いか
アヤシちゃんの彼氏は『気』を使う。『気』というか、『オーラ』というか、何かそういうものらしい。
「手から出るんだよね。昔から感じてたんだけど」
穏やかで、のんびりした口調で彼は喋る。
「見えるの?」
「見えないよ。感じるだけ」
そんな返事がくる。
二人はたまに校舎の前の芝生で、のんびりと座っている。私たち友人が通ると手招きして、友人ホイホイのようになっていた。
その日も二人が芝生で、何かをしているのを見つけた。
「これは?」
「えっと…。球体。ここから、ここまで」
「あたり」
彼氏に問われて、アヤシちゃんがちょっと考えてから答えをいう。
なんだろう。
「なにしてるの?」
「ん? オーラ見てるの」
「え?」
「彼が作ったオーラの形を当ててるんだよ」
アヤシちゃんがにこにこと言う。
「ね?」
彼氏に向かって確認するように、アヤシちゃんが声をかければ、彼氏も柔らかく微笑む。
「じゃ、これは?」
彼氏が胸の前で両手の平を上に向けて出す。
アヤシちゃんが首をかしげた。
「家?」
「残念。いか」
「いか? あの足が10本あるやつ?」
目の前で繰り広げられるアヤシちゃんと彼氏の会話。
「いかには見えないよ? 足がないもん。こんな感じ」
アヤシちゃんが彼氏の両手の上の空間に家型を指で書く。
「あ、そうそう。その通り。でもそうか~。足10本が無理だったか」
彼氏が残念そうに言った。
「アヤシちゃんは、出せないの?」
私が問えば、アヤシちゃんは笑って返事をしてくれた。
「出せるけど、彼ほど綺麗じゃないし、形を作るとか器用なことはできないもん」
「ふーん」
アヤシちゃんは、たまに不思議な遊びをしているが、まぁそんなものかなぁと、周りは放置していた。
こういうときは、自分も見えたら楽しいだろうなと思う。




