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52話 特訓開始

 次の日、朝早くに目覚めた俺は宿の裏にある広めの裏庭に出て素振りをする事にした。

 もちろん、部屋から出る前に狼人族へ変身しておくのも忘れずに。


「ふっ!」


 素振りで身体を動かし10分ほど素振りした後、仮想敵を想像で思い浮かべて斬りかかったり回避したりと実践式で仮想敵と戦う。


「んー、イマイチ」

「!?」


 急に声が聞こえて振り向くと、いつの間にか間近でクロエが俺の動きを見ていた。


「い……いつの間に」

「んふ、気付かないとはまだまだ修行が足りない」


 いや、あんたの気配消しが上手いだけだろ……こういうのって隠密って言うんだっけ?


「なぁ、やっぱり俺の動きって良くないのか?」

「んー、動き的に敵を想定して動いてた、それはいい。ただ動きがぎこちない、接近戦慣れてない?」

「俺は元々魔法使いだからな、最初から接近戦してる人からしたらぎこちなく感じるだろうな……」


 やっぱりクロエの目には俺の接近戦は変に見えるみたいだな、カエデやシェミィの時から思ってたが、クロエって相当やれる人なのだろう。

 観察眼が凄いのと、他人にアドバイスや指南出来る知識と実力、そして先程の隠密、何処を見ても強者感がある。


「なるほど、それは接近戦の回数を踏むしかない、頑張らないとカエデに負ける」

「だよな……魔法で差別化出来るとはいえ、きつい事には変わりないかもな」

「んー魔法との組み合わせ……それって結構アドバンテージになる、その辺も練習するといい」

「ありがとう、意識してみるよ」

「ん!カエデはまだ寝てる?」

「あぁまだ寝てる、多分そろそろ起きてくると思うけどな」

「そ、ならカエデが準備終わるまで私が相手になる、接近戦を慣らそう」

「ありがとう、胸を借りるつもりで行くよ」


 お互いに二刀流ナイフを構えて俺が仕掛ける、身体強化を掛けてからアクセルブーストで詰め寄って、急所を狙った一閃を入れるが余裕を持ってガードされる、通り抜けぎわに後ろから斬ろうとしても振り向く事無くナイフで防がれる。

 何で見ずにガード出来るんだ!?


「んーわかり易すぎ、気配でも何処に攻撃が来るか分かる」

「ヤバすぎだろ……」

「神経を研ぎ澄ませれば出来る、やってみる?」

「これが終わったらな!」


 俺は一旦クロエから離れ、ナイフに風魔力を纏わせる。


「おおーなるほど、魔力操作が上手い」

「そりゃどうも!」


 再度アクセルブーストで加速し、姿勢を低くして足元を狙う、しかし真上にジャンプして躱されるが、思いっきり踏ん張り宙に浮いたクロエを追撃に向かう。

 ジャンプで浮いたクロエの身体が下がってくるタイミングで斬り掛かるが、流石は猫だ……華麗な身のこなしで俺のナイフを弾きながら身体をくねらせて綺麗な着地を決めて、バックステップで距離を取られる。

 しかし、ナイフで弾いた際の衝撃が大きかったのか、クロエも初めて表情を変えた、少し真剣な顔をした気がする。

 防がれたがクロエがバックステップをしたので、そのバックステップでの離れ際にナイフに纏わせた風魔力を集結させて風刃を放ち追撃した。


「風刃」

「ん!なるほど……風刃!」

「なっ!?」


 クロエが一瞬でナイフに風を纏わせて同じ技を放ち、風の刃が相殺される。


「同じ技!?」

「これくらい、初めて見ても真似くらいなら出来る」

「嘘だろ、真似しただけ……?」


 なんて奴だ、ここまで強いのか……

 全く勝てる気がしない……

 ダークミストを目眩しに使って攻撃するも、並外れた神経で気配を感知し防がれる。

 パラライズサイズで拘束しようにも、発動して拘束するほんの少しのラグの間に魔法ごとナイフで斬られる。


「す、凄い……」

「経験を積み上げたら出来るようになる。あと、ナイフに魔力を纏わせたり風刃っていう面白い物見せてくれたから、一瞬だけ本気を見せてあげる」

「!?」


 クロエが目を瞑ってふぅーと息を吐き出す、そして両手を地面に置くと凄まじい魔力が吹き荒れる、その魔力が大きな猫と牙を型取って双牙となる。


「くっ!?何だこの異常な魔力は!?」

「被憑猫・双牙……ふっ!」


 ……え?何が起きた……?いつの間に後ろに……?

 一瞬だった、何も分からないままクロエは俺の背後へ真っ直ぐ通り抜けていた。

 何故真っ直ぐ来たか分かるのかって言えば、地面の抉れだ。

 地面の抉れがクロエの居た位置から真っ直ぐ俺の足元まで伸びていたからだ。


「ん、今ので本来は死んでたね」

「な……何だったんだ……今のは……」

「分からない方が正常、今のが防げるなら間違いなく武闘会優勝する。良いもの見れたね」


 クロエはクルっとナイフを回転させて鞘に収める。

 ミツキさん、貴方はなんて人を護衛に持ってるんだ……


「ちなみに、私は武闘会には出られない、強過ぎて昔に出禁になったから」

「そりゃそうだろうよ……」


 頭を抱えながら話していると、裏庭に出るドア奥からドタドタと足音が聞こえてきた、複数人いる。


「ご主人様!?今の魔力は一体!?」

「ご主人!尋常じゃない魔力だったっすよ今の!!」


 カエデとメイランとソルトが慌てて裏庭に走ってきた、寝間着のまま。


「あぁ、今のはクロエの魔力だ」

「クロエちゃんの……?」

「ん、ようやく起きたね。計算通り」

「まさか、カエデを起こすのも計算にいれてあれを放ったのか!?」

「んふー!頭いい」


 クロエがえっへんと出来る子アピールしている、確かに凄いがあの魔力はここで出す物じゃないよね……


「何も無いなら良かった……取り敢えず準備してくるね!」


 カエデ達3人は着替えに自室へ戻った。


「ね、まだやる?いっぱい打ち込みたいなら防御と回避メインにするよ?」

「お願いする、これだけ強い人に指導してもらえる事なんてそうそう無いだろうからな」

「ん、いい心意気。やろう」


 再びお互いにナイフを構えて、カエデ達が準備終わるまで特訓再開。

 結論からいうと、1発すら当てることは出来なかった。

 しかし、打ち込んでる最中も「遅い。これだと読まれやすい、こうした方がいい。今のこうすると相手にプレッシャー与えられる。こうすれば対処の選択肢を狭められるから先が読みやすい」とアドバイスを入れてくれるので、有意義な特訓となった。


「ご主人様!クロエちゃん!お待たせ!」

「お、クロエ、ここまでだな」

「だね、また機会あれば見てあげる」

「その時は頼む、今日はカエデとシェミィを頼むな」

「ん、任された。主呼ぶからちょっと待ってて」


 クロエがポケットに手を入れると、小さめの何かを取り出して耳に当てた。


「主、みんな準備出来たみたい。来て」


 あれ、もしかしてスマホみたいな通信機的な何かなのか……?


「なぁ、それって魔道具か……?」

「ん?そう、主が作ったの。何かあったら連絡取れるように」

「いいなそれ……」

「確か予備がまだあったはず、主に聞いてみたらいい」

「ありがとう」


 電話してから3分後、ミツキさんが迎えに来てくれたので全員でミツキさん家に向かった。

 カエデとシェミィはクロエに連れられて、別の場所で特訓するとの事なのでリビングで別れて、残りのメンバーはミツキさん宅の裏庭へ向かった。


「さて、コウガ殿。丁度3人と3人だがどうする?」


 ティナさんがどうするか聞いてきた、丁度3VS3なら団体戦練習出来るとは思うが、まずは個人の訓練が重要かなと思う。


「今日は1人ずつでお願いしたい、連携練習は明日で」

「分かった、ならまずコウガ殿は私が相手になろう。コウガ殿は魔法と接近戦を両方扱うと聞く、タンクを破れるように鍛えるとしようか」


 ティナさんか、タンクだからジルさんと同系統だろう。

 タンクと言えどタンク兼アタッカーな場合もあれば防御特化の可能性もある、どちらにせよ注意しなければ。


「なら私は、同じ狼同士でやりたいわ。ソルトだったかしら?お願い出来る?」

「もちろんっす!お願いしまっす!」


 レインはカエデと同じ狼人族で、装備的にはショートソードっぽい、やはり狼はスピードを活かしたいのか、軽めの武器になりがちなんだろうな。


「ならそれがしはドラゴン族か、メイラン殿、宜しく頼む」

「よろしく、ツバキさんの姿って確か忍びって言うのかしら?初めて戦うわ」

「忍びが珍しいのは当然、翻弄されぬよう……」

「ええ、頑張るわ」


 ツバキさんは、前世でいうくノ一で要するに忍者だ。

 忍者の武器と言えばクナイや手裏剣、小道具や忍術だが……この世界にその武器や道具があるのか否か、興味はある。

 ミツキさんの家の中庭はとても広い為、3人で散らばって訓練しても充分な広さがある。

 これなら周り気にせずやれそうだな、カエデの力……借りるぞ。

 それぞれ3組が散らばり、いい距離を空けた所でミツキさんから声がかかる。


「みんな準備はいい?怪我したら俺の作ったポーションや塗り薬があるから、遠慮なく言って!それじゃ、始め!」


 3組それぞれ特訓が始まった。

カクヨムと重複投稿です

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