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四階、食堂のテレビ

「最近病院のテレビも新しくなって衛星放送入るようになったんだね」


 僕たちは四階にある食堂のテレビを観ながら食事をしている。

 天井に近い位置の壁掛けになっている大画面液晶テレビだ。それまでは棚の上にブラウン管のテレビが置かれていて、大分前に地デジ化したのに間にチューナーを挟んでずっと古いテレビを使っていたんだけど、老朽化も進んで映らなくなってきたので一ヵ月前に変えたんだっけ。


「でも凄いチャンネル数あってもリモコンは看護師さんが持っているから、いつも観られるのは決まった番組だけどさ~」


 部屋にあるテレビとか、最近だったらスマホのアプリとかでもあるじゃん。


「そうだね~、部屋のテレビはまだカード入れないと観られないけど。あれ結構高いんだよね。だからずっと点いてる食堂のテレビを観ちゃうんだけどね」


 確かに。いちいちお金払うのもね。

 たいして面白くなくてもつい暇だから観ちゃうんだよなあ。それで結構お金かかるんだよ。

 お小遣いのことを考えるとね、どうせテレビなんて暇つぶしだから、食堂のテレビで十分なの判る。


「ね~。そう言えばさ、ここのテレビ前に夜中も点けっぱなしになっていた事があったでしょう?」


 え、そんな事あったの?

 いつもなら看護師さんが消灯の見回りの時にテレビも消えていないかチェックしているはず。

 それに真夜中、食堂の照明が落ちている状態でテレビが点いていたら定時見回りの時にも判ると思うんだけど。


「先月の今日、だったかな。夜中にずっとテレビが点いていてね、私の隣のベッドの人がたまたまトイレで起きた時に通りがかってそれを見つけたんだって」


 看護師さんに教えたの?


「そう思ったんだけど、なんか砂嵐っていうの? それを観ていたら引き込まれるように見入っちゃったみたいで、ずーっとテレビの前で観ていたんだって」


 女の子は段々と声を潜めていった。

 テレビから流れるバラエティ番組の笑い声の方が大きくなるくらい。


「それでその人ね、テレビの中から声が聞こえたんだって」


 そりゃあテレビだもん、声だって聞こえるでしょ。


「でも砂嵐だよ? 番組終わっているんだよ? なんで声が聞こえるんだろう……って。その人もね、不思議に思ったんだって」


 そうか、夜中だもんね。


「よく耳を立てて聞いていたら、どうも自分を呼んでいるような気がしたんだって。何度も何度も自分の名前を呼んでいるように」


 へぇ。砂嵐の中から……。気のせい、じゃないんだよね?

 僕の質問に女の子は小さくうなずく。


「それでね、その人はつい聞いちゃったんだって、なあに、って」


 返事しちゃったの?

 なんだか薄気味悪いなあ。僕だったら名前を呼ばれても返事したくないよ。


「その人が振り向くと、見回りにきた看護師さんが立っていたんだって。手に懐中電灯を持って」


 なんだ、名前を呼んでいたのって看護師さんだったのか~。


「それでその人が看護師さんに説明したの。看護師さん見回りですか、って。そうしたら看護師さんもね、おトイレに起きちゃったんですね、お部屋に戻りましょうか、大丈夫ですか、って聞いてくれたんだって」


 ま、まあ、夜中に食堂にいたらそうなるよね。


「うん。そしてね、その人は看護師さんと一緒に病室に戻って、その夜は寝ちゃったんだって。その話を私にしてくれた次の日だったんだけど、その人亡くなってしまったの」


 そうなんだ……。容態が急変する事もあるから、ここの病院は。


「私もそう思ったんだけどね、でも話を思い出すと、その人を連れてきてくれた看護師さん、ナースキャップを付けていたんだって」


 え、ナースキャップって今はもう付けていないよね、ここの病院。


「うん。だからおかしいなって思ったのよ。そんな看護師さんっているかな、って。それで検温にきた看護師さんに聞いてみたのね、お隣のベッドの人の話と亡くなる前の夜のテレビのことと、ナースキャップの看護師さんのこと」


 それで?


「ナースキャップはもう何年も前に使用禁止になっていて、使っている人はいないって。それにね、私も後で気が付いたんだけど……」


 女の子は壁に掛けられたテレビを観る。


「その時テレビの交換工事で、この食堂にはテレビが無かったんだよね」

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魔王を倒した勇者が王国から解雇されました。~俺のスローライフを邪魔する奴はSSSスキルでぶっとばす!~
理不尽な世の中を無双スキルで吹っ飛ばせ! 連載中の長編ハイファンダジーも併せてお楽しみください。
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