七階、反転時計の十三階段
あれ? この時計合ってるけど合ってない。
ずっと前におじいちゃんからもらった懐中時計。二十四時間表記ができる時計だっていうので珍しかった。
今は夜中の一時。でも時計は十三時になっている。半日分ずれているんだね。
時計を直さなくちゃ。
私は文字盤を見ながら自分の部屋に戻ろうとして階段を上がっていった。
その時ふと数えるでもなく数えてしまっていたら、階段が十三段。
あれ、ここの階段って全部の階で十二段だったよね。何度も何度も階段を使って、暇な時に数を数えていたから判る。
でもここは十三段。おかしいな。
辺りを見回すとそこは普通の廊下。先には病室が連なっている。
廊下を歩いて行って、七〇一、七〇二、七〇三……。
患者さんの名札を見ているとなんだか懐かしい名前がかかっていた。この方最近会っていないと思ったら七階に部屋を移られたのね。今は真夜中だから今度ご挨拶しよう。
気にしていなかったから全然気が付かなかったよ。
部屋を覗いてみると、髪の長いお姉さんとか、顔を包帯でぐるぐる巻きの女の子とか、夜中なのにテレビを観ている人。カードをベッドの上に並べている男の子もいた。そして頭から布団を被っている人も……。
あ、私の名札があった。七一三号室。
そういえば私の部屋って……。
前ママが言ってた。ねえあなたは誰とお話ししているの、って。
私はお友達の男の子がいるっていう話をしたのに、ママは、そうなのよかったね今度ママにも紹介してね……って言ってた。
あの時はその男の子が目の前にいたのに、変なこと言うママだなって思っていたけど……。
ふと脇を見ると、いつも話をしていた男の子が側にいた。
ねえあなた、私の部屋って七階だったっけ? それにこの絵麻病院って地上六階建てでその上は屋上……。
私は自分の言葉ではっと気が付いた。気付いてしまったんだ。絵麻病院の七不思議に。
「君も七階の部屋に移ってきたんだね。ようこそ、歓迎するよ……」
懐中時計の針は、十三時十三分十三秒を指していた……。
おしまい。