手
アヤシちゃんが大学のラウンジで突っ伏して寝ていた。
「どうしたの?」
声をかければ、疲れたような顔が上がった。
「昨日、寝てたら手を握られて…。妹だと思ったから、そのままにしてたのね」
「うん」
「でもずっと握ってるから、変だな~って思って、目を開けたら手首しかなかったの」
「え?」
「妹じゃなかったんだよね。それで目が覚めて、寝不足なの」
アヤシちゃんはため息をついて、また突っ伏した。
「たまにあるんだよね。怖くはないんだけど、寝てる間に誰かがいるの。前も気づいたら男の人が隣で寝てて…。あ、ご先祖様かな~って思った」
来るなら昼前に来てくれれば、寝不足にならないのに…。と、アヤシちゃんはぶつぶつ言っている。
そこでふっと何かに気づいたように顔をあげた。
「あ、でも大丈夫だよ。誰かが遊びに来てるときとか、あんまりそういうのがおこらないから」
「あ、うん」
「あ、でも…。前に妹が来たときに、うちのドアの前で上半身しかない男がドアノブに手を伸ばしてた…とか言ってたかも」
「えっと…」
「もしもうちに来て、いたらごめんね」
アヤシちゃんは困ったように笑ってから、眠そうに目をこすると、またテーブルに突っ伏した。
「彼と待ち合わせだから、来るまで寝てるね…」
その姿勢のままアヤシちゃんは言って、動かなくなった。
どうしようかと思ったけど、急ぐわけじゃないし、アヤシちゃんの彼とも友達だから、顔を拝んでから帰ろうと決める。
それから暫く、私は寝ているアヤシちゃんの側でぼっーとしていた。




