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111食目 エルティナイトを調べよう そのに

 巨大トンネルから青白い輝きがほのかに溢れ出てきた。

 それはゆっくりとトンネルの奥へと進んでゆく。


 スキャニングの輝きと思わしきそれが見えなくなるまで、おおよそ五分弱、といったところであろうか。


「よし、スキャニングが終わった。おぉい、レストハンガーを元の位置へ戻してくれっ!」


 ロデド研究長は若い研究員にそう指示をした。

 流石に二回目の梯子登りはきつい、と悟ったのであろう。


 梯子から力尽きて落ちても危ないので妥当と言えた。


 やがて、研究員の運転によって元の位置へと戻されるレストハンガー。

 運転に慣れているらしく、鮮やかな腕前であった。

 きっと、戦機なんかも自分たちで操縦していたりするのだろう。


「さてさて、これがエルティナイトの内部構造だが……な、なんだ、これはっ!?」


 ロデド研究長は俺たちに情報を開示する前に、驚愕の表情を開示して見せた。

 だらだら、と汗を流していることから、理解が追いつかずに脳がはち切れそうになっているに違いない。


「ロデド研究長、いかがいたしましたか?」

「う、うむ、まずは、これを見てほしい」


 ロデド研究長はポケットから取り出したハンカチで額の汗を拭う、と機械群から一歩引いて場所を譲った。

 このままでは俺たち幼女組は画面を見ることができない。


 そこで俺とザインちゃんはエリンちゃんに抱き上げてもらう。

 もちろん、そのままでは重いので、重力制御魔法【ライトグラビティ】で軽量化し持ち上げてもらうのだ。

 見た目には怪力少女、として他者には映っているだろうが気にしない方向で。


 ヒュリティアはガンテツ爺さんに、リューテ皇子のはもちろん、ヤーダン主任が担当する。


 こら、リューテ皇子。

 ヤーダン主任に甘えてばかりじゃなくて画面も見なさい。


「ふきゅんっ!? こ、これはぁ!」

「見事な骨格じゃのう」


 そう、その画面には人間と思わしき骨格がしっかりと映り込んでいたのである。

 それを覆うのがエルティナイトの形をした外装部分。

 黒い部分は明らかに金属筋肉であろうことが窺える。


「……この胸の部分に在る球状のものって」

「たぶん、心臓。そしてコクピットに当たる部分かなぁ」


 この事から分かるように、エルティナイトは最早戦機と言っていいか分からない存在へと成り果てていた。


 生きているロボットとでも言えばいいのだろうか。

 金属生命体の爆誕は、果たしてこの世界に何をもたらすのか。


 責任なんて取れねぇぞ、おるるぁん!


「うわぁ、この頭部に納まっているのって脳かな?」

「……ちっさ」

『小さい言うな、幾ら頑強なナイトでも傷付く傷付かない?』


 ヤーダン主任の指摘に、ヒュリティアの辛らつな言葉がナイフとなってエルティナイトに突き刺さる。

 彼の割とガラスのハートはギザギザになった。


「なんにしても、これは人に作り出せる物ではないよ。それこそ、神の御業だ」


 ロデド研究長は「失礼」と割り込んで、今度は装甲の下に在る金属筋肉の構造を画面に表示する。

 その構造に彼とヤーダン主任は「ほぅ」と頬を赤らめた。


「これは……芸術だよ。金属の芸術品だ」

「しかも、これが動くんですよ。躍動するんです」

「何っ?」


 ヤーダン主任はうっとりとした表情を見せる。

 それは恍惚とも言える艶めかしいものであり、幾人かの若い男性職員たちが「うっ」と呻き、男の尊厳を守るポーズへと速やかにトランスフォームした。


「……あの人たち、どうしたの?」

「そっとしてやってほしい。死ぬほど若さに溢れているんだぜ」


 しかし、一度暴走を開始すると誰かが止めないと彼女らは止まらない。

 案の定、ヤーダン主任はヤッヴェご尊顔を披露いたしました。


「普段は金属なのに柔らかいんですよ。でも時には熱くなってガチガチに……」


 すたーっぷ! それじゃあ、なんだか卑猥な方の筋肉の表現になっていらっしゃるぅ!

 直ちに表現を訂正したまへっ!


「あっ、分かるよ~。この子、すっごいよね~。なんか、こう、ビンビン、っていうか」


 追撃のエリンちゃんは絶対、自分が際どいセリフをぶっ放していることに気付かない!

 誰か、この地獄の連鎖を断ち切ってくれぇぇぇぇぇぇっ!


「あぁ、分かりますか? 太くて、逞しくて、そそり立つ姿には感動すら覚えます」


 ほぅ、と熱いため息を吐くヤーダン主任の表情は欲情した女性のそれであり、それを垣間見た若いあんちゃんどもが、やはり男の尊厳を護るべく腰を引かせる。


 もう勘弁してやってほしいのですが?


「……で、数字の方は?」

「え? あぁ、そうでした。ロデド研究長、お願いできますか?」

「ん? お、おう」


 ロデド研究長は「もう少し眺めていたかった」と愚痴を零しながらもエルティナイトの機体能力を数値化した物を画面に表示した。


 そして、俺たちは目が点になる。その画面には……




【きさま、みているな?】




 との文字だけが表示されていたのだ。


「な、なんだこれはっ!? バグ? バグなのかっ!?」

「ちょっと待ってくださいっ! うちのは最新型でしたよねっ!?」

「と、当然だっ! 常にアップデートをしている! アレに調べられない戦機は皆無だと認識しておる!」


 なんか……大変に申しわけない。


 エルティナイトは最新式の規格外なんですわ。

 たぶん、深緑と初めにやり合った頃のエルティナイトなら調べられたんだろうけど、ナベド活火山での活動後のエルティナイトは明らかにおかしい状態になってたし。

 寧ろ、スキャナーがおかしくなっていないか心配だ。


「ええい、どうなっておる! しっかり、調べんかっ!」


 カタカタ、とキーボードをタイピングするロデド研究長は、ターン、とエンターキーを中指で叩く。

 そして、画面に表示された文章は【あきまへん】との文字。


「……侵食されているわね」

「俺は何も見なかった」


 うがーっ! っと頭を抱える研究者たち。

 やはり、桃力が絡む、とこうなってしまう運命にあるもよう。


 結局、エルティナイトは意味不明、との結論を下されて調査は終了した。


 しかしながら、内部構造、そして金属筋肉の作りなどは大いに彼らの想像力を掻き立てる材料となったようで、オリジナル戦機の開発に一役買ったもよう。


 また、今までの戦闘データも可能な範囲で提供。

 やはり、これにも彼らの目は点になったことは言うまでもない。






「ふぅむ、あまり力になれなくてすまないな」

「いえ、十分過ぎる程に助かりましたよ」


 ねっとりとエルティナイトを調査した俺たちは、アマネック本社のカフェにて一息ついていた。

 尚、エルティナイトは先にクロナミへと帰らせてある。


 彼と入れ替わるかのように、今度はルナティックがアマネック本社のラボへと運ばれた。

 現状の機体能力では不満を覚えているヒュリティアが、火力を重点に置いた大胆な改造案を提出したところ、これが研究者たちの好奇心に火を付けた形となったのだ。


 したがって、今、ここにはヒュリティアはいない。

 若手を中心とした研究者チームと共に、ルナティック改造計画を練っている最中だ。


「薄々感じていたけど、あいつには骨格ができてたんだな」

「金属筋肉が形成され始めていた時点で、既に基礎のような物が出来上がっていたのかもしれませんね」


 お子様の俺とリューテ皇子はメロンソーダ、そしてアダルトな連中はコーヒーを嗜む。


 常に飢えた野獣である俺は、追加でタマゴサンドを注文。

 これが中の具が溢れんばかりで凄まじい光景になっていた。

 というか、本当に溢れている。


 一緒に付属されたスプーンは、これをすくって食べろ、という意味であろう。


「いただきまぁす」


 チラチラ、とリューテ皇子が食べたそうに見つめてくる。


 そんなんじゃ食べにくいだるるぉっ!?


「んもう、リューネは食いしん坊さん」

「おまえさんほどじゃなかろう」


 というガンテツ爺さんのツッコミに、俺は「ふきゅん」と鳴きつつもタマゴサンドを分けてあげる。

 一皿に二つ載って提供されているのでボリュームたっぷりだ。


 これが二百ゴドルで提供されているのは、アマネック本社の売り上げが順風満帆である証とも取れる。


「美味しい」

「これからお昼だから、ほどほどになんだぜ」


 ほっぺに卵をくっつけながら、もりもり、と食べ進めるリューテ皇子は幸せそうな表情を見せた。

 きっと、今まではこんなふうに食べることができなかったんだろうな、と再確認する。


 いや、病気が治った後の彼の食欲は凄かったぞ。マジで。


 暫くして計画が纏まったのか、ヒュリティアがカフェへと合流。

 そのまま、みんなで昼食を摂りに行く形となったのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] うおおおおんっ! やっぱ、こいつ生物だよ…
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