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ペルソナ  作者: 朴訥
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 圭吾は愉快な面持ちでいた。その日は年が明けたばかりの週末で、1年ぶりに会う大学時代の友人との飲み会の最中にあった。安居酒屋で三時間のアルコール飲み放題を注文し、元を取ろうと息巻いているその男、安原圭吾は、勢い良く酒を喉に流し込んでいた。


「要するに仕事は要領よ。要領さえ良ければ万事上手くいくものさ」


 呂律の回らない舌で圭吾は言った。彼は大学卒業後の勤め先に、大手住宅メーカーを選んだ。そして入社一年目の人間の多くがそうであるように、彼もまた営業職に就くことになった。


「圭吾の業績は順調みたいだな」


大学時代の友人である浅井隆二が言うと、圭吾は普段使うことのない表情の筋肉を思い切り動かしながら言った。


「今月とうとう部署の営業成績で一位になった」


 圭吾は自慢話を滅多にする男ではないが、たまにこうして気分が良い時には、普段は隠している腹の中を打ち明けた。また、隆二は圭吾の能力の高さを大学時代から買っており、圭吾の活躍を期待する一人であった。


「俺も営業だけど、圭吾みたいには上手くいかんな」


「成績の方はどうだ」


 圭吾が間髪入れずに隆二の触れられたくない部分について言及すると、聞かれたくなかったなと感じていることを照れ笑いで補いながら、隆二は答えた。


「ほんとダメダメだよ。今月もノルマ達成出来なかったし」


「新人なんてそんなもんだろう」


 そんなことを言う新人離れした圭吾に対して、隆二は微量なる嫌悪感を抱かずにいられなかった。またその嫌悪感を一つごとの要素に分解すると、嫉妬の感情が混じっていることに隆二自身気が付いていた。


 圭吾は大学時代からそうであった。なまじ何でもこなせるが故に、それをこなせない人の気持ちがわからない。こなせる自分とこなせない他人を鼻から別のものとして考えている風なところが、圭吾にはあった。また、隆二はそんな圭吾の一面が垣間見える度に、嫌悪感を抱いた。しかしながら、そんな浮世離れした圭吾を尊敬してしまっている自分もまた認めていた。


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