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36話 巨大トレント②

 野ウサギの生き血により体力を回復させた巨大トレント、野ウサギを守るのをやめて動き出した。


「巣穴守るのをやめたか……厄介だな」


 何が厄介かと言えば、根っこ攻撃が今までより激しくなるだろう。

 巨大トレントが予測通り根っこ攻撃を仕掛けてくる、今までみたいに根っこの先端での攻撃ではなく鞭を振るように。

 飛びながら避けるが、避けきれなくなりナイフで受け止めるも力負けして吹き飛ばされる。


「ぐうっ!?」


 空中で何とか体勢を整えるが、追い打ちをかけるように葉っぱを飛ばしてくる。

 吹き飛ばされて距離が空いていたので、ブレスが間に合い葉っぱを全て燃やし落としていく。

 燃やした葉っぱは下まで落ちる前に燃え尽きた為、周りに燃え移る事はなかった。

 距離が空いたからか向こうからの攻撃は一旦止んだようだ。


「危ない危ない、馬鹿力過ぎだろ……ん?そう言えば、メイランの炎解禁したのに火の手が上がってないな……何かあったのか?」


 下を見渡すが木々により状況が見えない、戦闘音もしない気が……

 そう思っていたら木々の合間からメイランが飛び上がってきた。


「コウガ様!」

「メイラン!どうした?火の手が上がってないが、何かあったのか?」

「いえ、私とカエデの方は終わったわ。火が着いた所はシェミィが風魔法で都度吹き飛ばしてくれたから燃え移ったりはしなかったわ。コウガ様は……苦戦中なのね」

「あぁ、弱らせた所までは行ったんだが……野ウサギの生き血を吸って回復しやがってな、しかも野ウサギの巣穴を捨てて自由に動き出すようにもなってな」

「あんな巨体が動き出すのは厄介ね、どうする?1回撤退する?」

「いや、巣穴を捨てたアレを野放しにする訳にはいかないと思う、あれは普通のトレントじゃない……サンビークに行って帰ってくる迄に大変な事になる気がする」

「なるほど……ならみんなで倒すしかないわね」

「あぁ、普通のトレント同様木の根攻撃と、枝の攻撃がかなり激しい。あと頭の葉っぱを飛ばす攻撃をたまに放ってくる……気を付けろよ」

「えぇ、分かったわ。カエデとシェミィに伝えてくるわね」

「頼む、ただ無理はすんなよ」

「了解」


 メイランが下に降りていく、1人ではキツかったが……みんなが居ればどうにかなるかもしれない。


「さて、もうひと踏ん張りだ」


 俺は再度巨大トレントに挑むべく飛び出していく。


「ギギギギギィ!」


 巨大トレントに近付くと向こうの攻撃が再開し、枝や根っこがこちらに向かってくる。

 でも今回は俺だけじゃない!


「アクセルブースト!」


 木々に隠れて近付いてきていたカエデが加速して巨大トレントに向かっていく。

 巨大トレントもカエデに気付き、残してあった根っこのリソースを吐いてくるが、メイランのブレスにより妨害を受ける。

 トレントは火に弱く消火が最優先になる、そのスキをついてカエデとメイランが殴り込み、シェミィも追撃の爪攻撃を入れていく。


「ギギィッ!」


 ダメージが入った事により枝の攻撃も緩くなった。

 ナイフを持って巨大トレントに近付きながら枝を切り刻んでいく、本体までもう少しの所で巨大トレントの口が塞がり身体が震え出した。


「な、なんだ?」


 危険察知は反応しないが、嫌な予感を感じ後方へ飛び上がる。

 するとピンクの瘴気が巨大トレントの口から吐き出された、メイランは瘴気の当たる位置にいなかった為に当たらなかったが、正面に近い位置に居たカエデが瘴気を浴びてしまった。


「んっ!?」


 カエデが膝から崩れ落ちて倒れてしまった、麻痺毒か!?

 巨大トレントの根っこによる薙ぎ払いで弾き飛ばされてしまった。


「がぁっ……」

「カエデ!!!」


 俺は吹き飛ばされたカエデを空中で抱き抱えた、急いでトレントの攻撃範囲から出る。

 こちらを見たメイランは事情を察して、シェミィに指示を出し遊撃に打って出てくれた。


「ご、め……しゅ、じ……」

「大丈夫だ、すぐ治すから頑張れよ……鑑定!」


 カエデを鑑定すると、麻痺毒の状態異常になっていた。


「やっぱり麻痺毒か、ミラさんから預かってた魔導書があって助かった」


 状態異常回復魔法を探すと、初級にキアル(麻痺毒解除)、中級にリカバー(全状態異常解除)、上級になると状態異常解除+体力回復するキュアーズ等があった。

 今は緊急を要する為、初級のキアルのスキルを魔導書を介して発動させる、イメージが難しい為に詠唱も行う。


「癒しよ、かの者の麻痺を癒せ!キアル!」


 カエデに癒しの波動が纏って麻痺を癒していく、発動出来て良かった。

 スキルとしてキアルも習得したようだ。


「ありがとうご主人様……」

「初めて見た技だったからな、仕方ないさ、回復かけるからすぐ戻るぞ」

「うん!」


 カエデにヒールをかけて、急いで巨大トレントの元に戻ると。


「離し、なさい……ぐあぁぁっ!」

「にぃぃぃ!」


 メイランが根っこに捕まり巻き付かれていた、シェミィが助けようと飛びかかったり風の刃を放ったりするが、枝によって全て防がれる。


「メイラン!」

「メイランちゃん!今助けるよ!」


 カエデが地上に降りてメイランに向かって駆けていく、俺も援護する為にブレスを本体に向けて放ち、枝と根っこのダケを取る。


「メイランちゃんを離せえぇぇぇぇ!!」


 根っこに連撃を加えて、ラストに思いっ切り拳を叩き付けると、根っこが砕け散りメイランが解放された。


「メイランちゃん大丈夫!?立てる!?」

「えぇ……大丈夫よ、助かったわカエデ」


 カエデの手を借りて立ち上がるメイラン、一旦巨大トレントから離れて思考を巡らせる。


「ねぇカエデ、確か魔力が少なくて魔法が使えないって言ってたわよね?」

「う、うん。それがどうしたの?」

「でも、テイムの時にシェミィから魔力を借りて、所持魔力以上になったって言ってたわね?」

「うん、自分の限界魔力より多かったような感覚はあったよ」

「なら、もしかしたらシェミィから風の魔力を借りれば、シェミィのように風を纏とわせた攻撃を出来るんじゃないかしら?」

「えっ!?」


 カエデは驚いて目を見開いた、魔法のような魔力を使う攻撃をする事を諦めていたカエデ、本当に出来るのか?と不安になる。


「ほ、本当に出来るのかな……」

「カエデ、このままじゃ私達の誰かがやられるかもしれない、さっきカエデだってやばい状況にもなったでしょう?私もあのまま捕まってたら、絞め殺されてたかもしれないわ……」

「そ、それは……」

「今までの攻撃でトレントが弱ってきてるはずよ。1人の炎じゃ今まで足りなかったけど、私とコウガ様2人の炎なら道を切り開く且つダメージも与えられるくらいの威力を出せる、その隙にカエデとシェミィでトドメを刺しなさい!!1番脚が早くて火力を出せる貴方がやるの!!」

「メ……メイランちゃん……」

「カエデ……お願い」


 カエデはメイランの真剣な顔をみて、覚悟を決めた。


「分かった、やるよ」

「ありがとう……私とコウガ様でブレスの後に火魔法を放つわ、魔法が全て放ち終わった瞬間にやって頂戴」

「うん!シェミィ……また魔力借りるね?」

「にゃ」


 シェミィが頭をカエデに近付ける、テイム紋に手をかざすと魔力が流れる。


「今度の魔力は温かいだけじゃなく、心地良い風のような物を感じる……これが風の力を含めた魔力……」

「にゃ!」


 シェミィが言葉を理解してなのか、風魔力を強めた魔力をカエデに送り込んだ。


「やってみせる」


 メイランはその様子をみて、そのまま俺の元にやってきたので、ブレスを巨大トレントに放って一時退避する。

 そしてカエデとの話を聞いて作戦に移った。


「賭けだな、でも……何だか成功するような気がする」

「でしょう?私も危険な賭けのはずなのに、出来るとしか思えないの、不思議ね」

「だな、さぁ行くぞ!」

「えぇ!コウガ様!」


 俺達は巨大トレントに向かって飛んでいき、攻撃される前に俺がブレスを放つ、勿論巨大トレントは根っこを薙ぎ払い消火するが想定済み、隣で火魔法を詠唱してるメイランをサポートする為のブレスだ。


「赤き炎よ、吾が手に集い、降り注げ!バーンストライク!!」


 大きい火球が2つ連なって、巨大トレントに向かって落ちていく。

 1つ目は根っこを使って爆発させるが2つ目を防ぐ事が出来ず本体に命中し爆発する。

 メイランがこちらを見た。

 大丈夫だメイラン、言いたい事は分かってる、先に使ってくれたお陰でイメージはバッチリだ、俺も使える!


「燃えろ!バーンストライク!!」


 先程のメイランが放った火魔法と同じ物を放つ、初めて氷魔法以外の中級を使ったが、これはドラゴン族変身の恩恵により、メイランの魔法も使えるようになってるからだ。

 爆発で前が見えていなかった巨大トレントに2つの火球が命中し爆発する。


「ギィヤァァァァァァ!」



「「カエデ!!!!!やれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」

「アクセルブースト!!」


 カエデが巨大トレントに向かって駆け出していき、シェミィも続く。

 その手は力強く握り締められて、風の魔力が込められているのを感じた。


「2人が作ってくれたチャンス、逃さない!」

「にゃ!」


 シェミィが風の刃を飛ばし、巨大トレントを傷付けた。


「喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 カエデの右手が巨大トレントの胴体に命中する、しかし……僅かにだが巨大トレントが抵抗して胴体を動かしたが為に、殴る位置がズレてしまい胴体の端を傷付けるだけで終わって通り過ぎた。


「あっ……」


 右手の魔力が小さくなっていく。

 カエデが悔しさで目を瞑ってしまう。


「カエデェェェェ!諦めるな!!」

「……!」


 まだ右手には僅かにシェミィの魔力が残っている、このチャンスは逃す訳にはいかない……!

 カエデは俺の声を聞いて目の闘志が生き返る。


「まだだぁぁぁぁ!」


 着地した瞬間に脚に力を入れ、再度巨大トレントに飛びかかり、右手に力とありったけの魔力を込める。


「シェミィから受け取った魔力と自分の魔力全てを込めて……これで最後だぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 カエデの拳の周りにシェミィの魔力とカエデの魔力が重なり合い、全てを振り絞った全力の拳は……



 巨大トレントの胴体を貫き、真っ二つにした。



「ハァハァ……うっ」


 カエデが全てを出し尽くし、倒れ込む。

 俺はカエデの元へ駆け出し、お姫様抱っこで抱き抱えた。


「お疲れ様、カエデ」

「う……ん、ご主人様ぁ……私、やったよ」

「あぁ、よくやってくれた。眠ってていいぞ」

「おや……すみ……」


 カエデは魔力切れにより眠ってしまった。


「カエデ、良くやってくれたわ」

「だな……ゆっくり休ませてやろう」

「そうね、早く帰りましょうか。シェミィ、主人を乗せてくれる?」

「にゃ」


 シェミィが頷いたので、背中にカエデを乗せた。

 巨大トレントを見ると、真っ二つになった胴体の中に魔石が見えた。

 しかし、その魔石の周りにドス黒い魔力が纏っており、魔法陣で縛り付けられていた。


「何だ……これは」

「こんなの見た事ないわよ……?あっ」


 2人で話していると魔法陣が弾けてドス黒い魔力が上に昇って消えていく、魔力が全て消えたと思ったら魔石がひび割れてしまった。


「魔石が割れた……」

「ねぇ、これってまさかシェミィが受けてた魔法に近い類じゃ……?こんなの自然発生は絶対しないはずよ」

「推測の域でしかないが……そうかもな。何かしらでパワーアップさせて洗脳的なのをしたのかもしれない。トレントが統率されてるのも、巨大化しているのも、生き血を吸うのも、どれも有り得ないからな」

「倒したからいいものの……証拠を回収して報告しましょう」

「だな」


 俺はひび割れた魔石をトレントに入れたまま、巨大化したトレントをストレージに入るように分割し入れる、そうすれば魔石を取り出して消滅する事はない。


「ミルト村にもう1泊しようか……カエデも満身創痍だし……」

「そうね……」


 日の落ち加減を見るに14時くらいか、結構長く戦っていたんだな。


 俺達はミルト村に戻って、村長に訳を話してもう1泊させてもらった。

 門番にかなり心配されたが、昨日もお邪魔した事もありチェック無しですぐ通してもらえた。

 村人からはポーションや薬草、村長の奥さんからは夕飯までも準備して頂いた……

 優しい人達で良かった……。


カクヨムと重複投稿です

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