6.ステラの書
私の魔導書、ステラの書のアクティブスキルは精霊召喚と従魔契約。
従魔契約はロック中らしいので、使えるのは精霊召喚だけ。そもそも精霊が居ないので現時点で何にも出来ないと思うんだけど、メニュー表示では精霊召喚の後ろにランダムと付いている。
ランダムとは?
「ミミさん、スキルにランダムって表示があるんですが、これは適当に召喚されるってことですか?」
「少し違います。風が吹きすさぶ所なら風の精霊、水が流れる場なら水の精霊が召喚されるという感じですね」
あーなるほど。物語でよくエルフが使っている、場の属性に左右されるタイプの精霊魔法か。
ゲームでは大きな割合でRPGをプレイしてきた私の経験から言うと、あれって消費魔力が少ない代わりに敵の属性と被ることが多いから、弱点を突けないっていうデメリットがあるんだよね。
「私が選ばなかった《精霊の書》はそれが固定の精霊になってるってことですね?」
「そうですね。書に宿すのは主に四大精霊、火・水・地・風の中から選ばれる方が多いでしょう。書の持ち主の成長と共に精霊も成長しますので、精霊との結びつきはより強くなるでしょね」
そっかーそれは楽しいだろうな。育て方で違うタイプの精霊に成長とかありそう。
「私の書は場の精霊の力を借りるっていうものなので、精霊の成長はないと?」
「はい、残念ながら。……ただ例外がございます」
例外?
「稀にですが力を借りた精霊に認められた場合、書に名が記されます。《精霊の書》に比べると遅いですが成長も見込めるので、多彩な書となる可能性がありますね」
「晩成型なんですね」
「とにかく、まずは使ってみましょう。頁を開き、続けて詠唱し召喚です」
詠唱……するのちょっと恥ずかしい。
「まずは思い浮かんだ3つの言葉をどうぞ」
3つ?じゃあイメージする単語を3つ。
「書、扉、鍵」
「仮認証が行われました。頁に浮かんだ文言を読んで下さい」
ー 書は扉 銀は鍵 開け集え精霊の庭 ー
ステラの書が初めて名前を書いたときと同じような星色の光を瞬間放ちます。
「認証完了です。この詠唱は精霊にこちらの居場所を伝えるためのものです。この世界に訪れた際はまず詠唱することをお勧めします。詠唱により新たな精霊が助けにきてくれます。目印のようなものなので、一度使えばこの世界から去るまで効果は持続します」
ログイン時必須詠唱ね。一度使えばログアウトまで効果ありと。
「わかりました」
「さっそくステラ様の魔力に惹かれてやってきたようですよ」
若草色に白い一本の縦縞が走っているネズミのような生き物があらわれた。
「森の精霊です。姿は山鼠となっていますね」
かわいい。精霊は動物の姿を取っているんだね。色は違うようだけど。
「精霊は気まぐれなので同じものがずっと側に居るとは限りませんが、好奇心旺盛なので何かは必ず居るでしょう。書の精霊召喚の項目が精霊魔法に置き換わっていますか?」
・精霊魔法Lv.1
ー【フォレストガードLv.3】 山鼠(森)
ー【スラッシュLv.2】 野猫(平野)
変わってる。猫はどこに居る?あ、居た。茶虎ならぬ青虎だ。えっと……今、使える魔法はこんな感じで表示されるのね。魔法詳細によると防御と攻撃魔法ってところか。
「フォレストガードLv.3とスラッシュLv.2が表示されてます」
「なるほど。ではフォレストガードを使ってみましょう。書の文字をなぞるだけで発動します」
ほうほう。サッ!
文字が光りだし魔法文字(だと思う)に変換され空中で弾けます。山鼠がトコトコ駆け寄ってくる。ロンバ君の背に上り、もこっと毛をふくらませると私たちは温かな緑色の光に包まれました。小さい子なのに守られてる感すごいです。
「もっとたくさん精霊が集まれば使える魔法が増えますし、精霊が居なくなれば魔法も減ります」
なにげに大変だ、これ。でも楽しい。珍しい精霊を探したくなる。
「スラッシュも使っていいですか?」
「どうぞ」ミミさんニッコリ。
スラッシュ!と心の中で叫びながら文字をなぞります。
野猫が猫パンチを出したかと思うと、爪状の斬撃が地面に走りました。
「楽しいです」
「それは良かった。では森に参りましょう。私も居りますのでご安心を」
うん、ミミさん。大丈夫な気がしてきたよ。
ブックマークが10件超えました。
ありがとう。13人の優しいひとたち。