に手をかけて警戒しつつも俺に語りかけてきた。
「そこのお方、助太刀感謝するが……何が目的だ?」
今はバトルロイヤル中、警戒するのも仕方ない。
「俺はタンクの相手が苦手なんだよ、1対1になる前に落としたくなるのも分かるだろう?」
「……そうだな、それは理解出来るよ」
やはり刀でもタンク相手にするのは嫌らしい。
「だからと言って信用しろとは言わないよ、ただ刀が気になったものでな」
「この刀か?」
警戒の為に刀に添えていた手で、カチャリと刀を動かした。
「そう、何処で手に入れたのか、その刀でどういった修行をしてきたのか、とかな。昔から刀って少し憧れてたんだよ」
「ふむ、ならば武闘会終わった後で良ければ教えよう、だが……今は敵だ!」
手に添えていた刀を握り抜刀する、距離的に抜刀されても当たるはずもないのだが……
「!?」
振り抜いた刀から斬撃が飛んできた。
俺は辛うじて準備してあった篭手風アイスウォールで防御した、アイスウォールを見ると生成した氷が半分以上斬撃でえぐれてしまっていた。
「なっ!?」
抜刀からの斬撃の威力高すぎだろ!?
Aランクのティナですらこれを砕くのに2回攻撃必要だったのに……攻撃力が高いのか、それとも抜刀による攻撃補正があるのか……分からないが脅威である事には変わりない。
「まだまだ行くぞ!」
刀の女性は納刀状態で俺に詰め寄ってくる、スキル発動はしていないようだがなかなかのスピードだった、狼の走るスピードには劣るものの、人の中では早い方だろう。
「崩月!」
月のように弧を描いて下から切り上げる技だ、俺はバックステップしながら斬撃が来るかもと予測してアイスウォールを張っておいた……が、刀の先端がアイスウォールを掠めたとおもいきや、アイスウォールが真っ二つに斬られて崩壊。
まさしく月を描いて崩すかの如く……真っ二つだ。
「嘘だろおい!」
凄く強い、この人……!
一体何者なんだ……?
俺はアイスウォールが通用しないと思い、ティナに鍛えてもらったナイフでの技術で応戦する事にする。
「アクセルブースト!」
俺は刀の女性に向かって走り出し、ナイフに風の魔力を纏わせて足りない火力を底上げして斬りつける。
「ぐっ、この風は一体!?」
刀でナイフを防いだのはいいが、風の魔力を弾けさせて火力を傘増ししているので、ナイフが当たる度に刀がブレていく。
「仕方ない……影楼!」
刀の女性の姿が歪み、フッと姿を消したと思ったら背後より嫌な気配を感じてアイスウォールを配置する。
配置した瞬間にガチン!と音がしたので、やはり背後から迫っていたようだ。
「……勘か?」
「あぁ、勘だ」
俺は振り返って崩月に備えてナイフを構えると。
「そこまで!!4名になったので、今いる4名トーナメントへ出場決定です!」
「「え?」」
周りを見ると俺と刀の女性以外に、長剣を握る騎士団的ななりをしている人族男性と、ムキムキな身体でポーズを決めている男が離れた所に立っていた、あっちが残り1名を倒したようだ。
「……続きはトーナメントで、か」
刀の女性は刀を納刀して、ステージから去ろうとする。
「なぁ、名前は?」
俺は刀の女性の名前を聞いた。
「セシルだ、そっちは?」
「俺はコウガだ」
「コウガか、覚えておく」
セシルはそう言ってヒラヒラと手を振りながらステージから去っていった。
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