第1事件 祇園妖怪
ー京都 祇園ー
『左目を喪った男の死体が発見された
男には目立った外傷はなく左目がないという以外は不審点は見当たらなかった
京都警察は当初、猟奇的殺人と考えていたがその考えを否定するものが現れた
その者は自分を陰陽師と名乗り霊的な事件を追っていると言っていた
更にはその意味不明な供述をする男の傍に巫女服を着た黒髪の美人がおりその巫女も自分は有名な神社の巫女であると名乗った
そしてそのコスプレイヤーたちが事件を解決すると言ったのだ』
「以上が私の報告書であります」
私の部下で最近警察になったばかりの若い男ーー笛鳴竪琴が私に向かって敬礼をする
いくら最近警察になったからと言ってこんな報告書を出す部下の態度に頭が痛くなる
それでなくとも最近、事件現場を陰陽師と巫女のコスプレイヤーがうろちょろして頭が痛いというのにこれ以上頭痛の種を増やさないで欲しいものだ
やれやれとため息をつく
「あまりため息をつかれると幸せが逃げますよ?」
この後に及んでこの部下は!!
「誰のせいだと思っているのだ!」
貴様のせいだ!と思いながらも顔を上げると直衣を着た顔立ちの整った若い男巫女装束を着たこちらも顔立ちの整った若い女が立っていた
こいつらが最近事件現場をうろちょろとしてる私の頭痛の種の一つのコスプレイヤー共か
だが……そのあまりの着こなしさは本物ではないかと思いたくなるほどだった
「っ!貴様らいつの間に!!」
そんなことよりもこうも簡単に警察庁に……しかも私の部屋に入られるとは
この警察庁の警備体制も見直さないといけないかもしれないな
この事件が解決したら警備体制を見直す!
ん?死亡フラグを建てたような気がするがまぁ良いか
「これは失敬……あなたの部下が私たちをコスプレイヤーなどという方々と一緒にされていたのでそうではないと証明しようと思いましてね?」
扇子をパチンと閉じるその仕草も似合うから腹が立つ
隣の巫女さんもその仕草をうっとりとした表情で見ているし
「というか貴様が連れてきたのかァァァ!」
すこし遅れつつも元凶である部下にツッコミを入れる
部下はというとてへっ☆という表情をしていた
男がやると気持ち悪いな……いや女がやっても許さないけど
「さて証明してくれるとの事だが……どうするつもりだい?」
ゲ〇ドウポーズをしながらニヤリと笑う
科学が全ての時代だ……
こないだなんかの番組で心霊現象を科学で再現するというのがやっていて人魂なども見事に再現されていた
そのくらい科学は進歩しているのだよ?
ちょっとしたことでは驚きはしないよ
「何かね……陰〇師という映画で野村〇斎がやったことをやるのかね?」
「まさか……あのような物騒なことはしませんよ。ただ単にこの場に私の使役する式神を呼び出して見せるのですよ」
式神……聞いたことはあるな
陰陽師が使役しているという鬼のことだろ
「もしもそれが本当にできたなら信じてやるよ」
「言いましたね?言質はいただきましたよ」
(自称)陰陽師が怪しく笑う
「では、これよりご覧にいただくは陰陽師による式神召喚……一瞬の事ゆえお見逃しなきを」
バッと3枚の式札を取り出すと息を吹きかける
するとどうだろう……あっという間に人に変化した
まさに一瞬の出来事だった
「これで信じていただけましたか?」
「っ……ああ」
悔しいけどな……
「そうですか……ではこの事件についてもこちら側におまかせして頂くということでよろしいですね?」
「その事に関してはまだ了承していないが?」
危うく勢いで頷いてしまうところだった
「そうですか……まぁでもいずれあなた達の手には負えない未来が来るでしょう。その時にまたお会いしましょう」
引き上げますよ……といい巫女と去っていく
手に負えない……?何を言ってる
我々は警察だぞ?たとえ猟奇的殺人でも犯人は生きた人間に決まっているのだから
だが、後で知ることになるあの陰陽師が言っていた意味を
〜 〜 〜
ー陰陽師たちsideー
「良いのですか?あんなあっさりと手を引いてしまって」
「手を引く?何言ってるのです?手を引くとは一言言ってませんよ?」
俺は玲香の方を振り向くとニヤリと笑う
「それにあいつを誘き出すにはあの人が餌になる必要がある」
あいつを誘き出すには多少の犠牲が必要なんだ
奪われた左目を取り返すために
「……」
玲香はなんとも言えないような顔をしていた
「どうしてそんな顔してるんだ?」
ポンポンと玲香の頭を撫でる