3話 惨状と村
村の惨状は酷いものだった。
村の境界部に隣接していた住宅街は自宅どころか一帯は全焼していた。
まだ所々で煙が燻っている。田畑の被害も甚大なものだった。
住宅街近くの畑は作物が添え木ごと倒されていた。好物のトウモロコシが土に埋もれているのを見た時はテンションがだだ下がりである。
そのくせ、辺境伯の村の別荘地が無傷なのも、なんかムカつく。
まぁ、避難所として開放されているから文句は言えないが…
6歳から2年間通った低級学院の時に学んだ基本魔法でも鎮火は出来るか…
水魔法を使って鎮火を手伝う事にした。
水弾、水弾、水弾っと…なんか単調だな。「診療所を手伝うよ!」とは言ったが魔法や体術の見聞も深めたいな…せっかくだし色々試そう。
映画やアニメの武器とか体の使い方もここでなら再現できるかもしれない。自然と期待に胸が高まる。
しばらく消火を手伝っていると村長とアレックスさんがやってきた。
被害状況の確認だろうか?
「おっレノンハルト君ここに居たね。診療所に寄ったらもう退院して村の様子を見に行く〜って飛び出してったって聞いてな。その後、どうだ。大事ないか?」
「ご心配ありがとうございます。アレックスさん、身体はもう大丈夫です。」
「ならいいんだ…そういえばアルベルト君、そんなに魔法連発して大丈夫なのかね?前にメルーラさんと話した時、確か魔法の才能はあるかもしれないけど魔力量は決して高くない。みたいなこと、
おっしゃってなかったけ。」
「僕も良く分からないんです。ただ、しばらく昏睡してたのでその時になんかあったのかもしれませんね。村長は今日どうされたんですか?」
「連日、被害の確認だよ。今回の魔物の襲撃は小競り合いとは呼べない程の大事だった。
辺境伯や王国にも毎日報告が必要でね。マジでにだるい…いや最後のは忘れてくれ」
「えぇ村長、最後なんか言いました?」
「いや、何でも…アレックス君そろそろ行こうか。アルベルト君も手伝ってくれるのは嬉しいが程々にな…くれぐれも無理はしないでくれ。また何かあったらメルーラにしばかれるボソッ…お大事にね。」
村長って結構本音が出やすいタイプ…
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村長とアレックスが歩きながら話しあっている。
「父を失って母としての彼女も一夜で失った彼にどう接せればいいのか…」
アレックスは親友を失い、生きてるとは昨日とは違うその妻や子を見て喪失感に襲われていた。
「これといって気に病んでいる様子でも無かったですがそれが心配ですが…でもローズが産んだ子、彼は強い子だ」
村長は嬉しいような寂しいような口調で返す
「元々、大人っぽかったが落ち着いていました。無理してないかだけそれだけが心配です」
「今はとりあえず、今後の復興について考えましょう。彼の事は大事ですがこっちも無視できません。」アレックスは感情を押し殺すような顔をしながら作物が倒れた畑を見つめる。
「そうだな…とにかく境界部分の防御と住宅の復旧が最優先と報告しよう。辺境伯ともしっかり話し合わねばならん」
村の焼け跡は焼けた木材が一部燻り、白い煙が微かに昇っていた……