首
大学卒業間近、卒論も終わって、久しぶりに皆で会うことになった。
仲間の一人の部屋で、何となく飲みながら話していたら、アヤシちゃんが眉をひそめた。
「ねえ、なにつけてるの?」
言われた女の子が、怪訝な顔をしてアヤシちゃんを見ると、アヤシちゃんは女の子の肩の上を見ている。
遠くを見るような焦点の合っていない目。
「なんか見える?」
「首。男の人の顔が見えるんだけど」
アヤシちゃんがそう言ったとたんに、女の子が嬉しそうにした。
最近、入会した道場の道場主だという。守るために自分の分身をつけてくれたそうだ。
その話を聞いて、ますますアヤシちゃんは顔をしかめた。
「憑いているもの、普通じゃないよ? 顔が逆さなの。そんなの視たこと無いし気持ち悪い」
アヤシちゃんの言葉に、ますます女の子は喜ぶ。
「普通じゃないんだ。それって道場主様に力があるってことだよね」
「力があるかどうかは知らない。でもいいものじゃないよ」
私もおずおずと口をだした。
「大丈夫なの? その道場。なにやってる道場なの?」
女の子は嬉しそうに答える。
「色々教えてくれるよ。外国で修行したんだって。偉い先生なんだよ。今度、一緒に来る?」
私は慌てて首を振った。よくわからない所には行きたくない。
「本当に止めた方がいいと思うよ」
アヤシちゃんは、もっと何か言いたげだったけど、それでこの話は終わりになった。
どうやら女の子が入った場所は、新興宗教だったらしく、仲間が次から次へと誘われた。入会した人もいたり、私みたいに避けた人もいたり。
そんなこともあって、卒業してからはお互いに疎遠になってしまった。




