ストーカー
「ねぇ。『視えて』良かったこと、ある?」
アヤシちゃんは、少し考えるように黙りこんだ後で、にっこりと笑った。
「あるよ」
「どんなとき?」
「大学に入った頃のことなんだけど、自転車で家に帰るときだったの。夜の10時過ぎ。私が曲がる角の塀の向こうに変なものが見えたんだよね」
「変なもの?」
「うん。誰かの背後霊というか、なんか取り憑かれてる感じ?」
アヤシちゃんによると、取り憑かれてる場合も、背中に覆い被さるように憑くので、本人の頭より霊が上にでるらしい。
「塀で人影は見えなかったけど、誰かいるって思った。気持ち悪い霊だったから、曲がらずに少し手前で立ち止まったの」
「そうしたら?」
「出てきたよ。本体。妙に痩せた髪の長い男の人。全身ヨレヨレの白いスーツなの。白い自転車に乗って、白いふちの眼鏡をかけてた」
「何、それ」
「目がイッてて、ヤバイって思った」
それからアヤシちゃんは、慌ててUターンして、別な道から帰ったそうだ。
「ところが、その後も会うんだよね。待ち伏せしてるの。憑いてるものが気持ち悪いから先に気づくんだけど」
「大丈夫なの? それ」
「あ、警察に行った。待ち伏せされてることを言ったら『あなたのファンかもしれませんよ』とか、寝ぼけたことを言われたけど、『なんかあったら、どうするんですか』って言って、『パトロールを強化します』って言って貰った」
その後、警察官の前ですれ違って職質されてたから、もう大丈夫かな~と笑っていた。
それは…。
確かに『視えて』良かったね。




