7話 白銀の子犬
シルバの話しは続く。
「今回、久しく、召喚が無かった神狼界に今までにない程の強力な召喚が有りました。
王自らから出向くという話もあったのですが、最近こちらも立て込んでまして…
代理という形で私が召喚に応じさせていただきました。こちらとあちらでは時間軸が違います。こちらでは52歳であちらでは何百年か冬眠も合わせれば何千年か歳を越えます。
召喚に使われる魔力が強いと召喚される側も色々と便利でして…
先程の様に人の姿へと変化出来るのは久し振りです。若い時でしたが酷い時は子犬が精一杯の時もありましたよ。先程は浮かれてしまいましたが主人の実力も測る事が出来ました」
久しぶりの召喚に胸を躍らせているようでなかなか早口で色々捲し立てられたがある程度の情報は把握出来た。
「やっぱり仕えるには役不足かな?」
正直、不安だった。あれだけの身のこなしをして、スーツにシワ1つついてない。余程の実力者だろう。立ち振る舞いから戦い方まで全てが紳士だった…こちらも全力では無いがそれはあちらも同じだろう
「とんでも御座いません。素晴らしい魔法の使い手というのは召喚の際に存じ上げております。そして、最初に魔法を封じてもあの身のこなしが出来る方はそういません」
「前の召喚といってもかなり昔になりますがその時の方よりも多分お強いでしょう。
彼は私の3割に追いついてくる程度でしたが、アルベルト様は私の7割も捌き切りました」
「それはどうも…」
初めての召喚獣にボコボコにされるところだった…
「それとここは転生された世界ですが違いますね…魔法の類ですか?」
「そう。オリジナルのDifferent space room(異空間部屋)の発展版だね。
実家の部屋と繋げてるんだ」
「そうでしたか。最後にひとつだけ…
神狼界はシンリー様が転生された世界と密接に繋がって居ますが他の世界ものぞくことが出来ましてな。車などの乗り物を見た事がありまして、現物は手に入りませんでした。
シンリー様は興味がございますか?」
「興味しかないよ!毎日、科学とフィクションと魔法くっつけてるよ。
先日、軽自動車が出来たから、今度、外車を作ろうと思って…」
(するとシルバの目が輝いていた。紳士さが吹き飛んでいる。)
「ゴホン、大変お見苦しい所を晒してしまいました。完成の際には是非運転させて下さい
それはそうと、そろそろお部屋にお戻りなりませんか?」
「そうだね。だけどシルバさんどうしようか。「流石に、召喚魔法動物です」
とかいって英国紳士のような姿を家族には紹介出来ないしな…」
「狼では結局、魔物として狩られるのがオチ。子犬になら擬態出来ますよ。
飼えるかどうかは別問題ですが、そうしましょう。餌は与えられれば食べますが、食事は不可欠ではありませんのでご心配無く…」
そう言って彼の周りに靄が現れ、直後に可愛い白銀の毛並みの子犬がちょこんと座っていた。僕は子犬を抱えて、部屋を出る。
すると直ぐに祖母と鉢合わせてしまったが子犬を飼うことに問題は無いらしい。
森で拾った事にして事無きを得る。
それと明日、辺境伯のニ男と三男の定期健診だと祖母が教えてくれた。
三男は博識で落ち着いているがニ男はいつも偉そうにしている。毎度診察を拒む厄介者なのだ。
成人した長男は立派に育て上げたが、ニ男は優しく育てようとして、甘やかし過ぎた。
これはマズイ、と三男を厳しく育てたとかそんな所だろう。
明日の為にも今日はもう寝よう。