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アイちゃんから日曜のお誘い

 教室に戻ると待ち構えていたようにフルカワさんが絡んで来る。

「お帰りカナエ、おごってもらえたの?」

ゆず茶を振って見せるキタガワ。そして私の手にもゆず茶があるのを確認するフルカワさん。

「ゆず茶!?」とフルカワさん。「カナエ、ゆず茶が好きなの?以外~~~。今度それ、私が買って来てあげる」

「さんきゅ、でもいいわ」以外に冷たい感じで答えるキタガワ。「あんまそんなに好きじゃねえから」

じゃあなんで買う!



 もしかしたらキタガワ、本当はフルカワさんに絡まれるのが嫌で、そばにいた見知った私を誘って教室の外に出たとか?

 …ないよね…そんなこと…男子だったら巨乳でキャラキャラしてノリもいいフルカワさんに飲み物もらったら嬉しいと思うもん。キタガワもそんなに嫌がってなかったし。

 …ったく!…ゆず茶嫌いなら買うなっつの。私が本人の嫌いなものお礼に渡したみたいじゃん。

 キタガワが買ってくれたゆず茶をそっと鞄の中にしまう私だった。




 翌日のお昼。

 昨日と全く同じポジションを取る私たち。私とキタガワだけじゃない。ユウミちゃんとアイちゃん。ヨコヤマとハシモトの位置もほぼ同じ。

 夕べアイちゃんとユウミちゃんとラインした時、昨日の昼のキタガワとの事を聞かれた。詳しく話すには小3の時から話さなければいけない。いや、そんな時の事から話さなくていいんだけど、その頃の事を話さなかったら今のキタガワと私の間にはほとんど接点はない。

 キタガワが言っていたように、中1の時の私がキタガワからノートを借りたと言うのは言いがかりだ。全くそんな記憶はないから。

 でもそんな説明は出来ないから、結局キタガワが私に言っていたのをそのまま伝えてごまかした。前にちょっとノート借りてお礼するって言ってたのを忘れてただけ、って。



 それで今日も昨日と同じポジション。

 昨日の今日なので、私はもちろんキタガワが気になるが気になる素振りなんて一切見せない。…見せてないはず。

 でもアイちゃんとユウミちゃんも気になっているみたいで、椅子を動かす時にチラチラとキタガワの方を見ていた。

 二人ともそんなに気にしないで欲しいな…。じゃないと私が余計気になる。

 キタガワはもちろん弁当を食べている間後ろを振り返ったりはしない。私もどうにかアイちゃんとユウミちゃんとのおしゃべりに集中して、キタガワを全く気にしてない振りを続ける。

 ていうかキタガワ、廊下側の端の自分の席で食べればいいのに!

 昨日のゆず茶はそのまま鞄に入れて持って帰って家で飲んだ。…キタガワは飲んだかな…あんまり好きじゃないって言ってたけど。



 アイちゃんが今度の日曜に彼氏と遊園地に行く話をしてくれる。

 私とユウミちゃんは、それを羨ましいとある程度思うのだけど、何しろまず彼氏がいないし、アイちゃんが嬉しそうに話すのが可愛いので、うんうん良かったね、と思って聞くだけだ。

 羨ましいのは遊園地に行く事じゃないよね。好きな人とだったら、近所の小さい公園のベンチに腰掛けて話をするだけで嬉しいだろうし、ただちょっと散歩するだけでも相当に嬉しいはず。休み時間にほんの少し話をするのだって…

 そう考えて、昨日の自販機の前でのキタガワとの会話を思い出してしまい、慌ててそれを頭から追い払った。



 「でもね、」とアイちゃんが言う。「ほんとは私、二人に私の彼氏見て欲しいんだ」

私も見たいとは思うけど。

「そりゃ見たいよ実物」とユウミちゃんも言う。

よく写真はラインで送ってくれるのだ。

 「なんか」とアイちゃんがちょっと伏し目がちに言う。「私さ、初めて出来た彼氏だから、彼氏が私にわがまま言って来ても、ちょっと嬉しくなってすぐ言う事聞いちゃうんだよね」

 …どんなわがまま言われてんだろう。一瞬エッチな想像しそうになった。心配だなアイちゃん可愛いから。

「第三者の目からも、彼氏と私がちゃんと付き合っていけるか確認して欲しいんだよね」

アイちゃん…第三者とか言い出したけど…


 

 「いいよ~」とユウミちゃんが軽く言う。

「良かった~」アイちゃんがニッコリと笑う。「そう言ってくれると思ってたんだよ~~。でね、今度の日曜なんだけどその遊園地行くのに、二人に一緒に来て欲しいんだ」

偵察?後つけたりしたらいの?

「私たち後をつけたりしたらいいの?」とユウミちゃんが実際聞く。

 ハハハハ、とアイちゃんは笑って首を振った。「一緒に遊んで欲しい」

「いいの?」と私。「二人で行きたいんじゃないの?」

「それはまた今度にとっておいて。とにかく二人にうちの彼氏見て欲しいから友達連れて行きたいって言ってあるんだ。そしたら彼氏も友達連れてきてもいいかって話になって、なんかそういう感じだけどいい?」

「「マジで!?」」急な話に私とユウミちゃんは驚く。



 私、ダメだけどな。人見知りのチキンだから。

 アイちゃんの彼氏の友達が、可愛いくて楽しくて明るい女子が来るって期待してたらすごく困るし、がっかりさせると思うんだけど…そしたらなんか、アイちゃんにも悪い気がするし…

「それって」ユウミちゃんも聞く。「なんか合コンくさくない?」

「ううん」とアイちゃんがニッコリ笑う。「みんなで仲良く遊ぶだけ。そいで彼氏見てもらうだけ!」

「「…」」

ユウミちゃんと顔を見合わせる。



 キタガワのところへ今日もフルカワさんたちがやって来た。

 デジャブ感ハンパないんですけど。でももちろん直視しないようにはする。

 が、フルカワさんがまたキタガワの首にペットボトルを当ててきたのかキタガワが言う。

「ちょっ…それ止めて。首冷たいのマジで嫌だから」

「え~~可愛い、もっとやりたくなる~~」フルカワさんの声が大きい。

「いいから止めといてって」

「ねぇねぇカナエ、昨日中田さんにおごってもらえたお茶、飲んだのちゃんと?好きじゃないっつってたけど」

うざっ!

 やっぱりフルカワさんの声が大きい。そしてなんでそんな細かい事まで聞く。

「あ~まあな」とキタガワが答えるのが聞こえて来る。

 おごってないけどね。おごられたけどね私。



 ユウミちゃんが言った。「アイちゃんの彼氏の友達が、あらかじめうちらがあんまキャピキャピしてないのをわかった上で来るんなら行ってもいいけど。うちらほら、こんなノリじゃん」

「大丈夫だよ~~」とアイちゃん。「私、彼氏にユウミちゃんとアイちゃんの事はしょっちゅう話してるし、彼氏もそれ、友達に話したりして、会わせてくれとか言われるらしいよ?写真もごめん、勝手にいろいろ送っちゃってるから」

「「マジで!?」」

「たぶん二人とも可愛いし彼氏の友達も嬉しいと思う。それにうちの彼氏の友達もまぁまぁかっこいいよ?まぁうちの彼氏がいちばんカッコいいけど」

へへっと笑うアイちゃん。可愛いけど。

 私もユウミちゃんも「はいはい」て感じだ。

 それにアイちゃんの彼氏の友達に写真見られてるなんて…



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