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アイちゃんとユウミちゃん

 今もそうだ。結局私は腹を立てているのだ。簡単に外のクラスのよくわからない女子に教科書を貸すキタガワに。超面白みのない話を振られても、女子にニコニコ愛想を振りまくキタガワに。

 小学生の時、私に話しかける時なんて、ほぼ笑ってなかったじゃん。…ったく。ヘアピンくれた時にもネックレスくれた時にも、「ほら、やる。いらねえから」、みたいな感じだったし。

 今も同じクラスにならかったら、これだけあからさまにむかしと違う様を見る事もなくて、これほど気にする事もなかったのに。

 そしてそう思いながらもやっぱり見てしまうんだよね…気になっているのだ。むかし好きだったから。あの頃と全然違うな~~って見てしまう。

 同じクラスじゃなきゃ良かった。

 そしたら女子からのキタガワ絡みの面倒なラインも来てなかったと思うし。




 昼休み。私はユウミちゃん、アイちゃんと弁当を食べる。

 二人が窓際の一番後ろの私の席にやってきてくれて、近くの空いてる椅子を借りて一緒に食べる。授業中の先生の話の変だったところとか、昨日自分の家であった事とか、最近食べておいしかったお菓子の事とかを話す。最近彼氏が出来たアイちゃんは彼氏の事を話したりもして、私とユウミちゃんはそれを羨ましがったりするのだ。



 私の前の、その前の席にいつもならキタガワが移動して来て、ヨコヤマたちと弁当を食べる。見ないようにしようと思っているのについチラ見てしまう。近くにいるから。

 が、今日はキタガワが移動して来ない。今は教室の中にもいない。いないならいないでまた気になってしまう…と思っていたらすぐにやって来た。


「お、なんだよそのクッキー」とヨコヤマの声。

 クッキー?

 キタガワはこちらに背を向けているので見ようと思えば安心してチラ見ができるが、見ないようにと心に決めたのでチラ見も出来るだけしたくはないし、キタガワの向かい側でこっちを向いて座っているヨコヤマに見つかって、「あいつよくこっち見てる」と思われて気持ち悪がられてもマズいので、極力見ないようしたい。だから気になったが見るのは我慢する。

 まぁ見るのを我慢するっていうのもおかしな話だけどね…。今好きでもない人を、むかし好きだった頃といかに違うかを確認するために見るのを我慢するって、本当に自分でも変だと思う。

 たぶん中2中3でクラスが違ったから、実際キタガワをそばで見る事が少なくて、高校に入って同じクラスになったら、本当にむかしと違うので、入学当初の1週間は結構見ていたものだからくせになって、その見るくせが抜けていないんだと思う。本気で止めないと自分でも気持ち悪い。



 考えない考えない…今のキタガワとむかしのキタガワがどんなに違うかなんて考えない…

 ユウミちゃんとアイちゃんの話に集中しなきゃ。

「いいよねぇ~~」とユウミちゃんが言う。「アイちゃんだけ彼氏持ち」

 へへ~~と笑うアイちゃんは可愛いらしい。アイちゃんは身長150センチくらい。前髪は下ろして長い髪をツインテールにしている。でも私たち3人の中では一番しっかりしていて社交的だ、今3人でご飯を食べているのもアイちゃんが、一人でどうしようかなと思っていた私とユウミちゃんに声をかけて一緒に食べてくれたのがきっかけだった。



 アイちゃんの彼氏は、同中だったけれど今は他校にいっている子らしい。卒業式の日に告白されて、アイちゃんもいいなって思ってたから中学卒業してもまた会いたくて、それでОKしたのだと話してくれた。そんな事が実際あるんだね…羨ましいな。

 休みの日に彼氏と一緒に遊んだ時に撮った写真が何回かアイちゃんから送られてきた事がある。やさしそうな、それでも活発で明るそうな、感じの良い男の子だ。余計羨ましい。サッカーが得意な男の子だと言っていた。

 まぁ実際会った事がないから本当のところはわかないけれど。



 そしてアイちゃん達の話に耳を傾けながらも、やっぱりキタガワ達の声が気になるのだ。

「他のクラスの女子が持ってきた」と答えるキタガワ。クッキーの話だ。

「マジか!?お前一昨日ももらってたじゃん」ヨコヤマの隣にいるハシモトの声。

「あれとはまた違うクラスの」

「マジか!?」

「前に聞かれてあんまり甘いの好きじゃねえって言っといたんだけど、じゃあ友達とみんなで食べてって渡されたから」

なんか、仕方ない、みたいな感じで受け取ってない?女の子に失礼じゃない?だったら最初から「いらない」って言えばいいんじゃない?

「「オレらが食べていいって事?」」とヨコヤマとハシモト。

「いいんじゃね」とキタガワ。「そう言ってたし」

いいわけないじゃん!と思う私だ。そんなのキタガワに食べさせたくて作ってきたんだって。

 

 「なんかでも、」というヨコヤマ。「調理実習とかで作ったのを渡されたら嬉しいけど、あんまよく知らねえ子に家から作って来られたら、なんか重くね?」

「まぁな」とキタガワ。「でもせっかくだったし、ありがたく今回だけもらうって言っといた」

じゃあ今回も断れよ!と思う私。

 そうやって「ありがとう」って受け取ってもらえたけど、もう次は持ってくるな、って事でしょ?その女子の気持ちになったらいたたまれない気がする。



 「私も実は他校に行った子からライン来てさ~」というユウミちゃん。

そうだ、こっちの話に集中!

 ユウミちゃんは髪の毛をボブにしていて切れ長の目の見た目ちょっと大人っぽい子。しっかりしているように見えるのにとんでもないボケをかましたりもする。そこが凄く可愛い。アイちゃんもユウミちゃんも見た目と中身のギャップがあって面白いのだ。


 私はどうかな…見た目と中身のギャップはないような気がする。どちらかというと人見知りで優柔不断だけど、頑張って中身も外見も地味過ぎる感じにならないようにしている。クラスの中堅層でいたい。私は普通なのだ。アイちゃんほどしっかりもしていないし、ユウミちゃんほど天然でもない。髪の毛だって二人の中間くらいの長さ。くくったり、くくらなかったり。

 そんな感じだよね私って。なんていうか、普通っていうよりハッキリしない感じ?



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