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クラス会

 返事が来ないんだけど!

 既読にはなったけどそれから3時間経っても「了解」とかそういう返事来ないんだけど。

 返事がないって事は了解されたって事?

 そう思っていたら11時過ぎにラインが来た。「明後日だったのが明日になったから。明日の10時。場所は同じ。小学校の校庭」

 いや、明日でも行かないんだけど…

「さっき連絡したつもりなんだけど、クラス会行くのは今回は止めておきます。せっかくまた連絡くれたのにごめん。ありがとう」

が、それは既読にもならなかった。

 もう~~~~!めんどくさい~~~。



 どうするの私。行くの?行かないの?行くの?行かないの?行くの?…

 眠る直前まで考えていたが、朝起きてやっぱり行ってみる事にした。キタガワが、私も行く事を他の子に言っててくれていたとしたら、やっぱり申し訳ないし、他の子たちにもよく思われないから。ちょっと覗いてみて状況を見て、それで帰ろう。仲良くしてた子がいたら入っていけると思うし。

 キタガワからラインが来た。「ちゃんと来いよ」だけ。

 私は返事を返さない。夕べのお返しだ。



 いろいろ迷った挙句に、黒いデニムのパンツとクリーム色の薄手のニットの七部丈のプルオーバーで10分前に自転車で家を出る。スカートを着て行こうかと考えたけど小学校が集合場所だし、ここはあんまり派手にならないような服を選んだ。

 みんなどこに自転車止めてるんだろうと思いながら、もし仲良かった子がいなかったら速攻帰れるように自転車を正門のそばにつけて校庭をこっそり覗く。いろいろな遊具のある、門から向かって右側は2、3年生くらいの男の子たちがもう何人か遊びに来ていて、反対側のバックネットのある方では少年野球クラブの子たちが準備運動をしていた。

 誰もいないじゃん。クラス会らしき子たち。

 !

 …もしかして騙されたの私…キタガワに。

 昨日水本に呼ばれたって言うのも嘘だったし…



 「中田」

 キタガワ!

 キタガワは小学校に隣接されている幼稚園との間の通路から出て来た。濃いめのジーンズと薄手の紺のパーカー姿。前を開けて中の白いTシャツがのぞいている。

「なんで返信しねえの?」とキタガワ。「来ねえのかと思ったし」

「自分だって夕べ返信してくんなかったじゃん」

「お前が行くの止めるとかめんどくせえ事言い出すから」

「ていうか誰も来てないじゃん」当然非難するように言う私だ。

「まあな」

「まあなって何!」

「オレらだけだから」

「何が!?」

「ここに来るのがだよ」

「またウソなの!?」

「うそ」

「…なんでそんなウソつくの?」

「ウソだけどクラス会なの!二人でやんだよ今から」

キレたように言ったキタガワが…赤くなっている。



 自転車を正門の内側の端に止めるように言われ、低学年の男の子たちが遊んでいる遊具のある方へキタガワが先に歩いて行くので後を追う。

 何これ何これ何これ…

「あっ」と、遊具で遊んでいた子どもたちの中の一人が走り寄って来て言った。「カップル来た~~~!」

ほんとだ!カップルカップル!と他の子たちも寄ってきて総勢7人で騒ぎ出す。

 木製の平均台の上を少し手で払って私を腰かけさせ自分も私の横を30センチくらい隙間を空けて腰かけたキタガワにだんだんドキドキしてくる。

「さわぐな」とキタガワが小学生たちに言った。「お前ら元の所で遊び続けろ」

「これデートなん?」とさっきとは別の子が聞いた。

「すげえオレ、デートしてんのこんな近くで見んのはじめて」とまた別の子。

「え、でもこんなとこでデートなん?」と別の子。「デートって映画館とかカフェとかですんじゃね?なんでここ?」

「わかった!」とまた別の子。「なぁ高校生だろ?金、あんま持ってねえからこんなとこでデートすんじゃね?」

「うるせえお前ら」とまたキタガワが言う。「いいから気にせず遊び続けろって」

 ニヤニヤする7人の少年たち。

「いいから、」ともう一度言うキタガワ。「遊び続けろって」

 余計ギャハギャハ笑う少年たちだ。



 「なあ」と一番うるさそうな子が言った。「ここでチュウするん?」

そして残りの少年たちもまたギャハギャハ笑う。全く遊びに戻る気配もない。

 もう、なんでこんな小学生男子の格好の餌となるような所で、と思ったら「まだしない」と、まじめに答えたキタガワに驚く。

「なぁ、じゃあもしかして今からカップルになるん?」と目をキラキラさせた別の子が聞いた。「もしかして今から告白するん!?」

 ぎゃああ~~とテンションを上げ過ぎる子どもたちだ。まぁ小学生男子なんてこんな感じになりがちだよね。

「うるさいっつったろお前ら」どう言っても騒ぎ続ける子どもたちにキタガワが力無く言う。「元んとこ戻ってひたすら遊び続けろって」

「告白~~~うぉお~~!」と叫びながらジャングルジムに駆けていく少年たち。



 「…お前…」とキタガワが私に言った。「中2の途中まで付けてたじゃん、かばんに」

「…ふぇえ?」

少年たちの騒ぎの残像が残っている所へ急に聞かれて変な返事しちゃった!

「オレがむかしやったネックレス、キーホルダーに作り変えてカバンに付けてたじゃん、なんかネコのやつとかと一緒に」

 ヤバい!!

 ヤバいよ付けてたのバレてた!




 でもアレ、もらった時すごく嬉しかったから付けてたわけで、それに中学に入ってからは惰性で付けてたわけで、キタガワに意識してもらおうなんてイヤラしい気持ちは…と心の中で弁解をするけれど、有り有りだったよね。もちろんもらって嬉しくてずっと着けていたかったからそうしたわけだけど、それはキタガワの事が好きだったからだよね。それを本人に今頃突っ込まれるなんて…

 恥ずかし過ぎる。

「付けてたよな?」ともう一度キツめに聞かれる。

「…」

 キタガワの顔を直視できずうつむいたまま黙ってうなずいた。

 超恥ずかしい!

 「ねぇ…ごめ…」と、パッとキタガワを見て言いかけたら、今度はキタガワがパッとあちらを見て私から目を反らしてから聞いた。

「あれどうした?捨てた?」



 





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