探し物
妹のリコーダーが見つからない。小学校で音楽の時間によく使ったあの縦笛だ。
「家中探したけど、見つからなかったんだよね」
私がアヤシちゃんに話したら、アヤシちゃんが首をかしげた。
「探してあげようか?」
「え? いいよ。わざわざうちに来るの大変だし」
そう答えれば、彼女は首を振った。
「違うよ。ここで探すの」
意味がわからない。
彼女は焦点の合わない目で宙を見つめた。
「ピアノの中にあるよ」
はい?
うちにピアノはあるけど、その中?
「鍵盤の上」
いやいや。そんなところに入らないよ。
アヤシちゃんは、私を見てにっこりと笑った。
「探してみてね」
家に帰って半信半疑。
妹を呼ぶ。
ちなみに妹は高校生で、リコーダーは何やら、文化祭だか、音楽の授業だかで使う予定らしい。
「え~。ウソだよ」
妹も信じない。
それでも二人で一緒にピアノのふたを開けた。
ころん。
落ちてくる細い物体。
リコーダーだった。
「うそ」
妹の声。
恐る恐る拾って、鍵盤の上に置いてみるけれど、ふたは閉まらない。
どうやって入っていたのか。
どうやって出てきたのか。
分からなかった。
後日。
「アヤシちゃん、ありがとう。見つかったよ」
「良かったね」
「どうして分かったの?」
アヤシちゃんが首をかしげる。
「ああいうのは、なんとなく分かるの。説明できないんだよね」
そういって、彼女は照れて頬を染めながら微笑んだ。