54話 模擬戦②
レインと向かい合うソルト、レインは武器を拾うことなく、素手VS脚の戦いになった。
「私は元々素手で戦ってたの、剣も便利だから使うだけでね。今日はずっと剣でやる予定だったから篭手はないんだけど……鋭利な武器を使わないソルトになら要らないわ」
「もしかしてっすけど、剣を使うよりも強いんすか?」
「相性もあるからどっちとは言えないけど、熟練度的には素手の方が高いと思うわよ?」
「うっ、お手柔らかにっす……」
「なによ、私を本気にさせたんだから死ぬ気でやりなさい!行くわよ!」
身体から風が発生し、脚に風が集っていく。
「はっ!」
風を利用して物凄いスピードでソルトに迫りパンチを繰り出す。
ソルトも篭手でガードしつつステップで避けようとするが、激しい連撃に防戦一方となり、たまにガードが漏れて直撃を喰らう。
「ぐぅっ……」
「ちょこまかしても勝てないわよ」
やばいっす、この連撃早すぎるっす、脚技を繰り出す暇を与えてくれないっすね……瞬歩も使えないっす。
瞬歩は避ける為に使う事は出来ない、これは相手に目掛けて一直線にしか移動出来ない代わりに移動速度が早い、アクセルブーストとの違いはこれなのだ。
チャンスはあるはずっす、よく見るっす自分!
レインのパンチを見切る為にステップを止めてガードに徹する。
「パンチに意識がいきすぎね」
レインに足払いされて身体が横に倒れ込む。
「しまっ!?」
「はぁぁぁぁ!」
レインが拳に風を集めて振り下ろしてくる。
「くっ、まだっす!」
片手を地面に付け、身体を横にずらして何とか回避をした。
「まだ動けるのね」
「まだやられる訳にはいかないっすから!瞬歩!」
次はこっちのターンっす!
レインに瞬歩で距離を詰め、近付いた瞬間に姿勢を低くして腹部へタックルする。
「うぐっ!?」
腹部にダメージを喰らったレインはよろめいてしまう。
蹴り技しか使ってこなかった為に、意表を突けた。
「はぁぁ!」
よろめいた隙に腹部へ回し蹴り、吹き飛んだレインを追い掛ける。
数m飛んたが、ソルトがしたように手足で受身を取って着地、風を使って回避行動を取る。
「逃げられたっす」
「まさかタックルされるとは思わなかったわ……そろそろ風の力を脚や手だけにするのはやめようかしら」
「!?」
レインのスピードの主軸となっていた風が、レインの身体を包み激しくなる。
「悪いけど、接近戦でこれを使ったらなかなか破るのは難しいわよ」
「やってみないと分からないっす!」
レインに迫り、腹部へ蹴りをしようとするが、風の風圧を受けて速度が鈍って防がれる。
「なんすか、この風圧は……!?」
「私は風に愛された狼人、これが人じゃなく狼なら、きっと伝説のテンペストウルフね、これのお陰で私は強くなれた、これが正真正銘……私の戦闘スタイルよ」
伝説のテンペストウルフ、これはこの世界の1番最初に生まれた勇者と魔王の戦いの歴史で、勇者が引き連れていたというウルフだ。
風の加護を受けた大きなウルフをテンペストウルフと呼んでおり、勇者との旅を終えた後は消息分からなくなったそうだ。
こんな風……どうすれば破れるっすか……?
ソルトはこの風圧をどうすれば破れるか考えるが思い付かない。
「くっ……はぁぁぁぁ!」
ソルトは脚の連撃を繰り出すが、全て風圧により着弾手前で速度が鈍り全て防がれる。
「甘い!」
「あっ!」
風圧により速度が鈍った脚をレインに掴まれて投げ飛ばされる。
風圧に乗せられて10m程飛んだだろうか、受身を取れず倒れ込む。
「ぐあっ……」
顔を上げてレインを見ると、風がレインの周りで激しくなり暴風がレインを包み込む。
「ワオォォォォォォォン!」
その声と共に暴風が止む、すると今までそこにいたレインの姿が大きな何かに変わっていた。
「なっ!?」
風を纏う大きな身体をしたウルフがそこに居た。
「なん……すか、それは……」
「獣化よ、なかなか強かったからお披露目しておこうと思ってね」
「その姿でも喋れるんすね……ははっ、やばいっすわそれ……」
レインのお披露目をみて模擬戦は終了した。
ーーーレイランsideーーー
「開始の合図があったし、私達もやりましょうか」
「承知した」
メイランは翼を広げて飛び上がり、ツバキがどう出るか様子を伺う。
メイランとしても忍びと戦うのは初めてだ、無闇に突っ込もうとはしない。
「火炎車」
人差し指と中指を口元に持っていき、息を吹き付けると渦を巻いた炎がメイランに襲い掛かる。
「魔法!?ではなさそうね、なら炎勝負と行こうじゃない!」
メイランは思いっきり空気を吸い込みブレスを放つ。
炎の炎がぶつかり合う、暫く均衡するが相手の炎の方が威力が高く、押し込まれる。
威力で勝てないと悟り、右側へ回避して炎をやり過ごす。
ドラゴンの炎が負けるなんて……レベル差が凄いのかしらね。
「はっ!」
ツバキは手裏剣を4つ纏めて投げる。
メイランはそれを躱すが、手裏剣が通り過ぎた直後に肩や脚に何かがあるような感覚を覚える。
肩を見ると何やら細い物が見えた。
「糸……?」
「糸炎!」
ツバキは糸を操って手を口元に持っていくと、糸を伝って炎が先程よりも速くメイランに襲いかかった。
「あぁぁぁ!」
肩と脚を燃やされたメイランは急いで炎の範囲から逃れるが、服が少し焼けてしまった。
ドラゴンの為火には強いのだが、痛くない訳ではない。
「小道具を巧みに使ってくるわね……飛ばしてきた道具に糸が付いてるとは……」
「それがしは飛べぬからな、対空用に仕込んである」
「なるほどね、次は私が行くわよ!」
メイランは口に火球を作り出し、ツバキへ放つ。
「ふっ!」
ツバキもジャンプして躱し、カウンターにクナイを2本投げ付ける。
「っ!」
クナイを躱したが、糸があるのではと目を凝らしたが何も付いていなかった。
その確認の際にツバキから少し目を離してしまい、再度ツバキのいた所を見るもツバキの姿がない。
「!?何処にい……」
「後ろだ」
「えっ!?」
後ろより声が聞こえたと思ったら、背後にあった木からツバキが飛び掛ってきており、クナイで右翼を斬られる。
「ああぁっ!」
翼が傷付き飛行能力が低下して、地面に降りてしまう。
「ぐぅぅっ……」
「これで飛べなくなった、ようやく対等に戦える」
「してやられたわね……」
「知恵、閃き、対策、忍びにおいてミスは許されないからこそ、それらが大事になる」
「なるほどね……勉強になるわ」
「これは模擬戦、傷付いても我が主人が完全に治してくれる、何でも挑戦するといい」
「そうさせてもらうわね!」
翼を傷付けられたといえ、ちぎれた訳ではない為、短時間の滑空なら可能だった。
痛みに耐えて低空飛行でツバキに詰め寄る。
ツバキもクナイを構えて防御体制だ。
「はぁぁ!」
滑空の勢いを乗せて拳を振りかぶるが、ツバキは当たる直前に右へ回避し、メイランの背中に肘鉄をする。
「ぐっ!」
うつ伏せで地面に叩き付けられたメイランに、追撃しようとクナイを振りかぶる。
傍に居ることは分かっていたメイランは尻尾を振り払い、ツバキを弾き飛ばす事に成功した。
「つっ……」
痛む背中に鞭を打ち立ち、上がったメイランは弾き飛ばしたツバキへブレスを放つ。
ツバキはジャンプして躱し、手裏剣を3つ投げつける。
メイランは傷付いてない左翼で手裏剣を弾き飛ばす、やはり糸が付いていた。
「危ないわね……やっぱり糸が」
「防がれたか、ならあれを使おう」
「?」
ツバキは闇の空間を生み出し、そこからヌンチャクを取り出した。
「!?」
ツバキは小手返しという技で身体周りでクルクルとヌンチャクを回して慣らし、脇に抱えた。
「これでいいか……いつでもいいよ」
「やばいわね……あれは」
メイランはブレスで牽制するが、ヌンチャクを横に薙ぎ払うだけでブレスが掻き消された。
「なっ!?」
「ブレスなんて怖くない」
ブンブン振り回されるヌンチャク、そして振りかぶって前に突き出すと鎖の部分が伸びてきた。
「うそっ!?」
何とか回避するも、すぐに引き戻されてまたグルグルと振り回す。
そして闇の空間から手裏剣を取り出し投げ付けられる。
再度翼で振り払うと、その隙にツバキはこちらに詰め寄っており、ヌンチャクによる連撃をモロに喰らってしまう。
「ぐあっ……あぁぁぁぁ!」
メイランは連撃の後の振り払いにより吹き飛ばされ、3人の模擬戦は終了した。
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