第三話 不遇職とはこれいかに
四月四日、登場人物を一人増やしました。
話し合った結果、僕たちは初心者に優しい【始まりの魔森】に向かうことになった。
生息しているモンスターはスライムやゴブリンと言った『ザ・初心者』なモンスターとのこと。
それを聞いた柚子が少し不安そうな顔をしたが、すかさず加奈子ちゃんがフォローに回ってくれて今では不安とは正反対の『期待』の感情が目に見える。
「それで皆の職業は何にしたの?」
柚子が唐突に皆にそう訊ねた。
すると最初に加奈子ちゃんが答えた。
「私は見ての通り【弓士】ね」
弓士は【弓】を扱うことに長けた職業で、通常は弓筒から一本ずつ取り出して射ないといけないのだが、職業【弓士】はその動作を省略し、手を構えたままで弓を充填可能にしてくれる。とネットの掲示板に載っていた。
「俺は【戦士】にしました。上級職で【剣士】に就けると聞いたので」
優星君が言う。
このゲームではクラスアップのシステムが設けられており、【戦士】はクラスアップする時に条件を満たしていることで【剣士】に就くことができるというのはネットの掲示板では有名な話だ。
そして【戦士】は【剣】や【斧】を扱うのに長けた職業で、何かと便利な『自分で振るった剣に自分が当たることが無い』という特性を持っている。
その他にも色々とあったが、他の特性はクラスアップ前にならないと分からない。
「私は【魔法使い見習い】にしました。人生で一度は魔法を打ってみたかったので!」
鈴ちゃんが興奮気味に続けて言う。
【魔法使い見習い】は『見習い』というワードも込みでの職業名。
このゲームで唯一魔法を扱うことのできる職業で、大勢のプレイヤーが挙って就こうとしたがそれは叶わなかった。
見習いとは言えど【魔法使い】は己の知識を求められる職業、それ故に賢い人でないと就くことができないのだ。
「良かった誰も被ってない…。私は【盗人】に就いたよ」
柚子は現実でも運動神経が良いため合っているのではないだろうか?
掲示板でも発売当初はやはり
『現実での得意不得意はゲームにも反映されるのか』という話題で持ちきりだった。
結果は今言った通り反映される。
各々が「バランスの取れた良いパーティーだね」と話し合っている。
確かに、被りが無いというのは『良いパーティー』に繋がるのだろう。
「あ、そう言えばお兄さんは職業何なんですか?」
「僕?僕か?」
まさか自分にも訊ねられるとは思いもしなかったので少しだけ戸惑った。
「多分聞かんかったら良かったって思うけど、それでも聞きはる?」
「そんなこと言われたら余計気になりますよ!」
こればっかりは本当に場の雰囲気が悪くなるかもしれないので言いたくは無かったのだが…仕方ない、聞きたいと言うならば言っても良いだろう。
「あー、僕は【鍛治師】になったんや」
彼らは顔を見合わせて一斉に首を傾げた。
「「「【鍛治師】ですか?」」」
その反応に驚いた僕は逆に聞き返してしまった。
「あれ?知りはらへん?」
僕たち一行は足を止めた。