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思わせぶり

 「お前が中途半端な事するからじゃん」とキタガワがいきなり言う。

 中途半端?何の事言ってんの…

「あんなさぁ…」ちょっと唸るように言うキタガワ。「あんなオレが作った下手っぴなネックレス…わざわざ中学のカバンにまで付け替えてずっと持ってたら…ずっとオレの事好きだったんじゃねえのかなって思うじゃん!!」

 「…」

「あんな事されたら…もうすげえ恥ずかしいなって思って」

そうだよね…ほんと恥ずかしい事してたよね…「…だからもうごめんて」

「ごめんじゃねえよ。なのにタケダに告られたくらいですぐはずすから…くそっとか思うじゃん、なんか知んないけど!それでまた渡したらつけるんじぇねえかとか思って作ったけど渡せなかったって話!」



「…タケダ君は全然関係ないよ」

 あんたがだんだんいろんな子と仲良くなっていったからじゃん。だいたい中1の時なんて、あんたの事、そんな好きじゃなかったし。惰性で付けてただけだし!

「じゃあ何で。誰?タケダじゃなくて誰?好きだったやつって」

「…それは言いたくないって言った!そんな…そんなこと言ってるけどキタガワこそ付き合ってる子何人もいたじゃん!」

今だって調子良いし。

「いねえわ」

「いた!私が聞いただけでも4、5人…」

「いねえ」

「実際女子が言ってんの聞いたもん!ハヤシさんとかユカちゃんとか名前まで出て…」

「勝手にそいつらが言ってたんだろ。オレは誰とも付き合った事なんてない」

なんか…なんか自分を好きだった女の子に対してひどい言い草!


 

 「なんでそんな言い方すんの?ここだって女の子来てんでしょ?最低!」

「来てねえわ!最低とか言うな。…いや、来たけど」

来たんじゃんじゃあ!

「家を訪ねてきたんだよ勝手に。その中学のときの話も、やたら話しかけてくる女子だけ話合わせてたら、勝手にいろいろ言われて」

「そんなのみんなにいい顔するからでしょ?そんな感じじゃなかったじゃんむかしは」

「特定の良く話しかけてくるやつだけ相手にしてたら、変な噂流されたんだよ。だからオレはそれからずっとみんなに適当に良い感じで相手してんの。そしたら誰か一人が勝手にそういううわさ流したりしないじゃん」

 …なんかイラっと来るな…なんだろうそれ、モテ自慢入ってない?ちょっと。



 「なんかちょっと」と、いきなりドアをノックもせずに入ってきたお姉さんだ。

 私もキタガワも驚いたが、お姉さんは全く気にせずニコニコしながらお盆を差し出してくれた。

「険悪なムード漂ってる感あるのに、ドーナツとお茶持って来ちゃったんだけど~~」

キタガワが立ち上がりお姉さんに近付きながら言った。「いきなり開けんなよバカか」

「あんた彼女部屋に上げといてケンカ腰ってどういう感じ?ていうか」

とお姉さんがドアから少し体をよけながら言った。「お母さんも彼女見たいって~~」


 

 お姉さんの後ろからぴょこんと顔を出すお姉さんにそっくりな人…いやお姉さんそっくりな人っていうか、そう言えば何回も見た事あったからね、今見たら思い出したキタガワのお母さん。参観日に来たお母さんの中で一番綺麗で、うちのお母さんも負けないでずっと綺麗でいて欲しいなって思った事もあった。

 そしてその後ろからもう一人。「私も見たい~!」と言いながら顔を出した小学5、6年くらいの女の子。

 妹?

 似てるな。親子3人そっくり!妹可愛いな!

 いやその前に、私彼女じゃないのに…



 「あれ?」とお母さんも言った。「なんか見た事あるような子だけど」

「私も見た事ある!」と妹が目をキラキラさせて言う。

「だって」とお姉さん。「カナエと小、中一緒だから。私も知ってたし。私は前に写真も見…」

「黙れって!もうお前ら出てけって!」

お姉さんが何か言いかけたのをキタガワがすごい勢いで止めた。

 私は取りあえず、ぺこん、とお辞儀をしてから言う。「すみません。上がり込んで。あの…小、中でクラス一緒だった事があるので」

慌ててしまって、お姉さんがした説明を自分でもう1回してしまう。

「あのでも!私、彼女じゃないので」

「「「彼女じゃないの!?」」」

3人が合わせたように大きな声で聞き返してきてビクっとする。



 ゆっくりして行ってね、と言ってお母さんと妹が出て行った後もお姉さんは居座った。

 キタガワが大きくため息をついてから言う。「お前も早く下戻れって」

「お前とか言うな、ねえちゃんに向かって」

「いいからもう…」

「ねえ…え~と何ちゃんだっけ?」と私に聞くお姉さん。

「中田です。すみません、ちゃんと挨拶せずに。お母さんにも」

「中田何ちゃん?え?ヒロちゃん?カッコいい名前だねえ。ヒロちゃんあのね、家には何人か女の子訪ねて来てたけど、部屋にっていうか家の中に入れてたの今んとこヒロちゃんだけだよ」

 お姉さんの言葉にどきんとする。しかも私の事ヒロちゃんて呼んでくれて…

 が、お姉さんは続けた。「まぁ私が知ってるうちではって事だけど」

 …なんだそうか。



 「お前、出てけってもう~~」とキタガワがもう力無く言う。

「ねえヒロちゃん、」お姉さんはキタガワの言う事なんかまるで聞かずに部屋にまだ居座る。「付き合ってもいないヤツからネックレスもらうってどんな感じ?しかも手作りの」

「…」

「どんな感じ?」ニッコリと笑って小首をかしげるお姉さん。

「…え…と」

いきなりな少し乱暴な質問に返事が出来ない。

「気持ち悪くない?重くない?重いよね?断ったらいいのに」

「…」

「だって付き合ってもいないんだよ。なのに手作りのネックレスとか、なんか呪われた感じすらするわ、私だったら」

 …そうかな…むかしもらった時もすごく嬉しかったよね。だってそれがきっかけで好きになったようなものだった。

 …いや、その前からキタガワの事好きだったから嬉しかったんだよね。



 「そう言うのってさ」とそれでもお姉さんは言う。「気を付けた方がいいと思うよ~」

「もうお前いつまでいる気だよ、」とキタガワが言う。「出てけってブス!」

「は?ブスじゃないから私!断然可愛いから。ねえ?」

お姉さんは私に同意を求める。

 もちろんですよお姉さん!お姉さんはすごく綺麗です。とははっきり言えずに、深く何度もうなずくだけで同意を表わす私。

「めんどくせぇ」と言うキタガワ。

「は?何がめんどくさいよ?こんなね、ネックレスとかあげてね、…こいつさ、中学の時に…」

 話し始めたお姉さんの腕を、いきなり立ち上がったキタガワがガッと掴み乱暴に立ち上がらせる。私も慌てて立ちあがった。

「ちょっ…!キタガワ!お姉さんにそんな…」




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