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チラ見もしない

 なになに?と私もアイちゃんもユウミちゃんの話に食いつく。

「私が中学の時ずっといいなって思ってた子がさ~~」とユウミちゃん。「高校入ったとたんに2年の綺麗な女子に告られて速攻付き合い始めたんだって~~。もうすんごいがっかり」

そっか…それはがっかりだよね…

 ずっと好きだった人が簡単に告られた相手と付き合い始めたりしたら、そりゃぁがっかりくるよ。

 やっぱそういうのってさ、何かこの人いいかも、って思える事があって、だんだんその人の事が気になって、気になっていくうちにもっと好きになって、それで相手もだんだん意識してくれて、なんかよくわかんないけどいつの間にか付き合ってました~~って感じになるのがいいな私は。恥ずかしいから二人の前でも言わないけど。

 


 「いいじゃんいいじゃんもう、そんなやつほっとけば」とアイちゃんが言う。「そんなやつの事なんかもう考えないで、この学校で誰か良い人さがしなよ」

「そうだよね~~」とユウミちゃん。

 そうだよね~~と私も思う。

 あんなにチャラくなったキタガワの事なんていつまでも気にしないでおこう。私だって中学で他に気になる子いたし。別の子にちょっと告られた事もあったし。

 キタガワなんて今だってほら、もう女子が3人寄ってきて、3人の女子の中のいつも一番目立つフルカワさんが自販機から買ってきたジュースを「ほら~~~気持ちいいでしょ~~?」とか言いながらキタガワの首に付けてる。

「冷てっ!」と大げさに首をすくめるキタガワ。キャハキャハ騒ぐ女子。それをちょっと羨ましそうに見るヨコヤマ。ヨコヤマ~~。プライドを持てプライドを。

 って、あんだけ止めようと思ってんのにやっぱりチラ見する私。

「え、何このクッキー?」ちょっと声の低くなったフルカワさん。

「よそのクラスの女子にもらったんだって」とヨコヤマ。

「え~」と非難するようなフルカワさんの声。「誰に?」



「あ、ねえねえこの学校じゃなくてもさ」とアイちゃん。「うちの彼氏の友達とかイヤかな…」

「え~どうかな~わかんないな」ユウミちゃんが少し困ったように答えた。

「なんか彼氏に言われててさ」

キタガワのところの話につい気を取られそうになるが、頑張って私はアイちゃんの話を聞く。

「そういうのって会ってちゃんと話してみないと、どんな人かわかんないでしょ?」ユウミちゃんの真っ当な答え。

「まぁそうだよね~~」とアイちゃん。「だからどうかと思ったんだけど。でもナカちゃんもさぁ…」

アイちゃんが今度は私に言った。


 私の名前は中田尋。ナカタヒロだが下の名前だと男子みたいだという事もあってみんなナカちゃんと呼んでくれる。

「ナカちゃん、この間ちょっと言ってた、他校に行った気になってた子ってその後どうなったの?」

 あ~~エザワ君ね…

 ゴールデンウィークにあった中3の時のクラス会にも部活の遠征で来れなくて、男子校に行ったから女子の間で噂もあんまり聞かない。



 私が中3の時に好きになったエザワ君は、サッカー部でまぁまぁ女子に人気があったけれど、女子と一緒にいるよりは部活!みたいな感じでいつも部活を頑張っていて、夏に3年の部活が終わった後後輩の面倒みたりして、それで体育祭のクラス対抗競技の長縄飛びの練習の時に私がつまずいて膝を擦り向いたら、すぐ後ろにいたエザワ君が「早く洗って来た方がいい」って言って、後で大きめの絆創膏をくれた。「オレもよくケガするから持ってたからやる」って言ってくれて。その時に絆創膏くれたさりげなさがカッコ良かったんだよね…

 その時のエザワ君…あのヘアピンをくれた時のキタガワみたいな感じで…

 って私気持ち悪っ!

 私…やっぱりキタガワの事ずっと気にしてるんだよ。だからエザワ君にもそんな風に思ったし、今だって女子に絡まれて嫌じゃなさそうなキタガワにちょっとムカムカしてるんだ…



 「それって」とまたフルカワさんの声。「この前告られた子?」

「いや、それとは違う」とキタガワが答えている。

 『それとは違う』だって!!

 ふざけんなキタガワ、と心の中で思いながら、「なんにも」と私はアイちゃんとユウミちゃんに答えた。

 「なんにも、これっぽっちもど~~~うもなってない。卒業以来見た事ないし。うちの市内の高校じゃないから。たぶん向こうは私の事なんてアルバム見ないと思い出さないくらいだと思う…」

「え~~、そんな事ないよ」アイちゃんが言ってくれる。「県内にはいるんでしょ?それならまた会えるって。誰かにライン教えてもらえばいいじゃん」

「無理して連絡とって返信来なかったら嫌だもん」



 あっ、…

 …びっくりする!

 急に後ろ見るからキタガワ。

 それでキタガワが振り返るのがわかって、ついそっち見ちゃったからめっちゃ目が合ったんですけど今…瞬時に反らしたのが自分的にダサい。そのまま体をちょっと斜めにして、見てなんかいませんでしたよっていう風を装う。

 もうキタガワの事は考えないし、見るのも出来るだけ止めようと思ったばっかりなのに。キタガワたちの話をすごく気にしてたから…気持ち悪いぞ私ダメじゃん私!…本気で止めなきゃ。



 「あ~オレもなんか飲み物買いに行こ」

キタガワの声が聞こえるが、もう見ない。ほんと見ない。そっと机もほんの少し斜めにする。

 フルカワさんが「いいよ買いに行かないで、コレ私の半分こしよ?」と可愛く言っているのも聞こえたが我慢して見ない。

「あ~ありがとありがと。でも悪いから」とキタガワの断る声。

「え~いいじゃんいいじゃん。私平気だよ~~先に飲んでいいよ~~」というフルカワさん。

 飲めばいいじゃん1つのペットボトル、二人で飲めばいいじゃんもう。見ないけどね!すごく気になるけどもう絶対チラ見もしない!


 「なぁ中田」とキタガワにいきなり呼ばれた。

「…?」

「中田って!」

いきなりで、本気でぽかんとする私。

「この前のお礼、今くんない?ちょっと一緒に自販機まで行ってよ」

 この前のお礼…?

 何の事それ…



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