第一話 エセ関西弁ソロプレイヤー
あらすじにも記載しました通り、一話あたりの文字数は大凡1000文字を目安にしております。
タイトルを『最弱職』から『不遇職』に変しました。
乾いた銃声が鳴り響くここは名も無き廃礼拝堂。
ここには現在6人のプレイヤーが駆け回っている。
6人の内5人はチームを組んでいる者たち。残りの1人はソロのプレイヤーだ。
この世界には様々な武器が存在しており、今先程銃声を轟かせたのは『銃』という武器種である。
この世界では現実世界と近しい武器種はあまり存在せず、鍛治職に就いている物好きたちが挙って創造している。
「やっと追い詰めたぜ、もう逃げられるとは思わないことだな!」
そう煽るようにして叫んでいるのはPKと呼ばれるプレイヤー、5人組のリーダーである。
彼が叫ぶがソロプレイヤーは一向に姿を現さない。
その実、ソロプレイヤーは一番前の寂れた長椅子の影に潜んでいるのだが、PK集団は後ろの扉を蹴破り侵入して来たのでその姿を視認できていないのだ。
「さっさと出てこいよなぁ、出てきた瞬間にデスペナにしてやるからよぉ!」
その声にその男の仲間たちは笑う。
だがその煽りも同然の笑いに応えず、潜んでいるソロプレイヤーは黙って礼拝堂の前にある扉から脱しようと試みるが、扉が錆びていることに気付き悪態をつく。
「つまんねぇやつだな!」
とうとう面白く無くなったリーダーは近くにある長椅子から順番に蹴り壊して行く。
「どうせここらに隠れてんのは分かってんだ、よ!」
言いながらも長椅子を蹴り倒す姿を見た男の仲間たちも加わり、ソロプレイヤーの潜んでいる長椅子まで蹴倒されてしまう。
「見つけたぜ!」
男がそう叫ぶのと視界が白で塗りつぶされるのは同時だった。
突然過ぎる目潰しを直に食らったPK集団は目を押さえてその場でのたうち回る。
「なあ、おたくら知ってはるか?」
ソロプレイヤーは板に付いたエセ関西弁で悠長にPK集団に話し掛ける。
「PKでやったらあかんことは仰山あるけど、あんたらはその大半のことをしてもうてるで」
呆れるようにして言うエセ関西弁の彼は「一つ」と言いながら人差し指を立てる。
「PKでは煽んのはええけど、侮るのはよろしくないわ。しかも初見の格上相手に自信過剰になんのは尚のことあかんな」
「な、に…?」
段々と視界に色が戻ってきたリーダーはフラつきながらも立ち上がり、関西弁の彼の方を向く。
「ほえ〜、レベル4の目眩まし蟲やったんやけど…あんた結構レベルあるんやね」
感心したように言う彼はその細い目をニヤリと歪ませる。
「せやけどあんたのお仲間はレベル4でもまだ継続してはるな〜。
ようそんな実力でPKしようと思わはるな、僕やったらようせんわ」
怖っ、と言いながら自分の肩を抱く彼を見たリーダーは大声でふざけやがって!と叫ぶ。
瞬間
リーダーの首筋には片刃の剣が当てられる。
「巫山戯てるのはどっちやろうな?」
「うぐっ!」
リーダーはかつて無い程の殺気を浴びせられ、その両足を震えさせる。
遠くにいた残りの仲間まで殺気を浴びせられて気を失っている。
それを見たエセ関西弁の彼は「まあ」と言い片刃の剣を鞘に納める。
「今回は運が無かったってことで、ほなさいなら」
「えっ…」
目の前で納められたはずの剣はいつの間にか抜剣されており、すでに振るわれていた。
そのことに気付いたリーダーは頭が浮遊感と死に襲われていることを知り、次の瞬間には光の粒子となり消えた。
「ほんま、デスゲームやなくて良かったな」
おたくらも僕も、と付け加えたエセ関西弁の彼はまた一閃剣を振るい、その一太刀で残りの仲間の首も刈り取る。
「これでも僕、【冥王】って呼ばれてたんやけど認知度低いんかな、やっぱり」
寂れた礼拝堂にポツリと、その一声だけが響いた。
その言葉を聞いた者は、誰もいない。