アルバイト
夏と冬に、倉庫のようなところでするアルバイトがあった。
お中元とお歳暮を包装紙で包む仕事だ。
流れてくるお中元やお歳暮の数々を手早く手元に広げられた包装紙で包んで、伝票を貼り付けて、ベルトコンベアで流す。
そんな仕事をしていたときに、アヤシちゃんも来た。日払いなので一日だけ参加とかもありなのだ。
そのバイトの休憩時間に、その場にいた皆が怪談やろうと言い出した。
アルバイト仲間は、アヤシちゃんのことを知らない。
アヤシちゃんは、少し顔をしかめたけど何も言わなかった。
二人ぐらいがありがちな怖い話をした後だった。一人がアヤシちゃんに話すように促した。
「私は…いいよ」
「え~。凄い怖いの、知ってそう」
断ったアヤシちゃんに、周りが囃す。アヤシちゃんは諦めたように言った。
「話してもいいけど、霊が集まるかもよ」
その言葉を、周りのアルバイト仲間は単なる枕詞として受け取ったらしい。
「いいじゃん。霊が集まるとか、涼しくなっていいよ」
「やめておいたほうが…」
雰囲気を壊さないように、言ってみたけれど、皆はアヤシちゃんがどんなに怖い話をしてくれるのか興味津々になっている。
アヤシちゃんはため息をついてから、仕方ないというように話始めた。
アヤシちゃんの家に来た幽霊の話だ。
話しているうちに、ふっと肌寒さを感じた。
「ねえ。寒くない?」
一人が言った。アヤシちゃんは淡々と話続けている。
「本当に寒いんだけど」
別な一人がまた言う。
他の人も自分の腕をさすりながら「寒い」「寒い」といい始めた。
アヤシちゃんの話が途中で止まった。
ぐるりと皆の顔を見てから口を開く。
「言ったじゃない。霊が集まるかもよって。取り囲まれてるから寒いんだよ」
皆の顔が強ばる。
「まだ続ける?」
アヤシちゃんの言葉に一瞬誰も返事ができなかった。空調ではない妙な寒さを皆が感じている。
「えっと…、次は笑える話をしようか」
最初に怪談をやろうと言い出した人が、そう言って、笑い話の口火を切った。
皆が無理して笑う中で、周りの温度は元へ戻っていく。
この日以来、アヤシちゃんがこのバイトに来ることはなかった。




